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複数の会社から報酬を受けることとなった社長等の健康保険・厚生年金保険に関する注意点

(2022年10月2日)

複数の法人から代表取締役等として報酬(や賞与)を受けている人の場合、別法人から受ける報酬・賞与も加味して決定された標準報酬月額・標準賞与額に応じて、社会保険料や年金支給停止額が決まることとなります。

この点について一般向けの書籍やインターネット上の記事等で、「複数の法人から受ける報酬月額の合算額に応じて、社会保険料や年金支給停止額が決まる」と表現されていることもよくあります。
一般の方にとってわかりやすいように、私(奥野)もそのような記載をすることがあります。


各社から受けている報酬額に変動がなく必要な届出が過去に全て適切に行われている場合は、この程度のざっくりとした理解でも問題は生じません。

しかし、例えば次のようなケースでは見込み違いが生じやすいため、注意が必要です。

 

標準報酬月額について見込み違いが生じやすいケース

9月決算のA社代表取締役(66歳)。老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額120万円。働きながら老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部を受給したいと考え、昨年12月支給分から、報酬月額を60万円から40万円に下げていた。賞与受給はなし。

・報酬月額40万円を昨年12月・本年1月・2月と3か月連続支給した月の翌月(3月)から標準報酬月額が41万円に下がり、老齢厚生年金(報酬比例部分)は、月額換算で10万円のうち、8万円だけ受給できることとなった(実際の年金支給は2か月に1回偶数月に前々月分・前月分を支給)。

・年金支給停止額(月額換算額)={「基本月額」10万円(120万円÷12)+「総報酬月額相当額41万円」(標準報酬月額41万円(注)+その月以前の1年間の標準賞与額の総額0÷12)-基準額47万円}÷22万円

(注)報酬月額40万円を標準報酬月額等級表にあてはめると、標準報酬月額は41万円となる。

 

その後、代表取締役社長を後継者に譲り、自身は常勤の取締役会長として後継社長を数年サポートし続けることとし、A社からの報酬を本年4月支給分から20万円に引き下げることとしました。

いずれは完全に後継者にA社の経営を任せて、自身はA社を退任するつもりです。

 

ところが、A社の会長(前社長)は、自身の今後の人生を見つめ直してみると、A社の事業とは別に、ライフワークとしてどうしてもやりたいことがあるため、新たに自身を代表者とする法人(B社)を立ち上げて、本年4月からB社からも毎月20万円の報酬を受けることとしました(賞与なし)。

 

このようにして本年4月から、A社で月額20万円・B社で月額20万円、両社合計で月額40万円の報酬を受けるようになりました。

そこで、法律の定め通り、B社が健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を提出し、本人は被保険者所属選択・二以上事業所勤務届を提出して、A社を選択事業所・B社を非選択事業所としました。

 

この場合、本人が4月に受けた実際の報酬月額の合計額は40万円です。

しかし、A社で報酬月額が大きく(標準報酬月額等級で2等級以上)下がり、A社が月額変更届を提出する結果として、A社からの報酬のみを報酬月額と仮定した場合の標準報酬月額が20万円に下がるのは、4月・5月・6月とA社から20万円支給された後、7月からです。

したがって、A社での報酬月額20万円とB社での報酬月額20万円の合算額40万円をこの人の報酬月額として標準報酬月額が決まり、標準報酬月額が3月と同額の41万円となるのは、7月からです。

4月・5月・6月の標準報酬月額は41万円ではありません。

 

その月に受けた報酬月額の合算額に基づいてその月の標準報酬月額が決まるわけではない

結論を先にお伝えすると、4月・5月・6月の標準報酬月額は、下記の1と2の合算額(60万円)を報酬月額として標準報酬月額等級表にあてはめた「59万円」となります。

 

1.3月の標準報酬月額が41万円と決まる前提となったA社からの報酬月額40万円(A社から12月・1月・2月の各月に受けた報酬に基づき、3月に随時改定の規定により決定された額)

2.4月から新たに受けることとなった報酬月額20万円

 

(根拠)「報酬月額の算定の特例」について定めた厚生年金保険法第24条第2項に、次の通り規定されています(健康保険法第44条第3項にも同様の規定があります)

「同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者について報酬月額を算定する場合においては、各事業所について、第二十一条第一項(注:定時決定)、第二十二条第一項(注:資格取得時決定)、第二十三条第一項(注:随時改定)、第二十三条の二第一項(育児休業等を終了した際の改定)若しくは前条第一項(注:産前産後休業を終了した際の改定)又は前項(注:保険者算定)の規定によつて算定した額の合算額をその者の報酬月額とする。」

難解な条文ですが、今回取り上げた事例では、4月・5月・6月に関しては、上記1(A社において3月に随時改定の規定によって算定した額40万円)と上記2(B社において4月に資格取得時決定の規定によって算定した額20万円)とを合算した額(60万円)を報酬月額として、各月の標準報酬月額が59万円と決まる、ということになります。 

単純に各月に各社から受けた報酬の合算額を報酬月額として標準報酬月額が決まる、と誤解していると、4月・5月・6月については誤解が生じます。

想定しているよりも標準報酬月額が高くなると、社会保険料が思っているよりも高くなりますし、働きながら受給できる年金額が思っているよりも少なくなってしまいますので、注意が必要です。

(参考)厚生年金保険法第24条の42項で「第24条の規定は、標準賞与額の算定について準用する」と定められています(健康保険法第45条第2項にも同様の定めがあります)。

 

なお、この人についてA社およびB社が納める各月分の社会保険料額は、この人分の保険料額を各社から受ける報酬月額の割合で按分した額となるのですが、按分割合を定めるための報酬月額も、やはり、実際にその月に各社から受けた報酬月額ではなく、上記条文の規定に基づき算定された額です。

したがって、按分割合が各社からその月に実際に受けている報酬月額の割合である2020に落ち着くのは、7月からです。

4月・5月・6月の社会保険料の按分割合は、4020となります(上記1の月額40万円:上記2の月額20万円)。

 

(ポイント)

●複数の法人から報酬を受ける人の標準報酬月額は、各社における報酬変更・資格取得等に際して、法律の規定を適用することによって決まる。
●その月に受けた実際の報酬月額の合算額に基づいて標準報酬月額が決まるわけではない

 

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