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(2017年11月28日)
70歳前から引き続き代表取締役等常勤役員として働き、70歳以降も同様の役職・職務で在職の場合は、70歳になると、「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」と、厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出することとなります。
健康保険は原則75歳までは引き続き被保険者のままですので、被保険者資格喪失届を提出すべきであるのは厚生年金保険についてのみとなります。
日本年金機構の厚生年金保険70歳以上被用者該当・不該当届の解説ページでは、
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20140220.html
「70歳以上被用者」となるための三つの要件が次の通り解説されています。
(ここから引用)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○70歳以上被用者とは
70歳以上であって厚生年金保険の適用事業所に新たに使用される人、又は被保険者が70歳到達後も継続して使用される場合で次の要件に該当する人を指します。
(対象要件)
(ア)70歳以上の人
(イ)過去に厚生年金保険の被保険者期間を有する人
(ウ)厚生年金保険法第27条に規定する適用事業所に使用
される人であって、かつ、同法第12条各号に定める者に該当しない人
(ここまで引用)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これら三つの要件のうち、(ア)および(イ)に関する誤解をしている経営者が多いです。
なぜ、誤解が多いのかは色々理由が考えられるのですが、理由の一つとして日本年金機構の情報提供を見て誤解している人もおられるかもしれませんので、注意喚起のためにそれぞれの要件について解説いたします。
(大変誤解、相談が多い箇所ですので、該当する方にとっては極めて重要な情報です。
しかし、各法律の条文を確認することの少ない一般の方にとっては大変わかりにくい内容だと思います。
複数の法律条文を挙げてきちんと説明しないと誤解が生じるところですので、どうしても解説が長文となります。
年齢的にまだご関心がない場合は、読み飛ばしてください。)
(ア)「70歳以上の人」という要件について
前記の日本年金機構の厚生年金保険70歳以上被用者該当・不該当届の解説ページでは、
(1)PDF版の届出用紙
(2)エクセル版の届出用紙
(3)記入例
の3つが閲覧できるようになっています。
このうち、(1)PDF版の届出用紙の裏面や(3)記入例には、「70歳以上の方」と正しく記載されているのですが、
(2)エクセル版の届出用紙の裏面には、 「昭和12年4月2日以降にお生まれの方であって70歳以上の方」との記載があります。(平成29年11月28日現在)
この部分、平成27年9月30日までは、「昭和12年4月2日以降にお生まれの方であって70歳以上の方」で正しかったのですが、法改正によって、平成27年10月1日以降は「70歳以上の方」となっています。
これにより現在では、80歳以上の方についても(「70歳以上の方」には該当しますので)他の二つの要件を満たしている限り、会社がこの届出を行うべき対象者となります。
平成27年10月1日以降は、70歳以上で会社から報酬を受けている代表取締役・取締役等や常勤従業員の方が昭和12年4月1日以前生まれであっても、報酬・賞与と年金との調整のしくみ(在職老齢年金制度)の対象者となりましたので、その人の報酬を会社が届け出る必要が生じたわけです。
対象者の報酬を会社から届出ないと、その人の老齢厚生年金(報酬比例部分)をいくら支給停止すべきかが国にはわからないので、大事な届出となります。
(70歳到達後も、70歳以上被用者に支払った報酬・賞与について会社は、70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届を提出する必要があります。報酬の変更や賞与の支払が年金支給停止額計算に影響する可能性があるからですね。)
平成27年10月1日施行の法改正から2年以上が経ちますが、上記ページのエクセル版届出用紙裏面を見て、昭和12年4月2日以前生まれの人に関する届出を漏らしているケースも中にはあるかもしれません。
ご注意下さい。
(ウ)「厚生年金保険法第27条に規定する適用事業所に使用される人であって、かつ、同法第12条各号に定める者に該当しない人」という要件について
厚生年金保険法第12条というのは、厚生年金保険の適用事業所に使用される70歳未満の人であっても例外的に厚生年金保険の被保険者とならない「適用除外」について定めた条文です。
(日々雇い入れられる者、2月以内の期間を定めて使用される者等が限定列挙されています。)
この(ウ)の要件の意味するところは、厚生年金保険の適用事業所に使用される人(法人代表者・役員を含みます)であって、(もしその人が70歳未満であったとしても)「適用除外」に該当しないような人、ということです。
