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社長の老齢厚生年金受給と配偶者加給年金額や遺族厚生年金に関する注意点

生計維持要件における配偶者の収入・所得基準を満たしていることが必要

(2023年11月22日)

1.高額報酬の社長・役員が働きながら特別支給の老齢厚生年金や老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給するためには、事前に本人の役員報酬設定を変更しておく必要があります。



2.また、高額報酬の社長・役員が老齢厚生年金を繰り下げて65歳時の老齢厚生年金を「繰下げ月数(最高120月)×0.7%」増額させたい場合も、事前に本人の役員報酬設定を変更しておく必要があります。



3.さらに、一定の要件を満たす高額報酬の社長・役員が働きながら老齢厚生年金だけでなく配偶者加給年金額も受けたい場合は、配偶者の年収または所得を事前に一定額以内に抑えておく必要もあります。




社長の年金相談では、上記1上記2だけでなく、上記3に関する相談を受けることもあります。



上記1・2に関する注意事項はこれまでに何度も繰り返し情報提供してきましたので、今日は、上記3の配偶者加給年金額の基礎知識についてお伝えします。




【配偶者加給年金額とは】
65歳からもらえる老齢厚生年金に加算されることがある年金。
扶養手当のような意味合いで加算されるもの。年額40万円弱。
(参考:日本年金機構ホームページ)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html



【配偶者加給年金額が加算される要件】
以下のすべての要件を満たす場合に加算されます。

(1) 老齢厚生年金を受ける人が65歳に到達する月の前月までに、厚生年金保険加入期間が240月以上あること

(2)65歳到達時に、65歳未満の「生計を維持」している配偶者がいること

(3) 配偶者に厚生年金保険加入期間240月以上の特別支給の老齢厚生年金(や繰上げ受給の老齢厚生年金)、障害年金の受給権がないこと

(4) 本人の老齢厚生年金(報酬比例部分)が全額支給停止となっていないこと


なお、老齢厚生年金を受ける人が65歳に到達する月の前月までに、厚生年金保険加入期間240月未満の場合は、(1) の要件は、次の通り読み替えます。


(1)´老齢厚生年金を受ける人が65歳に到達した後に、65歳以上70歳未満の「在職定時改定」、70歳時改定、または退職時改定により、老齢厚生年金の計算の基礎となる厚生年金保険加入期間が240月以上となったこと


この場合、上記(2)の要件は、次の通り読み替えます。

(2)´65歳到達後に老齢厚生年金の計算の基礎となる厚生年金保険加入期間が240月となったときに、65歳未満の「生計を維持」している配偶者がいること


中小オーナー企業の場合、社長の配偶者(65歳未満)も取締役等として厚生年金保険に長年加入しているケースも多いため、社長の配偶者が厚生年金保険加入期間20年以上の特別支給の老齢厚生年金を受給できる事例もよくみられます。


この場合、上記(3)の要件に該当しないため、他の要件を満たしていたとしても、社長の老齢厚生年金に配偶者加給年金額は加算されません。



また、社長の配偶者の厚生年金保険加入期間が20年未満であっても、社長の配偶者が取締役等として高額報酬を受けているため、上記(2) や(2)´の「生計を維持」という要件を満たせず、社長の老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されない、という事例も結構あります。



ここでの「生計を維持」とは、具体的に、以下の条件を満たしていることを指します。


・配偶者と「生計を同じく」し、
かつ、
・原則として、一時的なものを除き、配偶者の前年の年収(前年の年収が確定していない場合は前前年の年収)が850万円未満、または、前年の所得(前年の所得が確定していない場合は前前年の所得)が655.5万円未満であること(例外は極めて複雑ですので、今回は省略します)



したがって、例えば、社長が65歳到達月の前月までに厚生年金保険加入期間240月以上となることが予想される場合で、このままでは上記(2)の要件のうちの年収・所得基準だけを満たせないため配偶者加給年金額が加算されない場合は、配偶者加給年金額も受けたいのであれば、事前に配偶者の年収を上記基準内に引き下げておく必要があります。

 

配偶者加給年金額を受けるためには、配偶者の年収または所得を基準額以内に抑えておく必要がある

高額報酬を受けている社長が65歳から働きながら老齢厚生年金を受けたい場合や、
老齢厚生年金を繰下げて年金額を増やしたい場合は、
年金と給与の調整(在職老齢年金制度)で年金が支給停止とならないように、自身の役員報酬設定を事前に変更しておく必要があります。


