60歳以上現役社長の老齢厚生年金受給・役員報酬最適化なら滋賀県大津市の労務財務の専門家・FP奥野文夫事務所にお任せください!

中小企業社長さまの老齢厚生年金・社会保険等に関するお悩みを解決します。


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70歳以上代表取締役のみの一人法人社長の老齢厚生年金と社会保険加入

(質問)

Q「弊社は代表取締役である私(70歳)一人だけの法人で、他に役員・従業員はいません。報酬月額は100万円(賞与なし)。老齢基礎年金・老齢厚生年金を満額もらっています。

10年前の法人設立以来ずっと社会保険(健康保険・厚生年金保険)には未加入でしたが、年金事務所から社会保険加入に関する文書が何度も届いています。

70歳以上役員一人しかいない弊社は社会保険に加入しなくてもよいですよね。」

 

 

 

【回答】

 

70歳以上の経営者も社会保険加入手続きを行う必要があります。
(厚生年金保険70歳以上被用者・健康保険被保険者となる。)

 

 法人から報酬を受けている人が70歳になると、もう厚生年金保険の被保険者となることはできません。

 しかし、70歳以降も代表取締役等として法人から報酬を受けているのであれば、「厚生年金保険70歳以上被用者」となり、在職老齢年金の対象者となります。

 在職老齢年金とは、年金と報酬との合計額が一定額を超えたら年金が支給停止されるというしくみです。

 これにより、65歳以上の人は、年金月額と報酬月額との合計額が46万円を超えたら、超えた分の半分だけ年金が支給停止となります。(平成30年度の場合)

健康保険は、最高75歳までは被保険者となります。75歳からは後期高齢者医療制度に加入することとなります。

 

(いままで違法に社会保険に未加入であったために、支払うべき厚生年金保険料・健康保険料を負担してこなかったこととなります。

また、もらってはいけない老齢厚生年金(報酬比例部分)をもらってきたこととなります。)

 

今後は社会保険の加入手続きを行う必要があります。(平成3035日より社会保険の届出書の様式が変わり、被保険者資格取得届と70歳以上被用者該当届が1枚の届出書にまとめられました。)

 

70歳からは厚生年金保険料はかかりません。

健康保険料のみ最高75歳までかかります。

 

加入したくないのであれば、次のいずれかの選択肢を採る必要があります。

・法人から受ける役員報酬額を0円にする

・退職する

・法人を解散する

 

社会保険に加入して年金を満額受給したいのであれば、年金月額と報酬月額との合計額を46万円以下に抑える必要があります。

 

正確に言うと、「老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額÷12+標準報酬月額」を46万円以下にする必要があります(賞与なしの場合。基準額「46万円」は平成30年度の額です。基準額は年度により改定されることがあります)。

 

例えば、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額が216万円(年金月額18万円)なら、標準報酬月額28万円(報酬月額27万円以上29万円未満)まで役員報酬を引き下げる必要があります。

 

70歳以上社長が増えているので、70歳社長からの年金相談が増えている

 

団塊の世代(昭和2224年生まれ)が平成30年は7169歳を迎えます。

 
後継者がいないなどの理由で団塊世代の社長交代・事業承継が進んでいないことは、新聞等でも報道されている通りです。

 

10年前に比べると、70歳以上の代表取締役社長、代表取締役会長、取締役会長からの年金相談がかなり増えている印象です。

 

70歳以上の高額報酬経営者の年金については情報も少なく、誤解している人が多いです。

そのため、もらった年金を返せと言われて残念な思いをしている経営者が多くなっています。

 
70歳からはもう厚生年金に加入する必要はないため、働いていても年金は満額もらえると誤解していると大変です。

 

 

 昭和1241日以前生まれの人(平成30年度に81歳以上となる人)も、年金と報酬との調

整で、年金が支給停止されるようになった。

昭和27930日までは、「70歳以上被用者」として在職老齢年金の対象となるのは昭和1242日以後生まれの人だけでした。

 

ところが、法改正により平成27101日からは、昭和1241日以前生まれの人であっても、「70歳以上被用者」として在職老齢年金の対象者となりました。

 

これにより、85歳を過ぎても、90歳を過ぎても、代表取締役等として法人から一定額以上の報酬を受けていると年金が支給停止されるようになっています。

 