代表取締役や常勤役員は70歳前から「適用除外」は関係がありませんので厚生年金被保険者となっていた筈です。
ですから、その方が70歳に到達したからといっても、厚生年金保険被保険者資格を喪失するだけで、70歳以上被用者として70歳以上被用者該当届の対象者・在職老齢年金制度の対象者となります。
(参照条文)
● (届出)
厚生年金保険法 第27条
適用事業所の事業主又は第10条第2項の同意をした事業主(以下単に「事業主」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者(被保険者であつた70歳以上の者であつて当該適用事業所に使用されるものとして厚生労働省令で定める要件に該当するもの(以下「70歳以上の使用される者」という。)を含む。)の資格の取得及び喪失(70歳以上の使用される者にあつては、厚生労働省令で定める要件に該当するに至つた日及び当該要件に該当しなくなつた日)並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
●(適用除外)
厚生年金保険法 第12条
次の各号のいずれかに該当する者は、第9条及び第10条第1項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
一 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては1月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
イ 日々雇い入れられる者
ロ 2月以内の期間を定めて使用される者
二 所在地が一定しない事業所に使用される者
三 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して4月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
四 臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して6月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
五 事業所に使用される者であって、その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第2条に規定する通常の労働者(以下この号において「通常の労働者」という。)の1週間の所定労働時間の4分の3未満である同条に規定する短時間労働者(以下この号において「短時間労働者」という。)又はその1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
イ 一週間の所定労働時間が20時間未満であること
ロ 当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと。
ハ 報酬(最低賃金法(昭和34年法律第137号)第4条第3項に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省で定めるところにより、第22条第1項の規定の例により算定した額が、8万8千円未満であること。
二 学校教育法(昭和22年法律第26号)第50条に規定する高等学校の生徒、同法第83条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。
●法27条の「厚生労働省令で定める要件」とは
→(70歳以上の使用される者の要件)
厚生年金保険法施行規則 第10条の4
法第27条に規定する厚生労働省令で定める要件は、同条に規定する適用事業所に使用される者であつて、かつ、法第12条各号に定める者に該当するものでないこととする。
●法27条の「厚生労働省令で定めるところにより」とは
→(70歳以上の使用される者の該当の届出)
厚生年金保険法施行規則第15条の2
法第27条の規定による第10条の4の要件に該当するに至つた日の届出は、当該事実があつた日から5日以内(法第6条第1項第3号に規定する船舶に使用される70歳以上の使用される者(以下「船員たる70歳以上の使用される者」という。)に係る届出にあつては、10日以内。第19条の5第4項及び第22条の2において同じ。)に、次の各号に掲げる事項を記載した届書正副2通を機構に提出することによつて行うものとする。
一 70歳以上の使用される者の氏名、生年月日及び住所
二 基礎年金番号
三 第10条の4の要件に該当するに至つた年月日
四 報酬月額
五 事業所の名称及び所在地並びに事業主の氏名若しくは名称又は船舶所有者の氏名及び住所
六 その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者又はその1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者であって、法第12条第5号イからニまでのいずれの要件にも該当しないものであるかないかの区別
法人代表取締役や常勤取締役の方で、70歳からは、役職や職務も変更せず、報酬月額も従前通り(月額60万円、80万円、100万円等)で変更しないものの、
