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(2024年2月5日)
令和7年(2025年)年金法改正に向けて、令和5年(2023年)12月26日の第11回社会保障審議会年金部会で議論されていた(厚生年金保険の)標準報酬月額の上限改定について、以下にポイントをお伝えします。
(注)
現在行われているのは、令和7年に予定されている年金法改正に向けての議論です。
社長の年金受給にも大きな影響が生じかねない大事な論点ですので今の段階から詳しく解説いたしますが、まだ最終的には何も決定されていません(改正されるかどうかもまだ決まっていません。改正されることが今後決まるとしても、令和7年に改正年金法が成立し、その中で定められる施行日を迎えるまでは、現在の法令に定められているしくみが適用され続けます)。
長くなりますので、まだ関心のない方は、下記解説を無視してください。
●前提知識
・厚生年金保険の保険料や老齢厚生年金の在職支給停止額に影響する「標準報酬月額」の上限は現在65万円です
(報酬月額635,000円以上の人が該当します)。
(比較)健康保険の「標準報酬月額」の上限は139万円です(報酬月額1,355,000円以上の人が該当します)。
(参考)保険料額表
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r5/ippan/r50213tokyo.pdf
・厚生年金保険の年金は、平成15年3月までの平均標準報酬月額や平成15年4月以降の平均標準報酬額に応じて年金額が決まる報酬比例部分の年金が中心です。
・したがって、
(1)在職中の報酬の多かった人と少なかった人との間での年金給付額の差があまり大きくならないように、
また、
(2)高額報酬の人や事業主の保険料負担があまり多くならないように、
厚生年金保険の標準報酬月額の上限は、健康保険の標準報酬月額の上限よりもかなり低い金額(現在
は65万円)となっています。
・現在の厚生年金保険の標準報酬月額の上限改定ルールは次のようなしくみです(平成16年改正で
導入されたルールです)。
*各年度末において、「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額」が「標準報酬月額の上限」を上回り、「その状態が継続すると認められる場合」には、その年の9月1日から、健康保険法の標準報酬月額の等級区分を参考にして、政令で、上限の上にさらに等級を追加することができる。
(厚生年金保険法第20条第2項参照)
・平成16年10月時点の標準報酬月額の上限は62万円でしたが、上記のルールに基づいて令和2年9月から、政令改正により上限が65万円に改定されました。
(このときに、報酬月額が増えていないのに厚生年金保険料が高くなったことを覚えておられる社長様も多いと思います)
このときは、平成28年3月において「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額が標準報酬月額の上限を上回り、」かつ、平成29年3月・平成30年3月・平成31年3月・令和2年3月においても
「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額が標準報酬月額の上限を上回」ったため、
「その状態が継続すると認められ、」その年の9月1日から、政令で上限等級が追加されました。
・しかし、令和3年3月には、
「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額が標準報酬月額の上限を上回」りませんでした。
・令和4年3月は、
「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額が標準報酬月額の上限を上回」りました。
したがって、前記条文の「その状態が継続すると認められ、」という状態には現状まだなっているとはいえないでしょう。
●12月26日に行われた議論について
しかし、今回厚生労働省は、社会保障審議会年金部会において、標準報酬月額の上限の見直し議論を促しました。
具体的には、「ご議論いただきたい点」として、次の3点を提示しました。
(1)負担能力に応じて負担を求める観点や、所得再分配機能を強化する観点から、現行のルールを見直して、上限の上に等級を追加することについて、どのように考えるか。
(2)新たな上限等級に該当する者とその事業主の保険料負担が増加すること、また、 歴史的には給付額の差があまり大きくならないように上限が設けられてきたことを考慮すると、どのようなルールで上限を設定することが適当と考えられるか。
(3)(上限改定を実現すると)保険料収入が増加し、積立金の運用益も増加することから、その増加分の使途についてどのように考えるか。