昭和1241日以前生まれであれば、老齢厚生年金(報酬比例部分の年金額)216万円、報酬月額100万円(賞与なし)の社長でも、平成27930日までは、老齢厚生年金(報酬比例部分)は全額もらえました。

 

そのような社長も平成27101日からは在職老齢年金の対象者となりましたので、報酬月額100万円のままだと、もらえる年金額は12万円(月額1万円)となってしまいます。

 

年金支給停止額(月額)=(老齢厚生年金(報酬比例部分)216万円÷12+標準報酬月額62万円-46万円)÷2=17万円

(注)報酬月額605,000円以上なら厚生年金の標準報酬月額は62万円となります。

 

年金支給額(月額)=18万円-17万円=1万円

 

法律が変わったからと言って、それまで報酬比例部分の年金216万円の満額をもらえていたものが急に12万円しかもらえなくなると、影響が大きすぎますよね。

 

そこで、平成27930日以前から継続して厚生年金適用事業所で働いている昭和1241日以前生まれの人の年金支給停止額計算に限っては、年金支給停止額が少なくなるように次の「激変緩和措置」が適用されます。

 

年金支給停止額(月額)=(老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12+標準報酬月額)×10

=216万÷12+62万円)×10

=8万円

年金支給額(月額)=18万円-8万円=10万円

 

法改正の施行日前から厚生年金適用事業所で働いていた人については、「年金月額+報酬月額」の10%相当額を上限として年金を支給停止するということです。

 

これにより、平成27930日以前から継続して厚生年金適用事業所で働いている昭和1241日以前生まれの人の報酬比例部分の年金額が216万円、報酬月額が100万円の場合、報酬比例部分の年金216万円のうち120万円はもらえることとなります。

 

 

(注)今回は賞与がない事例で解説しましたが、賞与がある場合は、直近12カ月に受けた賞与額(標準賞与額)も加味して年金支給停止額が計算されます。

 

 

(まとめ)

●現役経営者は70歳からも「70歳以上被用者」として在職老齢年金の対象となる。

●昭和1241日以前生まれの経営者も「70歳以上被用者」として在職老齢年金の対象となる。

●平成27930日以前から継続勤務している人には、年金支給停止額が少なくなる「激変緩和措置」が適用される。

 

在職老齢年金制度については、どんな年金解説書についても書いてあります。あえて、経営者に伝えるほどのことではないのではないでしょうか?

(質問)

在職老齢年金制度については、どんな年金解説書にも書いてあります。

あえて経営者に伝えるほどのことではないのではないでしょうか?

 

【回答】

いいえ。

中小企業経営者の中には、厚生年金保険に加入しながら働いていると年金額・報酬額に応じて年金がカットされる在職老齢年金制度というものがあること自体を知らない人がたくさんいます。

 

在職老齢年金制度があることを、なるべく早くから経営者にお伝えする必要があると考えております。

 

【解説】

 

年金がもらえる年齢になってからも一定額以上の報酬を受けながら働く経営者は、高額の厚生年金保険料を負担しているにもかかわらず、もらえる年金額が少なくなります。

 

在職老齢年金という年金と報酬との調整のしくみがあるためです。

 

年金制度にある程度詳しい方なら、在職老齢年金という制度があることはご存じだと思います。

 

しかし、中小企業の経営者の場合、そのような制度があること自体を知らない人も多いのです。

 

国の社会保険制度(健康保険・厚生年金保険)にきちんと加入し、長年毎月高額の社会保険料を支払っているのに、もらえない年金がある、ということを初めて知った経営者は皆さんとてもショックを受けて、残念な思いをされます。

 

年金事務所の窓口で「あなたには年金をもらう資格がありません。」と言われて、「資格がないとは何だ!40年近く保険料を払っても年金をもらえないのなら、最初からそのことを説明すべきではないか!こんな詐欺のようなことが許されるのか!」と喧嘩してきたという人もいます。

 

年金事務所で喧嘩をする社長を笑うことはできない

在職老齢年金については法律に定めてありますので、知らないからといって適用を逃れることはできません。

自分の加入している年金をもらえるかもらえないか位は、年金をもらえる年齢になる前に調べておくべきだ、と感じる方も多いでしょう。

 

