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繰下げの事務処理誤りから学ぶ繰下げの注意点

報酬が高い経営者の場合は特に、「他の年金」の受給権があるため老齢厚生年金を繰下げできないのに繰下げ待機することがないよう注意が必要

(2021年12月21日)

老齢年金の繰下げに関する事務処理誤りは昔からよく発生しており、日本年金機構が毎月公表している事務処理誤り事例でもよくみられます。


先月末も典型的な誤り事例が公表されていいました。



概要は次の通りです。
・発生年月日:2014年10月7日
・判明年月日:2020年12月28日
・某年金事務所にて発生

・事案の概要:遺族年金受給権の有無の確認不足から、遺族年金の受給権を有する人に対し、繰下げができると説明していたため、老齢年金が未払いとなっていることが判明。

・影響:未払い6,496,174円
・対応:訂正処理が行われ正しい年金額が支払われた。



65歳からの老齢基礎年金や老齢厚生年金は、66歳以降に繰り下げて、「繰下げ月数×0.7%」年金を増額できます。
(ただし、老齢厚生年金を繰り下げた場合に増額されるのは、在職老齢年金制度により支給停止されない分だけです)


昭和27年4月1日以前生まれの人は最高70歳まで繰下げでき、昭和27年4月2日以後生まれの人は最高75歳まで繰下げできます。



しかし、66歳までに「他の年金」(老齢基礎年金や老齢厚生年金と併給できない年金)の受給権が生じた人は繰下げできません。



上記の事例は、遺族年金という「他の年金」の受給権がある人に対して、老齢年金を繰り下げると「繰下げ月数×1.42倍」に年金額が増えますよ、と年金事務所の窓口で説明してしまったというものです。



何歳のときに誤りが判明したのか、繰下げをしたのは老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方なのか片方なのか等の詳細がわかりませんが、例えば、次のような展開だったとしたらどうでしょうか。



・65歳時に年金事務所で相談したところ、老齢基礎年金・老齢厚生年金を70歳まで繰下げたら、1.42倍(「繰下げ月数60月×0.7%」)に年金を増額できると説明された。
・そこで老齢基礎年金は65歳から請求するものの、老齢厚生年金年額130万円は70歳まで繰下げて、184.6万円(130万円×繰下げ月数60月×0.7%)に増額するつもりで待機することとした。
・70歳になったので老齢厚生年金を繰下げ申出をした。
・「他の年金」の受給権が66歳までに生じているあなたは繰下げできません、と言われた。
・老齢厚生年金について、65歳に遡って、繰下げではない本来の請求をすることとなり、過去5年間分の増額されない年金650万円(130万円×5年分)が一括支給された。
・老齢厚生年金については今後も、繰下げ増額されない年金(および65歳以降も厚生年金保険に加入していたのであれば、その期間の加入記録が反映した年金)を一生受給することとなります。



繰下げできない人(つまり本来の請求しかできない人)が本来の請求を行わなかったことにより、「未払い」となっていた年金が650万円あったことが判明したため、(時効5年
の範囲内の未払いの年金について)全額支給が行われた、ということですね。



この事例がもし上記のような内容であったとしたら、65歳以降退職していた人か、在職していたとしても老齢厚生年金(報酬比例部分)が支給停止とならない程度の報酬・賞与を受けていた人だろうと思われます。


もし上記のような事例で、65歳到達月の翌月以降繰下げ申出月(70歳到達月とします)まで老齢厚生年金(報酬比例部分)がずっと全額支給停止だったとしたら、老齢厚生年金について65歳に遡って本来の請求をしても、一括受給できるのは老齢厚生年金(経過的加算部分)だけです。


この場合、例えば、老齢厚生年金130万円の内訳が報酬比例部分129万円・経過的加算部分1万円だったとしたら、


65歳に遡って請求しても、一括受給できる金額は5万円(1万円×5年分)だけです。


そして、70歳以降も老齢厚生年金(報酬比例部分)が全額支給停止となるような報酬設定で働き続ける限り、何歳になっても老齢厚生年金支給額は、繰下げ増額されない老齢厚生年金(経過的加算部分)年額1万円のみです。



令和4年度から、昭和27年4月2日以後生まれの人の繰下げの最高年齢が75歳となるため、繰下げを希望する人の「他の年金」の受給権の有無の確認の重要性が増します。



「他の年金」を実際に受給していなくても・請求していなくても、「他の年金」の受給権があると繰下げが制限されます。


「他の年金」が障害年金の場合は、老齢年金を受給する人も障害状態にある人も同一人ですが、「他の年金」が遺族年金の場合は、老齢年金を受給する人と死亡した人が別人(夫婦など)ですので、特に注意が必要です。



例えば、特別支給の老齢年金を受給している(年収850万円未満または所得655.5万円未満で)65歳未満の社長の配偶者が亡くなって遺族厚生年金ももらえるようになった場合では、特別支給の老齢厚生年金と遺族厚生年金のいずれか一方の年金しかもらえません。