ここで重要なポイントは、(1)で、「現行のルールを見直して、上限の上に等級を追加することについて、どのように考えるか。」としている点です。
つまり、厚生労働省は、厚生年金保険法を改正して現在のルールとは異なる上限改定ルールを導入し、新たなルールによって標準報酬月額の上限を改定することも含めて、年金部会の委員に意見を聞いた、という点です。
もし、現在のルールのままであれば、令和5年3月・令和6年3月・令和7年3月のデータも確認して「その状態が継続すると認められ」たならば、認められた年の9月から、健康保険法の標準報酬等級月額を参考にして、政令で、厚生年金保険法の標準報酬月額の上限を68万円と改定できることとなります。
しかし、そのような現在のルールに基づいた改定のみではなく、改定ルール自体を見直して上限を改定することも含めて、意見が求められたわけです。
そして、新しい上限改定ルールを用いて上限を改定するとしたら、どのようなルールを導入すべきかについても委員に議論を促しました。
それに対し、多くの委員が様々な意見を述べ、議論が行われました。
前記(1)(2)については、次のような意見が出されていました。
・上限引上げに賛成(現行ルール通り健保のルールを参考に上限等級を追加すべき、現行のルールにとらわれずに新たな制度とすべき)
・現行ルールにおける改定要件を満たしたら上限等級を追加すべきだが、まだ要件を満たしていないのではないか
・企業年金・退職金制度への影響も踏まえる必要がある。
上限にいる人への配慮も必要ではないか
・年収ベースで保険料を課すべき
・在職老齢年金制度の見直し・廃止とセットで導入すべき
・所得が高いほど年金が減るような新しい制度の導入も考えられる
・短時間労働者への適用拡大による年金財政への効果を検証してから検討すべき
・下限等級の追加も検討すべき
また、前記(3)については、次のような意見が出されていました。
・マクロ経済スライドの調整期間延長(厚生年金保険)の縮小に使うべき
・保険料アップ分を在職老齢年金制度廃止による給付増分に充てたい
全体としては、次のように、上限引上げに慎重な意見や、議論の前提となるデータが不足しているので判断できない、との意見も出されていました。
・人手不足・物価高の中、人材確保のため各企業が賃上げを努力しているところ、企業の社会保険料が増えることを懸念する
・現在の法律条文を踏まえると、データを数年とってからどうするかを検討すべき、すぐに引き上げるべきではない
・上限を引き上げると、労使双方にどのような影響があるかが示されていない
・上限にいる人のうち中小企業の従業員がどの程度の割合いるのか、データがあれば示してほしい
・議論の前提としてもう少しデータが欲しい
・若い時は給与が少なく高齢になってから上限額を超えている人が多いなら、上限額を上げてもあまり影響はない
・上限額を超えている人の実態・年金加入履歴を示すデータがあれば出してもらいたい
・被保険者期間を通じてずっと上限という人はそれほどいないはず。上限等級に位置している人は平均してどの位の年数いるのかの データを示してもらいたい
・もう少しデータを示してもらうと判断しやすい
・上限引き上げにより絶対的な格差を拡大してしまうし、現役世代の負担を増やすというイメージを与えてしまう気がする
・報酬・賞与の配分は働き方の多様化を踏まえて各企業が考えるもののため、年金のことだけを考えて制度を検討すべきではないと思うが、公平な制度となるようにすべき
これらの意見を踏まえ、最後に議長である委員が次のように述べて、12月26日の審議会は終わりました。
・可能な限りデータを厚生労働省から示してもらった上で、また、財政検証結果も踏まえて、さらに議論をしたい
本論点については、本年夏に公開が予定されている国民年金・厚生年金保険の財政検証結果等も踏まえた今後のさらなる議論の推移に注目したいところです。
今後何か大きな進展があれば、随時お伝えしたいと思います。
厚生年金保険の「標準報酬月額」の上限を現行の65万円から75万円、79万円、83万円、または98万円に引き上げるという改正案を、厚生労働省は令和6年の社会保障審議会年金部会で提示していました。
現行制度だと、厚生年金保険に加入している人で報酬月額が63万5千円以上の人は、報酬月額がいくら高額であっても、標準報酬月額は上限額(65万円)となり、65万円に厚生年金保険料率1000分の183を掛けて、厚生年金保険料の月額は118,950円となります(会社と本人が月額59,475円ずつ折半負担)。
(参考)標準報酬月額と厚生年金保険料
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r07/r7ryougakuhyou3gatukara/