高額報酬を受けており一定の要件を満たす社長が、配偶者加給年金額も受けたいのであれば、
自身の役員報酬設定を変更するだけでなく、
配偶者の年収または所得を基準額以内に抑えておく必要もある、というお話でした。



なかなか理解が難しいところでもありますし、一般の従業員や定年退職者の老齢厚生年金受給に
際して生計維持要件がクリアできないほどの高額収入・所得の配偶者がいるというケースは少ない
です。



したがって、日本年金機構発行の老齢年金ガイドブック
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf
においても加給年金額における「生計を維持」についての具体的な条件(前述の配偶者の年収・所得基準)に関する説明はありません。



特に、社長と配偶者の年齢差が大きい場合は配偶者加給年金額総額が大きくなりますので、正しい知識を早めに知っておきたいところです。

 

生計維持要件と社長夫婦の遺族厚生年金

(2023年12月8日)
配偶者加給年金額が加算されるための要件である「生計維持要件」のうちの年収・所得基準は、配偶者加給年金額が加算されるための要件としてだけでなく、遺族厚生年金が支給されるための要件としても使用されます。


そこで、以下に、遺族厚生年金と生計維持要件について基礎知識をお伝えします。



厚生年金保険に加入している社長が亡くなったときなどに配偶者に遺族厚生年金が支給される
ためには、社長が亡くなったときに配偶者が社長に生計維持されていたことが必要です。


つまり、社長の死亡日において、社長と配偶者が生計を同じくしており、かつ、配偶者の収入または
所得が一定額未満であることが必要です。


繰り返しになりますが、生計維持要件における収入・所得の具体的な基準は次の通りです。

・原則として、一時的なものを除き、前年の収入(前年の収入が確定していない場合は前前年の収入)が850万円未満、または前年の所得(前年の所得が確定していない場合は前前年の所得)が655.5万円未満であること



この基準は一般の年金受給者の場合はそれほど重要ではありませんが、中小オーナー企業社長の場合は、配偶者も取締役等として年間850万円以上の役員給与を受けている事例も珍しくありませんから、注意が必要です。


(例えば、夫婦ともに厚生年金保険に加入して年収850万円以上の場合は、夫婦どちらが亡く
なったとしても、配偶者は遺族厚生年金をもらえないこととなります)



この収入・所得基準については、例えば配偶者がどこかの会社で従業員としてのみ働いている場合
であれば、社長死亡日における配偶者の収入・所得が基準額以上であっても、近い将来(おおむね5年
以内)において定年等の事情により収入または所得が基準額未満に下がることが死亡日において証拠書類(定年が明記された就業規則等)により客観的に確認できる場合は、収入・所得基準を満たしていると認定する、などの取り扱いも通達で認められてはいます。



また、配偶者が亡くなった社長の会社で取締役として働いていた場合であっても、社長の死亡により会社の経営状況が悪化することが見込まれるため、取締役会において役員報酬の引き下げが決定された場合には、減額について故意や偽りがない限り、将来の収入が減少することが認められますが、この場合でもあくまでも、収入または所得が基準額未満となることが死亡時において客観的に予測可能であったことが必要です。


 

中小オーナー企業社長の死亡に際しては、(社長の死亡時における経営状況の悪化見込によってではなく)自由な意思で(遺族年金をもらいたいがために)残された配偶者が遺族年金の請求を遅らせて、その間に役員給与を減額しようとするケースが想定されるため、慎重な認定が行われることが予想されます。

 

ですから、社長の配偶者も取締役等として基準額を超える収入・所得を得ておられる場合、社長に万一のことがあった場合に配偶者が遺族厚生を受給したいのであれば、社長死亡時において前年(前前年)の配偶者の収入または所得が基準額未満であることが必要だと考えたうえで、(可能であれば)配偶者の収入または所得を事前に基準額内に下げておく方が無難でしょう。

 

(参考)