(在職老齢年金制度適用後の)特別支給の老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも多いため遺族厚生年金を請求しない場合でも、遺族厚生年金の受給権者であることには違いありません。


したがって、65歳からの老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げることはできません。


また、65歳以降は、老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金をもらえますが、老齢厚生年金と遺族厚生年金との間で調整が行われます(老齢厚生年金優先)。



老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも額が多い場合は、遺族厚生年金を請求したとしても、結果として遺族厚生年金としての支給額は0円となります。


この場合でも、遺族厚生年金の受給権者であることには違いありません。


したがって、老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げることはできません。



令和4年度からの改正では、在職老齢年金と繰下げとの関係も、「他の年金」繰下げとの関係も、仕組み自体は改正されません。


その中で、繰下げできる最高年齢が5年延長されますので、在職老齢年金と繰下げとの関係、「他の年金」繰下げとの関係について理解しておくことが、これまで以上に重要と
なります。



なお、66歳到達後に「他の年金」の受給権が生じた場合は、それ以上は繰下げできなくなります。


 

公表されている最近の事務処理誤りから、繰下げに関する誤り事例をご紹介

(2023年10月2日)

老齢年金の繰下げに関する事務処理誤りで以前から散見されていた事例は、繰り下げた年金をもらうための手続きを行ったのに、繰り下げしないで65歳にさかのぼってもらうものとして日本年金機構が誤って決定してしまい、繰り下げ増額されない年金数年分をまとめて一括支給してしまったというものです。
最近の事例を一つだけ紹介すると次のものがあります。


■事務処理誤り等(令和5年7月分)より

件名:老齢年金の繰下げの誤り
誤り区分:確認・決定誤り
都道府県名:東京
事務所名:太田
発生年月日:2023年1月19日
判明年月日:2023年3月10日
事象・対応:〇お客様から問合せがあり、年金決定時の確認不足から、老齢年金の繰下げ請求を希望している方に対し、誤って65歳支給の老齢厚生年金を決定したため、年金が過払いとなっていることが判明しました。

●担当者がお客様にお詫びの上説明しました。
訂正処理を行い、過払いの年金について返納の処理を行いました。
●担当部署において、年金決定時に処理内容の確認を徹底するよう周知しました。


このようなケースでは、支給された年金額が本人の想定と全く異なるわけですから、本人がすぐに気づくでしょう(上記事例では支給された年金額は約632万円とのことです)。


そして、本人から日本年金機構に問い合わせれば、すぐに日本年金機構のミスであることが判明するでしょうから、誤って65歳にさかのぼって一括支給された年金を返して、代わりに繰下げ増額された正しい年金を受け続けることができるようになります。


実際にこういう事例に遭遇したご本人からすると、驚き・焦りは当然あるでしょうが、問い合わせれば、事実確認後すぐに是正がされますのでまだよいほうといえるでしょう。




しかし、次のような注意すべき事例も多くみられます。


日本年金機構(年金事務所や街角の年金相談センター)の年金相談で繰下げができると説明されたため、年金を増額させようと思って何年も繰下げ待機をしていたのに、実は説明が誤りであって、繰下げができないことが判明してしまったというパターンです。


このようなケースでは、本人の期待通り繰下げ増額することはできないわけですので、注意が必要です。


このような事例も以前からよく発生しており、最近でも公表されている事例があります。


障害厚生年金・遺族厚生年金等「他の年金」の受給権が66歳になるまでに生じた人は、老齢年金を繰り下げることができないことが法律で定められているのですが、公表事例では特に遺族年金の受給権がある人に対して老齢年金の繰り下げができると誤った説明がされ、繰り下げ待機後数年経ってから、説明誤りが過去にあったことが判明した事例が散見されます。


例えば、経営者が66歳になるまでに配偶者が亡くなったため遺族厚生年金の受給権が経営者に生じているものの、遺族厚生年金の額が少ないため遺族厚生年金の請求をしていないケースや、請求はしているものの結局遺族厚生年金としての支給額が0円となっているようなケースでも、経営者に「他の
年金」(遺族厚生年金)の受給権が生じていますので、経営者は老齢年金を繰り下げできません。


(なお、66歳を過ぎてから「他の年金」の受給権が生じた場合は、その時点までしか繰下げできません)





■事務処理誤り等(令和5年5月分)より

件名:老齢年金の繰下げの誤り
誤り区分:説明誤り
都道府県名:福島
事務所名:郡山
発生年月日:2019年8月9日
判明年月日:2022年9月16日
事象・対応:〇お客様から問合せがあり、年金受給状況の確認不足から、遺族年金の受給権を有するため、老齢年金の繰下げ請求ができない方に対して、繰下げ請求できると説明し、老齢年金が未払いになっていることが判明しました。