「勤務時間を正社員の4分の3未満に抑えて、年金をもらいながら働くつもりです。」とか、
「勤務日数を正社員の4分の3未満に抑えて、年金をもらいながら働くつもりです。」と仰る方がとても多いです。
勤務時間や勤務日数を正社員の4分の3未満にしたら、「70歳以上被用者」に該当しないから、老齢厚生年金(報酬比例部分)が支給停止とならないでもらえる、と思っておられるわけですね。
しかし、これが誤りであることは、上記の厚生年金保険法第12条の適用除外のうち、第五号に該当するのは、「その1週間の所定労働時間」または「その1月間の所定労働日数」が「通常の労働者」の「4分の3未満」の「短時間労働者」(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条)と明記されていることから明らかです。
(代表取締役や取締役は労働者ではありませんので。)
厚生年金保険法第12条の規定により、
「1週間の勤務時間または1月間の勤務日数が通常の労働者の4分の3未満であれば、70歳未満で厚生年金保険の適用事業所に勤務している代表取締役や常勤取締役等が厚生年金保険被保険者にならなくてもよい」というのは誤りとなります。
また、「厚生年金保険法施行規則 第10条の4」に定められた「70歳以上の使用される者」(=70歳以上被用者)の要件も併せ読むと、
「1週間の勤務時間または1月間の勤務日数が通常の労働者の4分の3未満であれば、70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に勤務している代表取締役や常勤取締役が厚生年金保険70歳以上被用者にならなくてもよい」というのは誤りとなります。
以上の通り、70歳未満・70歳以上とも、「4分の3要件」という社会保険に加入しなくてもよい例外が適用されるのは、従業員(労働者)の場合に限られます。
(そもそも、法人代表者や常勤役員には、労働者のような所定労働時間や所定労働日数という概念がありませんから、通常の労働者と所定労働時間や所定労働日数を比較する対象にはなりえません。)
ですから、70歳以上の代表取締役や常勤取締役の1週間の勤務時間や1月間の勤務日数が実態として一般従業員の4分の3未満であるからといって、それだけで70歳以上被用者から外れることにはなりません。
●(定義)
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第二条この法律において「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。
ただ、上記の日本年金機構の厚生年金保険70歳以上被用者該当・不該当届の解説ページの、
(1)PDF版の届出用紙裏面、
(2)エクセル版の届出用紙裏面、
(3)記入例裏面
のいずれにも、単に「厚生年金保険の適用事業所にお勤めの方であって勤務日数および勤務時間がそれぞれ一般の従業員の4分の3以上の方」と書いてあるだけで、法人代表者・常勤役員の場合は、この要件は関係ないということが記載されていません。(平成29年11月28日現在)
ですから、これらを見て、勤務日数または勤務時間を一般従業員の4分の3未満にすれば、それだけで、法人代表者や常勤役員も70歳以上被用者にならないと誤解する方がおられるかもしれません。
現在では、70歳到達の前月頃に、年金事務所から届出用紙が送られてくるようになっていますので、その時点で年金事務所に照会することにより誤解していたことにに気付くケースもあると思いますが、できればもっと早い段階から正しい知識を持っていただいておいた方がよいと思います。
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次回の無料相談日程のご案内は未定ですが、日程が決まり次第メルマガ内でご案内いたします。
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私(奥野)が理事長を務めている京都の中小企業団体では、12月になると会員企業の社長様方のスケジュールが慌ただしくなることもあり、例年11月下旬に忘年会を兼ねた懇親会を行うこととしております。
今年も、先日11月25日(土)の夜に、京都中央卸売市場内の会場にて「かにすき」をいただきながら、愉しく過ごしておりました。
社労士として開業直後から参加させていただいておりますので、会員企業様の中には18年以上の
お付き合いとなるところもありますが、18年の中で、代替わりをされた会社や廃業された会社も
結構あります。
初めて会った頃は40歳台だった社長さん方も年金受給年齢を迎えることとなり、年金相談を受けることも年々増え、時間の経過を感じ、感慨深いものがあります。
お電話でのお申込みはこちら
077-578-8896
営業時間:9:00〜18:00 (定休日:土日祝日)
担当:奥野 文夫 (おくの ふみお)
現在大変多くコンサルティングのお申込みをいただいており、無料電話相談は行っておりません。
(奥野の留守中にお電話いただき、伝言いただきましても、こちらから折り返しお電話をすることはできません。)
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