60歳以上現役社長の老齢厚生年金受給・役員報酬最適化なら滋賀県大津市の労務財務の専門家・FP奥野文夫事務所にお任せください!
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(2016年10月25日)
「もらった年金を遡って返せと言われました。」
このようなご相談を経営者様からいただくことは、以前からありましたが、最近特に増えているような気がします。
年金事務所の調査で、本来もらってはいけない年金をもらい続けていたことが判明したという事例ですね。
私どもではインターネット上等で経営者の老齢年金受給について積極的に情報提供しておりますので、いただくご相談も、全てが老齢年金に関するものです。
本来であれば報酬との調整で支給停止となってもらえるはずのない老齢厚生年金(報酬比例部分)を、もらってしまっていたことがバレた、ということですね。
法律上もらえて当然の年金を返せと言われることはあり得ませんから、返還を命じられたという案件は、ご本人に悪気があったものであろうとなかろうと、結果として不正受給となってしまっていたものばかりです。
相談件数が多い一つ目のパターンは、昨年10月以降新たに発生している事例です。
昭和12年4月1日以前生まれの経営者の例ですね。
中には80歳を超える経営者の方からのご相談も多いです。
昨年の9月までは、厚生年金適用の会社から受ける役員報酬月額が100万円であっても200万円であっても、昭和12年4月1日以前生まれの方の場合、老齢厚生年金(報酬比例部分)を全額もらえたわけです。
80歳を過ぎている方だと、もう20年以上も年金を受給していた人もいます。
それが、改正により、昨年10月以降は生年月日にかかわらず在職支給停止の対象となりました。
したがって、78歳以上で報酬を受けて常勤勤務している人についても昨年10月以降は、「70歳以上被用者該当届」を提出すべきことになっていたのですが、これを出していないケースがあったようです。
その後、社会保険の算定調査の際等に届出漏れが判明し、昨年10月以降受け取った年金のうち、本来は支給停止となる筈であった年金(間違って支給されすぎた分)を全部返しなさい、と言われた例が発生したのですね。
このタイプの事例については、もともと届出一枚の提出が漏れると100%起こることですので、私(奥野)も注意喚起の意味で何度も何度も情報提供してきました。
しかし、全ての経営者の方に情報を見つけていただくことは不可能ですので、返還せよと言われてからご相談いただくことが絶えないわけです。
返還を命じられる例の二つ目は、代表取締役等常勤役員の方が、引き続き常勤役員として働いており、法人から報酬を受けているにも関わらず、なぜか厚生年金保険の被保険者資格喪失届を提出してしまっていた、というタイプの事例です。
こちらの方は、昨年9月以前からも多く相談いただいておりましたし、その後最近でも多く相談があります。
常勤勤務で法人から報酬を受けているのであれば、厚生年金保険の被保険者資格は70歳まで喪失することは法律上ありません。
そして、厚生年金保険の被保険者として働いていると、老齢厚生年金(報酬比例部分)と報酬との調整のしくみの対象となります。
70歳になると厚生年金保険の被保険者資格は喪失しますが、常勤勤務で法人から報酬を受けているのであれば、引き続き何歳になっても、老齢厚生年金(報酬比例部分)と報酬との調整の仕組みの対象になります。
ところが、厚生年金保険の被保険者資格を喪失すると、70歳未満であっても、もう保険料を納付することはないし、何歳であっても、老齢厚生年金(報酬比例部分)が報酬との調整でカットされることもありません。
以上のことは、法律で決まっていますので、あたり前のことなのです。
ですから、厚生年金保険の被保険者でなくなるための要件を満たしていない人が、何らかの事情で、形式的に被保険者資格喪失届を提出してしまっていて、届出が受理されてしまっていたとしても、実態が被保険者資格を喪失させるべきでない状態だったのであれば、遡って是正すべきこととなります。
これにより、納付が漏れている保険料があるのであれば、遡って不足分を支払う必要がありますし、不正に多く受給した年金があるのであればさかのぼって返す必要があります。
(保険料は最大2年分、年金は最大5年分)
悪意を持って違法なことをしていたなどというのは論外ですが、多くは、違法なこととは知らなかった、と弁明されています。
もちろん、知らなかったからといって許される筈はありませんから、払うべきものは払い、返すべきものは返すこととなります。
しかし、なぜか次のような事例がかなり多いですので一応注意喚起をしておきたいと思います。
・代表取締役等役員さんが、特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になったので年金事務所に相談に行った。
・報酬が高いので老齢厚生年金がもらえないと言われ、「どうすれば年金がもらえるのか。」と質問した。
・「報酬を下げるか被保険者資格を喪失すれば、年金をもらえます。」と年金事務所窓口の相談員の方に言われた。
・報酬を下げるわけにいかないので、被保険者資格を喪失した。
・そのまま老齢厚生年金(報酬比例部分)を全額受給していた。
・被保険者資格を喪失するべき実態ではなかったのに、(常勤役員として報酬を受けていたにもかかわらず、)被保険者資格を喪失してしまっていたことが、年金事務所の調査で判明し、保険料漏れ・年金不正受給を指摘された。
このような事例では、
「資格喪失したら年金がもらえると、年金事務所の職員から聞いたから喪失届を出したのに、いまさら返せとは納得できない。」という声を聞くことが多いです。
本気でそのように思っておられるのか、言い訳なのかは判然としないのですが、もし、本気でそのように思う方もおられるのであれば、これは、年金事務所の職員さんの説明を、自分の都合の良いように曲解してしまっていた、ということだと思います。
年金事務所で、「資格喪失したら年金がもらえる。」という説明をされる場合は、当然ながら、実態が法律上資格喪失届を出すべき状況となったから資格喪失届を出す、ということを想定しての説明なわけですね。
例えば、代表取締役を退任して後継者に任せる場合等を想定して説明されているわけです。
実態が法律上資格喪失届を出すべき状況ではないにも関わらず、偽って資格喪失届を提出すれば年金は出ます、などとアドバイスをすることはありえないでしょう。
ところが、その説明を都合のよいように表面的にだけ解釈して曲解してしまって、引き続き常勤役員として勤務しながら資格喪失届を出してしまっている人がいるとしたら、とんでもない勘違いですよね。
いつもお話していることですが、社会保険・年金の世界では、あくまでも実態が大事ということですね。
厚生年金保険に加入している会社で、加入を逃れている人がいるのではないかということは、賃金台帳と源泉所得税の領収証書を見れば、わかります。
社会保険加入済の全事業所について、四年に一回は必ず調査が行われることに現在はなっていますから、全額一括返還を命じられてからの相談も多いのですね。
大多数の経営者の方はこのようなおかしな状況にはないわけですが、念のため触れてみました。
「知り合いの経営者で資格を喪失して年金を満額受給している人がいるのですが」という声もとてもよく聞きますが、実態が整っていなければ単なる不正受給であり、結局返還しなければならないのですから全く意味がありません。
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