60歳以上現役社長の老齢厚生年金受給・役員報酬最適化なら滋賀県大津市の労務財務の専門家・FP奥野文夫事務所にお任せください!

中小企業社長さまの老齢厚生年金・社会保険等に関するお悩みを解決します。


FP奥野文夫事務所

〒520-0106 滋賀県大津市唐崎3-23-23

営業時間

月〜金 9:00〜18:00
(定休日:土日祝日)

FAX

077-578-8907

配偶者加給年金額、遺族厚生年金と生計維持関係における年収・所得要件

(2021年7月5日)


高額報酬の社長(厚生年金保険加入期間20年以上)が働きながら65歳から老齢厚生年金を受け取りたい場合で、社長の配偶者(厚生年金保険加入期間20年未満)も厚生年金保険に加入している場合は、本人の役員給与設定だけでなく配偶者の報酬設定についても、事前に変更しておくべきケースがあります。


社長が受け取る老齢厚生年金に配偶者加給年金が加算されるためには、社長が65歳になった時点で配偶者を「生計維持している」などの要件を満たしている必要があるからです。


この「生計維持要件」は、ざっくりいうと、次の要件をともに満たしていることが必要です。

1.老齢厚生年金を受ける本人と配偶者が生計を同じくし、
2.原則として、前年の年収(前年の年収が確定していない場合は前々年の年収)が850万円未満、または前年の所得(前年の所得が確定していない場合は前々年の所得)が655.5万円未満。


この「生計維持要件」の判断基準は、社長が亡くなったときに遺族厚生年金を配偶者が受けられるかどうかを判断する際に用いられる基準と同じです。


老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額は年額約39万円(令和3年度額は特別加算額を含み390,500円。老齢厚生年金を受ける人が昭和18年4月2日以後生まれの場合)で、配偶者が65歳になる月分までしか加算されません。
(配偶者が65歳になった月の翌月分からは配偶者加給年金額は加算されません。配偶者が昭和41年4月1日以前生まれの場合のみ、配偶者が65歳になった月の翌月分から配偶者自身の老齢基礎年金に少額の振替加算が加算されます)。


したがって、社長に比べてちょうど5歳(60か月)年下の場合でも、配偶者加給年金額の支給総額は最大約195万円(約39万円×5年分)に過ぎません。


それに対し、社長が亡くなった場合に支給される遺族厚生年金は、社長の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3相当額です。


配偶者が65歳となるまでは、中高齢寡婦加算年額約59万円(令和3年度額は585,700円)も加算されます。


社長の老齢厚生年金(報酬比例部分)が年額160万円で、社長死亡時に配偶者がちょうど60歳の場合で、配偶者が90歳で亡くなるまでの30年間遺族厚生年金を受給したとすると、遺族厚生年金の総額は約3,895万円にもなります。

・遺族厚生年金120万円(社長の老齢厚生年金(報酬比例部分)×3/4)×30年+中高齢寡婦加算約59万円×5年(配偶者が60歳から65歳になるまで)


実際には、配偶者の65歳からの老齢厚生年金が優先して支給され差額のみが遺族厚生年金として支給されますので、遺族厚生年金としての支給額は上記よりも少なくなります。


社長の老齢厚生年金額や、社長が何歳で亡くなるか、社長死亡時に配偶者が何歳か、配偶者が何歳まで遺族厚生年金を受給するかも様々です。


しかし、配偶者加給年金額を受給した場合の受給総額よりも遺族厚生年金を配偶者が受給した場合の受給総額が多くなるケースは多いです。



したがって、配偶者加給年金額を受給するために社長が65歳までに配偶者を「生計維持」しているかよりも、(社長が何歳であっても)社長が亡くなった時に配偶者が
遺族厚生年金をもらえる遺族に該当するか、つまり、社長が亡くなった時に社長が配偶者の「生計を維持」しているかの方が、より注意すべきことだといえます。



そこで今回は、遺族厚生年金における「生計維持要件」について解説いたします。


遺族厚生年金の支給要件のうちの一つである死亡当時の生計維持要件については、厚生年金保険法59条、厚生年金保険法施行令第3条の10および下記通知(「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」)の基準に基づき判定されることとなっています。


(以下、条文は読み飛ばしていただいて構いません)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・厚生年金保険法第59条
(遺族)
 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪そうの宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。以下この条に
おいて同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。
二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。
2 前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。
3 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、第一項の規定の適用については、将来に向つて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。
4 第一項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。


・厚生年金保険法施行令第3条の10
(遺族厚生年金の生計維持の認定)
法第五十九条第一項に規定する被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた配偶者、子、父母、孫又は祖父母は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であつて厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたつて有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者
として厚生労働大臣の定める者とする。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・(通知)生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7210&dataType=1&pageNo=1


代表取締役社長が亡くなった後、それまで取締役等として高額の役員給与を受けていた配偶者が代表取締役に就任するような事例も、中小オーナー企業ではよくみられます。


この場合、社長の死亡時の配偶者の前年(確定していない場合は前々年)の(一時的なものを除いた)収入が年額850万円以上かつ前年(確定していない場合は前々年)の(一時的なものを除いた)所得が年額655.5万円以上であれば、配偶者は遺族厚生年金を受給できないのが原則です。


