60歳以上現役社長の老齢厚生年金受給・役員報酬最適化なら滋賀県大津市の労務財務の専門家・FP奥野文夫事務所にお任せください!

中小企業社長さまの老齢厚生年金・社会保険等に関するお悩みを解決します。


FP奥野文夫事務所

〒520-0106 滋賀県大津市唐崎3-23-23

営業時間

月〜金 9:00〜18:00
(定休日:土日祝日)

FAX

077-578-8907

繰下げの事務処理誤りから学ぶ繰下げの注意点

報酬が高い経営者の場合は特に、「他の年金」の受給権があるため老齢厚生年金を繰下げできないのに繰下げ待機することがないよう注意が必要

(2021年12月21日)

老齢年金の繰下げに関する事務処理誤りは昔からよく発生しており、日本年金機構が毎月公表している事務処理誤り事例でもよくみられます。


先月末も典型的な誤り事例が公表されていいました。



概要は次の通りです。
・発生年月日:2014年10月7日
・判明年月日:2020年12月28日
・某年金事務所にて発生

・事案の概要:遺族年金受給権の有無の確認不足から、遺族年金の受給権を有する人に対し、繰下げができると説明していたため、老齢年金が未払いとなっていることが判明。

・影響:未払い6,496,174円
・対応:訂正処理が行われ正しい年金額が支払われた。



65歳からの老齢基礎年金や老齢厚生年金は、66歳以降に繰り下げて、「繰下げ月数×0.7%」年金を増額できます。
(ただし、老齢厚生年金を繰り下げた場合に増額されるのは、在職老齢年金制度により支給停止されない分だけです)


昭和27年4月1日以前生まれの人は最高70歳まで繰下げでき、昭和27年4月2日以後生まれの人は最高75歳まで繰下げできます。



しかし、66歳までに「他の年金」(老齢基礎年金や老齢厚生年金と併給できない年金)の受給権が生じた人は繰下げできません。



上記の事例は、遺族年金という「他の年金」の受給権がある人に対して、老齢年金を繰り下げると「繰下げ月数×1.42倍」に年金額が増えますよ、と年金事務所の窓口で説明してしまったというものです。



何歳のときに誤りが判明したのか、繰下げをしたのは老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方なのか片方なのか等の詳細がわかりませんが、例えば、次のような展開だったとしたらどうでしょうか。



・65歳時に年金事務所で相談したところ、老齢基礎年金・老齢厚生年金を70歳まで繰下げたら、1.42倍(「繰下げ月数60月×0.7%」)に年金を増額できると説明された。
・そこで老齢基礎年金は65歳から請求するものの、老齢厚生年金年額130万円は70歳まで繰下げて、184.6万円(130万円×繰下げ月数60月×0.7%)に増額するつもりで待機することとした。
・70歳になったので老齢厚生年金を繰下げ申出をした。
・「他の年金」の受給権が66歳までに生じているあなたは繰下げできません、と言われた。
・老齢厚生年金について、65歳に遡って、繰下げではない本来の請求をすることとなり、過去5年間分の増額されない年金650万円(130万円×5年分)が一括支給された。
・老齢厚生年金については今後も、繰下げ増額されない年金(および65歳以降も厚生年金保険に加入していたのであれば、その期間の加入記録が反映した年金)を一生受給することとなります。



繰下げできない人(つまり本来の請求しかできない人)が本来の請求を行わなかったことにより、「未払い」となっていた年金が650万円あったことが判明したため、(時効5年
の範囲内の未払いの年金について)全額支給が行われた、ということですね。



この事例がもし上記のような内容であったとしたら、65歳以降退職していた人か、在職していたとしても老齢厚生年金(報酬比例部分)が支給停止とならない程度の報酬・賞与を受けていた人だろうと思われます。


もし上記のような事例で、65歳到達月の翌月以降繰下げ申出月(70歳到達月とします)まで老齢厚生年金(報酬比例部分)がずっと全額支給停止だったとしたら、老齢厚生年金について65歳に遡って本来の請求をしても、一括受給できるのは老齢厚生年金(経過的加算部分)だけです。


この場合、例えば、老齢厚生年金130万円の内訳が報酬比例部分129万円・経過的加算部分1万円だったとしたら、


65歳に遡って請求しても、一括受給できる金額は5万円(1万円×5年分)だけです。


そして、70歳以降も老齢厚生年金(報酬比例部分)が全額支給停止となるような報酬設定で働き続ける限り、何歳になっても老齢厚生年金支給額は、繰下げ増額されない老齢厚生年金(経過的加算部分)年額1万円のみです。



令和4年度から、昭和27年4月2日以後生まれの人の繰下げの最高年齢が75歳となるため、繰下げを希望する人の「他の年金」の受給権の有無の確認の重要性が増します。



「他の年金」を実際に受給していなくても・請求していなくても、「他の年金」の受給権があると繰下げが制限されます。


「他の年金」が障害年金の場合は、老齢年金を受給する人も障害状態にある人も同一人ですが、「他の年金」が遺族年金の場合は、老齢年金を受給する人と死亡した人が別人(夫婦など)ですので、特に注意が必要です。



例えば、特別支給の老齢年金を受給している(年収850万円未満または所得655.5万円未満で)65歳未満の社長の配偶者が亡くなって遺族厚生年金ももらえるようになった場合では、特別支給の老齢厚生年金と遺族厚生年金のいずれか一方の年金しかもらえません。


(在職老齢年金制度適用後の)特別支給の老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも多いため遺族厚生年金を請求しない場合でも、遺族厚生年金の受給権者であることには違いありません。


したがって、65歳からの老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げることはできません。


また、65歳以降は、老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金をもらえますが、老齢厚生年金と遺族厚生年金との間で調整が行われます(老齢厚生年金優先)。



老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも額が多い場合は、遺族厚生年金を請求したとしても、結果として遺族厚生年金としての支給額は0円となります。


この場合でも、遺族厚生年金の受給権者であることには違いありません。


したがって、老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げることはできません。



令和4年度からの改正では、在職老齢年金と繰下げとの関係も、「他の年金」繰下げとの関係も、仕組み自体は改正されません。


その中で、繰下げできる最高年齢が5年延長されますので、在職老齢年金と繰下げとの関係、「他の年金」繰下げとの関係について理解しておくことが、これまで以上に重要と
なります。



なお、66歳到達後に「他の年金」の受給権が生じた場合は、それ以上は繰下げできなくなります。


 

経営者様からのお電話でのお申込みはこちら

お電話でのお申込みはこちら

077-578-8896

営業時間:9:00〜18:00 (定休日:土日祝日)
担当:奥野 文夫 (おくの ふみお)

現在大変多くコンサルティングのお申込みをいただいており、無料電話相談は行っておりません。
(奥野の留守中にお電話いただき、伝言いただきましても、こちらから折り返しお電話をすることはできません。)

所長の奥野です。

社長さまのお悩みを、
年金・社会保険相談の専門家(FP・社労士)として開業24年超の私が、最後まで責任を持って解決いたします。

無料メール講座
(全国対応)

中小企業経営者様限定

60歳以上現役社長が働きながら年金を受け取るために必要な基礎知識(全13回)を無料で
ご覧いただます!

 

無料メール講座登録はこちら

(社労士、税理士、コンサルタント、FP等同業者の登録はご遠慮ください。)