●担当者がお客様にお詫びの上説明しました。訂正処理を行い、お客様に正しい年金が支払われたことを確認しました。
●担当部署において、年金相談時に受給状況の確認を徹底するよう周知しました。



■事務処理誤り等(令和5年5月分)より

件名:老齢年金の繰下げの誤り
誤り区分:説明誤り
都道府県名:広島
事務所名:広島南
発生年月日:2017年5月23日
判明年月日:2022年8月30日
事象・対応:〇担当部署において確認したところ、年金受給状況の確認不足から、遺族年金の受給権を有するため、老齢年金の繰下げ請求ができない方に対して繰下げ請求できると説明し、老齢年金が未払いになっていることが判明しました。

●担当者がお客様にお詫びの上説明しました。訂正処理を行い、お客様に正しい年金が支払われたことを確認しました。
●担当部署において、年金相談時に受給状況の確認を徹底するよう周知しました。


■事務処理誤り等(令和5年2月分)より

件名:老齢年金の繰下げの誤り
誤り区分:説明誤り
都道府県名:福井
事務所名:敦賀
発生年月日:2019年9月26日
判明年月日:2022年2月25日
事象・対応:〇担当部署において確認したところ、遺族年金受給権の有無の確認不足から、遺族年金の受給権を有するため老齢年金の繰下げ請求ができない方に対して、繰下げ請求できると説明していたことが判明しました。

●担当者がお客様にお詫びの上説明しました。
●担当部署において、年金相談時に受給状況の確認を徹底するよう周知しました。



■事務処理誤り等(令和4年11月分)より

件名:老齢年金の繰下げの誤り
誤り区分:説明誤り
都道府県名:兵庫
事務所名:尼崎
発生年月日:2015年6月6日
判明年月日:2022年2月9日
事象・対応:〇担当部署において確認したところ、遺族年金受給権の有無の確認不足から、遺族年金の受給権を有するため、老齢年金の繰下げ請求ができない方に対して繰下げ請求できると説明し、老齢年金が未払いになっていることが判明しました。

●担当者がお客様にお詫びの上説明しました。訂正処理を行い、お客様に正しい年金が支払われたことを確認しました。
●担当部署において、年金相談時に受給状況の確認を徹底するよう周知しました。



「老齢年金が未払いになっていることが判明しました」という表現が、日本年金機構の立場からの説明となっているため、わかりにくいかもしれません。


繰下げ増額されるよう老齢年金を請求せずに待機していたものの、もともと繰下げを利用できない人に該当していた、ということは、結局、その人は本来の請求(繰下げ増額されない額を65歳にさかのぼって受ける)しか選択肢はない、ということです。


とすると、65歳から受けるべきであった老齢年金が受給漏れの状況となっているわけですから、
その分の年金(のうち時効5年以内分)がさかぼのって一括支給されることとなった、ということですね。



(補足)法改正により令和4年度から昭和27年4月2日以後生まれの人は最高75歳まで老齢年金を繰り下げられるようになりました。


この改正により、70歳を過ぎて繰下げ待機していた人が何らかの理由で結局繰下げしないで本来の請求をした場合に、年金の時効5年にかかってしまう部分が生じてしまうこととなるため、令和5年度から「特例的な繰下げみなし増額制度」も開始されました。
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2023/r5_kurisage_kaisei.html


しかし、請求の5年前の日以前から障害厚生年金・遺族厚生年金等の受給権がある方には、この「特例的な繰下げみなし増額制度」は適用されません。


その他、繰下げについては、次のような事例も公表されていました。


繰下げ受給の手続きをした人に対して繰下げ増額された年金が支給されたものの、日本年金機構本部の中央センターにおいて、繰下げ加算額を間違って処理してしまっていた、というものです。



この事例では、正しい年金額よりも多い額が支給されたのですが、万一、正しい額よりも少ない額が支給されてしまって本人がそのことに気づかないようなことがもしあると、大変です。


特に高額報酬の社長の老齢厚生年金の繰下げ加算額の計算は、いつもお伝えしております通り、とても複雑です。


万一間違った額が支給されてしまっても気づくことができるよう、繰下げを検討される際には、繰下げ加算額の計算方法の基本事項は押さえておいていただくことが望ましいと思います。



■事務処理誤り等(令和5年2月分)より

件名:老齢年金の繰下げの誤り
誤り区分:確認・決定誤り
都道府県名:本部
事務所名:中央センター
発生年月日:2022年11月21日
判明年月日:2022年12月28日
事象・対応:〇担当部署において確認したところ、繰下げ請求書処理時の確認不足から、誤った繰下げ加算額で処理を行ったため、老齢年金が過払いとなっていることが判明しました。

●担当者がお客様にお詫びの上説明しました。
訂正処理を行い、過払いの年金について返納の処理を行いました。
●担当部署において、繰下げ請求書処理時に繰下げ加算額の確認を徹底するよう周知しました。



 

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