しかし、社長が死亡して、配偶者が55歳以上60歳未満程度で配偶者の前年(または前々年)の収入および所得が基準額を超えている場合、次のような質問を受けることがあります。


「私は現在58歳ですのであと2年経てば60歳になります。
60歳になって役員給与を引き下げたら、遺族厚生年金をもらえるようになるでしょうか」


このような質問がみられる理由は、上記通知の「4 収入に関する認定要件・(1) 認定の要件1」として、次のような記載があるためです。

「エ 前記のア、イ又はウに該当しないが、定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。」


この「エ」は、一般的な話ですが、例えば次のようなケースであれば該当しえ得ます。

・遺族厚生年金を請求する人(例えば配偶者)が、亡くなった人の死亡の当時(死亡日)にどこかの会社の従業員として勤務しており、おおむね5年以内に(60歳等の)定年退職年齢を迎えることが、労働基準監督署に届けられていた(死亡日時点で配偶者に適用される労働条件が記載された)就業規則で確認できることにより、おおむね5年以内に収入・所得が基準額未満となることが死亡の当時に客観的に予測可能であったことが認められる。



遺族厚生年金が支給されるための「生計維持要件」を満たしていたかどうかは、あくまでも死亡の当時(=死亡日)に満たしていたかによって判断されるわけです。


社長死亡時の会社の経営状況や配偶者の収入・所得の内訳・役職・勤務状況等詳細は各ケース様々でしょうが、中小オーナー企業の代表取締役社長の死亡後、後継の代表取締役社長に就任した配偶者について、「60歳を迎える(迎えた)」という理由で、株主総会議事録・取締役会議事録に自身の収入・所得が今後下がる旨の記載があったとしても、
そのことだけをもって、おおむね5年以内に収入・所得が基準額未満となることが死亡の当時に客観的に予測可能であったと認められるのは難しいでしょう。


なぜなら、次の2つがわからないからです。

・その会社の代表取締役が60歳になると、なぜ役員給与が下がるのか

・60歳を迎えると役員給与が下がることが死亡の当時客観的に予測可能であったことが、何を見れば確認できるのか


中小企業のオーナー社長は、自身の役員給与を自由に決定できる立場にいますから、単に、前社長の死亡後に現社長が自身の役員給与額を下げた結果、前社長の死亡日からおおむね5年以内に現社長の収入または所得が基準額以内に下がったことだけをもって、前記「エ」に該当すると認められるわけではありません。



古い資料ですが、請求したものの生計維持要件が認められなかった遺族が審査請求・再審査請求を行った事例の裁決が15例紹介されている市販書籍もあります(棄却事例が多い
ですが、容認事例もいくつか掲載されています)。

http://www.minjiho.com/shopdetail/010007000003/

例外的におおむね5年以内に収入・所得が基準額未満となることが死亡の当時に客観的に予測可能であったと認められたケースは具体的にどういうケースであったのかを確認する
ことができ、参考になります。


その他、生計維持要件に関するものに限定されてはいませんが、厚生年金保険の遺族給付に関する最近の裁決例は厚生労働省ホームページでも確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/05.html



一般の経営者夫婦の場合、上記の内容を詳しく研究するまでもなく、万一の場合の遺族厚生年金のことも踏まえて、可能であれば社長に万一のことがある前に配偶者の年収を850万円未満にするか所得を655.5万円未満にするかしておくことが重要と言えます。



社長に万一のことがあった場合の死亡退職金原資をどうするかよりも先に、配偶者の役員給与が上記通達の基準額以内となっているかを確認しておくべきだといえるでしょう。

社長夫婦の年金相談に応じていると、配偶者の年収が850万円以上・所得が655.5万円以上となっていることも結構あります。


顧問社労士や顧問税理士がいる会社でも散見されます。


そのようなときでも、万一の時に社長の配偶者が遺族厚生年金をもらえないことを社長夫婦が知らないことが結構あります。


制度を理解した上で、何らかの理由で下げられないから配偶者も高額報酬を受けているのであれば仕方がないのですが、そのようなケースばかりではありません。



 

経営者様からのお電話でのお申込みはこちら

お電話でのお申込みはこちら

077-578-8896

営業時間:9:00〜18:00 (定休日:土日祝日)
担当:奥野 文夫 (おくの ふみお)

現在大変多くコンサルティングのお申込みをいただいており、無料電話相談は行っておりません。
(奥野の留守中にお電話いただき、伝言いただきましても、こちらから折り返しお電話をすることはできません。)

所長の奥野です。

社長さまのお悩みを、
年金・社会保険相談の専門家(FP・社労士)として開業25年超の私が、最後まで責任を持って解決いたします。

無料メール講座
(全国対応)

中小企業経営者様限定

60歳以上現役社長が働きながら年金を受け取るために必要な基礎知識(全13回)を無料で
ご覧いただます!

 

無料メール講座登録はこちら

(社労士、税理士、コンサルタント、FP等同業者の登録はご遠慮ください。)