しかし、長年多額の厚生年金保険料を支払い、年金をもらえる年齢になっても最高70歳までは引き続き厚生年金保険料を払い続ける必要があるのに、年金と報酬との調整は何歳になっても行われる、という在職老齢金制度は相当特殊な制度といってよいのではないでしょうか。

 

老齢年金の受給資格期間は10

平成2981日以降、老齢年金をもらうための「受給資格期間」が25年から10年に短縮されました。

 

これにより、それまでは公的年金に25年以上加入していないと老齢年金をもらえる資格がなかったものが、10年以上公的年金に加入していれば、老齢年金をもらえるようになりました。

 

公的年金に10年以上25年未満しか加入していない人は、平成297月までは老齢年金を全くもらえなかったのですが、平成298月からは、老齢年金をもらえるようになりました。

 

ただし、もらえる年金額はあくまでも公的年金加入記録に応じたものとなります。

 

例えば、国民年金に10年だけ加入して国民年金保険料を納付した人がもらえる老齢基礎年金は年額194,825円となります。(満額の老齢基礎年金779,300円×10年×12か月÷480月。平成30年度の場合)

 

公的年金に10年以上加入したら、何歳からどの年金をもらえるのか

(平成2981日から)

・公的年金に10年以上加入した人は、65歳から老齢基礎年金をもらえます。

・そのうち、1月でも厚生年金保険に加入した人は、65歳から老齢厚生年金ももらえます。

・そのうち、1年以上厚生年金保険に加入した人は、65歳前に特別支給の老齢厚生年金ももらえます。(何歳からもらえるかは、生年月日・性別によって異なります。)

 

(注)国民年金に加入していた期間であっても、保険料未納期間は受給資格期間のカウントには含まれません。

 

いまの報酬額のままでは年金がカットされることに、社長はいつ気づくのか

 

一定額以上の報酬で働いていると年金をもらえない、ということに経営者が気づくタイミングとしては、65歳前の特別支給の老齢厚生年金の年金請求書が届いたときがいちばん多いです。。

 

生年月日・性別に応じて定められた受給開始年齢を迎える3か月前に日本年金機構から緑色の封筒で年金請求書が送られてきます。

 

受給開始年齢になる前に、書き方や添付書類についてわからないことを相談するつもりで年金事務所に行って、そこではじめていまの報酬額のままでは年金をもらえないと知る人が多いです。

 

その頃に、顧問社労士や顧問税理士に相談して、もらえないと言われる人もいます。

 

金融機関などが開催している年金相談会で、もらえないと言われる人もいます。

 

受給開始年齢になったので特別支給の老齢厚生年金の請求書を年金事務所に提出しに行って、もらえないと言われる人もいます。

 

年金請求書を提出してから12か月後に届いた年金証書に年金額0円と記載されているのを見てはじめて知る人もいます。

 

65歳までの特別支給の老齢厚生年金の請求手続きを行わずに放置していたため、65歳になる3か月前に再度日本年金機構から年金請求書が送られてきたタイミングで、年金事務所に相談に行って、もらえないと言われる人もいます。

 

引退したら年金をもらおうと思って年金請求手続きを全く行わずに、70歳を過ぎてから年金事務所に相談に行って、過去5年分の老齢基礎年金・差額加算はさかのぼってもらえるけれど、全額支給停止となっていた老齢厚生年金(報酬比例部分)は一切もらえない、と言われて初めて長年の勘違いに気づく人もいます。、

 

黄色い封筒で年金請求書が届いた社長が年金を請求したところ・・・

 

平成298月から受給資格期間が10年に短縮されたことによって、新たに老齢年金をもらえるようになった人の元には、事前に日本年金機構から黄色い封筒で年金請求書が郵送されました。

 

法律が変わって年金をもらえるようになりましたので年金を請求してください、ということですね。

 

このとき、無職の人、自営業の人、正社員として働いている人、パート・アルバイトとして働いている人等様々な人のもとに黄色い封筒が届いたと思われますが、高額報酬の経営者の中にもこの黄色い封筒を受け取った人たちがおられました。

 

年金をもらえるようになりましたから請求してください、と日本年金機構から年金請求書請書が届いたので年金事務所に行って年金をもらう手続きをしようとしたら、「あなたは報酬が高いため年金をもらえません。」と言われた、と怒りの声を上げる経営者も各地におられました。

 

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