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65歳以降の厚生年金保険加入と老齢年金の繰下げについて

65歳以降の厚生年金保険加入と老齢厚生年金の繰下げ

(2022年6月30日)


繰下げはとても難解な制度ですので、昔から誤解が非常に多いトピックです。



昭和27年4月2日以降生まれの人を対象として令和4年度から最高75歳までの繰下げ制度が開始されたためか、繰下げに関する相談が最近ますます増えています。



・老齢厚生年金が全額支給停止となるような報酬設定のまま老齢厚生年金を繰り下げても老齢厚生年金は全く増額されない。


社長・役員の年金繰下げではこのことが最も重要ですので、従来から何度もお伝えしています。


繰下げについては、それ以外にも、知っておかないと誤解につながるポイントがいくつもあります。



今日は、

・(老齢厚生年金が支給停止ならないような報酬設定に事前に変更しておいた上で)老齢厚生年金を繰り下げても、65歳以降厚生年金保険に加入することによって老齢厚生年金が増えた分については、繰下げ増額されない


ということについてお伝えします。



繰下げに関するネット記事や市販のムック本記事の記載内容を示して相談をいただくこともよくあるのですが、それらの記載において、次のような説明がされていることがあります。



1.65歳からも厚生年金保険に加入すると、老齢厚生年金が増える

2.老齢厚生年金を繰り下げると、老齢厚生年金が「0.7%×繰下げ月数(最高120月)」増える


3.したがって、65歳からも厚生年金保険に加入した上で老齢厚生年金を繰り下げると、 
 {「65歳時の老齢厚生年金」+「65歳以降厚生年金保険に加入したことによって増えた老齢厚生年金」}が「0.7%×繰下げ月数(最高120月)」増額される。


上記の1や2は正しいですが、3は間違っていますので、ご注意下さい。



●(ポイント)
老齢厚生年金を繰下げたときに繰下げ増額の対象となる年金は、65歳時点の老齢厚生年金(65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入記録に基づいて計算した老齢厚生年金)だけです。



65歳到達月以降の厚生年金保険加入によって老齢厚生年金が増えた分(注)は、繰下げ増額の対象とはなりません。


 

(注)繰下げする・しないとは関係なく、65歳以降の厚生年金保険加入記録が老齢厚生年金額に反映して老齢厚生年金額が増額される契機は、次の3通りあります。
1.令和4年度以降「在職定時改定」が行われるとき(毎年8月分までの厚生年金保険加入記録に基づき、その年の10月分から増額改定。60歳台後半の厚生年金保険被保険者が対象)
2.70歳になるまでの間に退職して1月が経過したとき(退職月の前月まで(退職日が月の末日の場合は退職月まで)の厚生年金保険加入記録に基づき、退職月の翌月分から改定
3.70歳になったとき(70歳到達月の前月までの厚生年金保険加入記録に基づき、70歳到達月の翌月分から改定

 



●(根拠)

老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)を満たしており、厚生年金保険の被保険者期間が1月以上ある人は、65歳に到達すると老齢厚生年金の受給権を取得します。

(このことは、老齢厚生年金の「受給権者」について定めた厚生年金保険法第42条に規定されています)


そして、老齢厚生年金の「支給の繰下げ」について定めた厚生年金保険法第44条の3第4項において、繰下げの申出をした人に対する老齢厚生年金の繰下げ増額分の計算について、
「老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎として…」と規定されています。


したがって、受給権取得月以降(65歳到達月以降)の厚生年金保険加入分は、老齢厚生年金を繰下げても繰下げ増額されません。

また、「支給の繰下げの際に加算する額」の計算方法について定めた厚生年金保険法施行令第3条の5の2第1項においても、

「老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月(「受給権取得月」)の前月までの被保険者期間(「受給権取得月前被保険者期間」)を基礎として・・・」と規定されています。

 

(補足解説)
・老齢厚生年金を繰り下げると、(受給権取得月の前月までの厚生年金保険被保険者期間を基礎として計算された)老齢厚生年金(報酬比例部分)だけでなく老齢厚生年金
(経過的加算部分)も繰下げ増額されること

や、

・老齢厚生年金が全額支給停止となるような報酬を受けている人が老齢厚生年金を繰下げても全く増額されないこと

の根拠条文も、厚生年金保険法施行令第3条の5の2です。




(参考)
「e-Gov法令検索」厚生年金保険法

 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115_20220401_502AC0000000040

・「e-Gov法令検索」厚生年金保険法施行令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329CO0000000110_20220401_503CO0000000229

 

65歳以降の厚生年金保険加入と老齢基礎年金の繰下げ

65歳以降の厚生年金保険加入と「老齢基礎年金」の繰下げについても、次のように誤解している社長が少なくありません。



1.65歳からも厚生年金保険に加入すると、老齢基礎年金が増える

2.老齢基礎年金を繰り下げると、老齢基礎年金が「0.7%×繰下げ月数(最高120月)」増える

3.したがって、65歳からも厚生年金保険に加入した上で、老齢基礎年金を繰り下げると、{「65歳時の老齢基礎年金」+「65歳以降厚生年金保険に加入したことによって増えた老齢基礎年金」が 「0.7%×繰下げ月数(最高120月)」増額される。


こちらは、2だけは正しいのですが、1も3も間違っていますので、ご注意下さい。



●ポイント

(1について)
65歳到達月以降の厚生年金加入期間は、老齢基礎年金額には反映しません。
なお、60歳到達月以降65歳到達月の前月までの厚生年金加入期間も、老齢基礎年金額には反映しません。