認定基準は、上記のとおり、「近い将来(おおむね5年以内)収入が年額 850万円未満又は所得が655.5万円未満となると認められること」とし、 その事情として「定年退職等」を掲げ、「退職等」とは掲げていない。これは、保険事故発生時において、基準額以上の収入又は所得を得ている者が、保険事故発生後においても、引き続き上記収入又は所得を得ることのできる地位又は財産を有するにもかかわらず、外来の要因によることなく、その地位から離れ、又は財産を手放すことにより、上記収入又は所得を得ることができないこととなっても、 そのような場合は、保険事故発生後に、 上記収入又は所得の喪失を自ら招いたものとして、労働者の死亡について保険給付を行うことによりその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという保険給付の保障の埒外に置く趣旨であると解される。
(平成28年(厚)第572号 平成29929日裁決における社会保険審査会の判断より抜粋)

遺族厚生年金や配偶者加給年金額の見直し論議について

(2024年1月5日)
以下に、令和7年年金法改正に向けての社会保障審議会年金部会における議論から、次の2点について解説します。


1.遺族厚生年金の見直しも議論されているが、現状では改正内容は何も決まっていない

2.配偶者加給年金額の見直しも議論されているが、現状では改正内容は何も決まっていない



関心がある方は、下記をお読み下さい。


1.遺族厚生年金における収入・所得基準撤廃の意見も


生計維持要件における収入・所得基準については、令和5年7月28日に開催された第6回社会保障
審議会年金部会においても、遺族厚生年金の見直しとともに議論が行われました。


これまでに社会保障審議会年金部会で出された遺族厚生年金見直しに関する主な意見のポイントをまとめると、次の通りです。


・遺族厚生年金の受給要件や給付内容には男女で異なる制度が残っているので、見直しが必要

*(注)例えば、夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満の妻が残されたときに
加算される「中高齢寡婦加算」は、要件を満たす妻しかもらえません。

また、妻が遺族厚生年金を受ける場合は、妻は夫の死亡時に何歳であってももらえますが、
夫が遺族厚生年金をもらう場合は、夫は55歳以上である必要があります(夫が55歳以上
であっても、実際に夫が遺族厚生年金をもらえるのは、原則として60歳からです)。



・収入・所得基準を権利発生要件として一律に区切るのではなく、一定水準以上の収入から
段階的に年金額を調整する仕組みとすることを検討すべき


・高齢期を支える給付は老齢厚生年金である。
遺族厚生年金は配偶者の死亡直後の生活の激変に際しての生活保障と整理し、終身年金ではなく原則として有期年金とするのがよいのではないか(長期要件に該当する65歳以上の老齢厚生年金受給権者の死亡の場合は現状のまま終身年金とする、生年月日等で経過措置を設けるなどの議論は必要)


*(注)夫が亡くなって、子のない30歳未満の妻が残された場合に妻が受給できる遺族厚生年金は、既に平成16年改正により平成19年度から、5年間の有期年金に改正改正されています。



・高所得者であっても、これまで生活をともにしてきた配偶者が亡くなった場合、生活の激変が考えられるので、遺族年金の有期化とセットにして年収850万円等の基準を撤廃してもよいのではないか



しかし、現状では議論が行われたというだけで、いずれの論点についても2024年1月現在、改正内容が決定しているものはありません。


2.配偶者加給年金額を廃止すべきかどうかの議論



遺族厚生年金が支給されるかどうかの認定の際に用いられる生計維持要件(生計同一+収入・所得が
基準額未満)は、加給年金額が加算されるかどうかの認定にも用いられます。


社会保障審議会年金部会ではこれまでに、老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額は廃止する方がよいのではないかとの意見も出されています。


理由は次の通りです。

・夫婦の年齢差によって支給の有無や支給期間の長短が決まるため不公平

・共働き世帯が増え、今後、厚生年金保険に夫婦とも加入する世帯が増えるため、現在の社会に合っていない

・配偶者加給年金額の存在が老齢厚生年金の繰下げをためらわせる要因となっているのではないか

・制度を見直すとしても、既に加給年金額を想定して生活している人もいるため、慎重に議論すべき


なお、老齢厚生年金に加算される加給年金額には配偶者加給年金額だけでなく、原則18歳年度末までの子がいる場合の加給年金額もあります。


また、障害等級1級・2級の障害厚生年金に加算される配偶者加給年金額もあります。


これまでのところ、制度廃止の議論がされているのは、老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額についてです。


この点についても、まだ議論が始まった段階ですので、改正が行われることとなるかどうかは現時点ではわかりません。

 

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