60歳以上現役社長の老齢厚生年金受給・役員報酬最適化なら滋賀県大津市の労務財務の専門家・FP奥野文夫事務所にお任せください!
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(2016年3月15日)
思わぬ勘違いが原因で老齢厚生年金がもらえないとのご相談をいただくことがあります。
まず、ときどきありますのが、老齢年金の受給権は発生しているのに年金請求手続きをされていないケースです。
老齢厚生年金や老齢基礎年金の請求はされていて、厚生年金基金への請求手続きが漏れている事例が多いことは、以前にお伝えしました。
しかし、厚生年金基金加入期間がない方で、老齢厚生年金や老齢基礎年金の請求を忘れておられる方も、経営者の方の場合意外に多いです。
定時株主総会等で報酬の支払い方の変更を決議することはもちろん最も重要ですが、公的年金は請求手続きをしないと自動的にはもらえません。
ほとんどの方の場合で、年金支給開始年齢到達月と報酬決議月が異なるでしょうから、注意が必要です。
また、繰下げに関する次のような誤解もとても多いです。
「65歳時に、ハガキ形式の年金請求書の、繰下げのところに○をして出しましたので、私の場合は70歳からしか年金はもらえない筈です。」
65歳時にハガキをご覧になった場合は、思い出していただきたいのですが、年金請求書の繰下げ希望欄には、「繰下げ受給(66歳以降に受給)を希望される方は、右枠内のいずれかを○で囲んで下さい。」と書いてあった筈です。
その右側に、「老齢基礎年金のみ繰下げ希望」と「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」との記載があったと思います。
そして、その下に、次のような記載がされていた筈です。
老齢基礎年金・老齢厚生年金両方の繰下げ(66歳以降に増額した額を受けること)を希望される場合には、この請求書を出す必要はありません。
どうでしょうか。手続きが複雑ですよね。
65歳からの老齢年金の繰下げを選択する人は全体としては多くないものの、
こと経営者様に限っては、制度に関する誤解からか、上記の3つのパターンの繰下げのいずれかを選択している方もおられますね。
ハガキに「繰下げ受給(66歳以降に受給)」と書いてあることからも分かります通り、繰下げとは、必ずしも70歳から年金をもらい始めるということではありません。
また、65歳の時に、ハガキに○を付けて返信したり、返信自体をしなかったことは、実は、繰下げの確定的な意思表示を行ったわけではありません。
例えば、繰下げ支給の老齢厚生年金について定められた厚生年金保険法44条の3では次のように定められています。
・老齢厚生年金の受給権を有する者であって、その受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかったものは、実施機関に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申し出をすることができる。
65歳に到達したものの、まだ年金をもらっていない人は、
66歳以降であれば、66歳でも、67歳でも、・・・70歳でも、老齢厚生年金を原則通りの65歳からではなくこれからもらい始めるように支給繰下げの申し出を「することができる」わけです。
「することができる」と書いてありますので、支給の繰下げをせず、
原則通りの65歳まで遡って請求することもできます。
(70歳までに遡って請求する場合。)
つまり、65歳の時から老齢厚生年金をもらわなかった人の場合、
66歳以降の任意の時点から繰下げ支給の老齢厚生年金(繰下げした月数に応じて増額された年金)をもらうことができます。
(60か月以上繰下げてもそれ以上増額率は増えません。)
また、繰下げしないで原則通りの65歳以降の分の老齢厚生年金(増額率がかからない年金)を遡って請求し、今後も増額率がかからない老齢厚生年金をもらうこともできます。
(遡ってもらえるのは最長5年間分です。)
ただし、厚生年金適用事業所で常勤勤務の方の場合は、
さらに複雑な制度が関係してきます。
上記の繰下げ制度とは全く関係なく、厚生年金適用事業所で常勤で働いている方の場合は、別途、報酬と老齢厚生年金(報酬比例部分)との調整(在職老齢年金制度)の対象となります。
この在職老齢年金制度によって今支給停止となっている老齢厚生年金を繰り下げたとしても、年金額は一切増えたり溜まったりはしません。
また、老齢厚生年金を遡って請求したとしても、在職支給停止となっていた分の年金がもらえることはありません。
これらのことは今までにも何度も情報提供しております。
しかし毎年度新たに65歳に到達される方がおられて、毎年度同様の誤解をされる方が絶えませんので、繰り返しご案内をしております。
65歳前の社長様の場合でも、頭の片隅に残しておいていただくと将来お役に立つと思います。
60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金の在職支給停止と支給繰下げの問題も誤解の多いところですが、65歳以降の老齢厚生年金(報酬比例部分)の在職支給停止と支給繰下げの問題もやはり経営者の方の誤解の多いところです。
私自身も、面談で・お電話で・無料メール相談で・セミナーで・個別相談会でと、
年間何百人の社長様にご説明しているでしょうか。
社会保障と税の一体改革等年金制度の改革に関する議論は以前から行われています。
また、先週の金曜日には年金改革法案も閣議決定されました。
今後も、社会保険・年金に関しては、頻繁に法改正が行われていくでしょう。
今後の改正の細かな内容はどうであれ、専門家以外の方がご自分で請求をされても勘違いが生じないような、わかりやすく安心できる年金制度に少しでも改革されていけばいいなと、日々思っています。
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