(3について)
老齢基礎年金を繰下げたときに繰下げ増額の対象となる年金は、65歳時点の老齢基礎年金です。



●根拠

老齢基礎年金の額は、国民年金法第27条に定められています。


条文は複雑であり、厚生年金保険加入期間が長い方にとっては馴染みがない内容だと思いますので、簡単にポイントだけまとめると、次の通りとなります。


・老齢基礎年金の額=780,900年×改定率×(保険料納付済期間の月数+保険料免除期間の月数×7/8~1/3)÷480月


令和4年度の改定率は0.996のため、780,900円×0.996円の計算結果を100円単位にした777,800円が令和4年度の老齢基礎年金の満額です。

(50円未満の端数は切り捨て、50円以上100年未満の端数は100円に切上げることとなっています。)



最初に結論をお伝えすると、
◇60歳以降に国民年金に任意加入しなかった人の「65歳時点の老齢基礎年金」の額は、
(昭和36年4月1日以降の期間で)20歳以上60歳未満の「保険料納付済期間」等の月数に基づいて計算されます。


したがって、60歳以上70歳未満の間において厚生年金保険に加入したとしても、
60歳以上65歳未満の厚生年金加入期間も、
65歳以上70歳未満の厚生年金加入期間も、
いずれも老齢基礎年金額には反映しません。


(注)厚生年金保険に加入しながら、同時に国民年金に任意加入することはできません。


社長の年金相談の現場で上記の結論をお伝えしても、短時間ではなかなか理解をいただけないケースが多いです。


なかには、60歳以降も厚生年金保険に加入している間は国民年金の第2号被保険者でもあるので、60歳以降も厚生年金保険に加入すると、老齢基礎年金額も増えるのではないでしょうか、との質問を受けることもあります。


たしかに、国民年金法第5条第1項で、「保険料納付済期間」には、国民年金法第7条第1項第1号に規定する国民年金被保険者(いわゆる第1号被保険者のこと。個人事業主・無職の人等)が国民年金保険料を納めた期間や産前産後の国民年金保険料免除期間だけでなく、いわゆる第2号被保険者(会社員・公務員・私立学校教職員)や第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の人)であった期間も含まれる、とされています。



しかし、「国民年金の被保険者期間等の特例」について定めた国民年金法昭和60年改正法附則第8条第4項(昭和60年5月1日法律第34号)で、

老齢基礎年金額の計算にあたっては、国民年金法第5条第1項の規定に関わらず、「20歳に達した日の属する月前の期間および60歳に達した日の属する月以後の期間」に係る保険料納付済期間は(「当分の間」)保険料納付済期間に算入せず、

老齢基礎年金の受給資格があるかをみる際には、
合算対象期間(受給資格期間には含まれるが老齢基礎年金額には反映しない期間)に算入する
旨が定められています。


「当分の間」とは、法改正が行われて改正後の規定が施行されるまでの間、という意味であり、これまでのところ、この点について法改正は行われていません。

 

(注)令和元年財政検証において、「年金制度の課題の検討材料として、様々な議論のベースを提供する」ための「オプション試算」のうちの一つとして、「基礎年金給付算定の際の保険料の納付年数の上限を現行の40年(2060歳)から45年(2065歳)に延長し、納付年数が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みに変更した場合」の試算が示されてはいました)。
(参考)2019(令和元)年財政検証結果レポート

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093204_00002.html

 



以上の通り、
老齢基礎年金額を計算する場合の「保険料納付済期間」に含まれる期間は、実は、障害基礎年金や遺族基礎年金の保険料納付要件をみる場合の「保険料納付済期間」よりも範囲が狭いのです。


そして、老齢基礎年金の「支給の繰下げ」について定めた国民年金法第28条第4項に、老齢基礎年金の繰下げ申出をした人に支給する老齢基礎年金の額は、国民年金法第27条「に定める額に政令で定める額を加算した額とする。」と規定されています。


ここでの政令とは、「支給の繰下げの際に加算する額」について定めた国民年金法施行令第4条の5です。
この条文において、国民年金法第28条第4項に規定する政令で定める額は、国民年金法第27条の規定によって計算した額に増額率を乗じて得た額とする旨が定められています。


前述の通り、国民年金法第27条の老齢基礎年金額の算定の基礎となる「保険料納付済期間」には(20歳前や)60歳以降の厚生年金保険加入期間は含まれませんので、60歳以降や65歳以降厚生年金保険に加入した期間は、老齢基礎年金の繰下げ増額には影響しません。


(条文)
・国民年金法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000141
・国民年金法施行令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334CO0000000184



(参考)
ちなみに、60歳以上65歳未満の厚生年金保険加入期間は国民年金の第2号被保険者になりますが、65歳に到達して老齢厚生年金の受給権者となると、国民年金の第2号被保険者ではなくなります(国民年金法第9条第4項)。


したがって、厚生年金保険に加入している人が65歳になったときに、60歳未満で国民年金の第3号被保険者となっている被扶養配偶者がいる場合、その被扶養配偶者は60歳に達するまでの間国民年金の第1号被保険者となります。
(被扶養配偶者自身が市区町村の国民年金窓口に国民年金被保険者種別変更の届け出をする必要があり、60歳になるまでの間国民年金保険料がかかります。届出・保険料納付を行わないと、被扶養配偶者自身の65歳からの老齢基礎年金額が少なくなってしまいます。)

 

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