ところが、最近では報酬月額63万5千円以上の割合が高くなっているため(令和6年6月における第1号厚生年金被保険者のうちの6.5%・278万人が該当)、標準報酬月額等級の上限を引き上げた方がよいのではないか・上限改定ルールも見直した方がよいのではないかという議論・検討がされているわけです。
以上の説明からわかる通り、標準報酬月額等級の上限が引き上げられた場合に、厚生年金保険料負担が増えるのは、特に報酬月額が高い人だけです。
改正が実現すると、新たに付け加えられる標準報酬月額等級に該当するような報酬月額を受ける人(報酬月額66万5千円以上の人が見込まれています)についてだけ、厚生年金保険料が増えます(増えた分はもちろん、老齢厚生年金、障害厚生年金、障害手当金、遺族厚生年金の保険給付額に反映します)
改正が実現したとしても、報酬月額66万5千円未満の人については、厚生年金保険料負担は全く増えません。
しかし、X(SNS)等では、若年世代の保険料負担を重くして、高齢者の年金給付に充てるのは許せない、といった誤解に基づく批判が多く見られてきました。
(注)厚生年金保険に加入して働いている限り、老齢厚生年金を受給できる年齢になった後であっても、70歳未満の人は厚生年金保険料を負担しています。若年世代だけが負担しているわけではありません。また、厚生労働省が公表している資料によると、40歳未満で標準報酬月額が上限に該当する人の割合は低いです(令和4年度末時点で、20歳台の第1号厚生年金被保険者のうち上限に該当する被保険者割合は、男性0.7%・女性0.3%。30歳台は男性4.8%・女性1.3%が上限該当。40歳台は男性10.6%・女性2.3%が上限該当。50歳台は男性16%・女性2.8%が上限該当)。
批判が多いため、また、改正されると会社負担分の保険料負担が増えることととなり中小企業の経営を圧迫することを懸念する意見もあったため、厚生労働省は、改正により標準報酬月額上限をいきなり75万円等に引き上げるのではなく、健康保険の標準報酬月額等級に合わせて68万円、71万円、75万円と1年ずつ段階的に上げていく案(それぞれ、令和9年9月、令和10年9月、令和11年9月から引上げ)を与党等に提示しました。
しかし、その後も、X(SNS)等では、次のような誤解に基づく批判が散見されています。
「月額9000円って年10万8000円の増税だぞ!?こいつらマジで国民の敵だろ!/年収798万円以上の厚生年金保険料、月額9000円増額へ」
このような「年収798万円以上の厚生年金保険料、月額9000円増額へ」との批判をよく目にするのですが、
改正により標準報酬月額等級の上限として68万円以上の等級が付け加えられたとすると、年収798万円(報酬月額66万5千円×12か月)の人の厚生年金保険料月額(本人負担分)は62,220円です(標準報酬月額68万円×保険料率1000分の183×1/2)。
したがって、その人の厚生年金保険料月額(本人負担分)は、改正前に比べて2,745円しか増えません。(62,220円-59,475円)年額にしても32,940円しか増えません。
標準報酬月額上限が68万円、71万円、75万円と引き上げられた後になって、しかも、年収876万円(報酬月額73万円×12か月)以上の人についてだけ、その人の厚生年金保険料月額(本人負担分)が68,625円(標準報酬月額75万円×1000分の183×1/2)となるため、改正前に比べて厚生年金保険料月額(本人負担分)が9,150円(68,625円-59,475円)増えることとなります。
年額にして109,800円増です。
以上の通り、「年収798万円以上の厚生年金保険料、月額9000円増額へ」は誤りであり、このような表現をみて誤解している若い人が多くおられるであろうことは残念です。
多くの方のライフプラン・マネープラン上、特に悪影響が大きいと思われるデマ情報などについては、また触れたいと思います。
(注)今回触れた見直し案は、変更となる可能性があります。
なお、SNS等では「年金保険料が毎年どんどん上がっている」といった表現も多く見られます。
しかし、 平成16年改正で保険料水準固定方式が導入され、厚生年金保険料率は法定されたスケジュールに基づき段階的に引き上げられてきた後、平成29年10月以降厚生年金保険料率は上がっていません(厚生年金保険法第81条第4項)。法律改正がない限り、今後も上がりません。
平成16年改正により国民年金保険料額も平成29年度まで法定されたスケジュールに基づき段階的に引き上げられ、また、令和元年度からは第1号被保険者の産前産後期間中の保険料免除制度導入に伴い「17,000円×保険料改定率」となりましたが、それ以降は、保険料改定率(前年度保険料改定率×名目賃金変動率)の改定分を除き、引上げはありません(国民年金法第87条第3項)。法律改正がない限り、今後も保険料改定率の改定分を除き上がりません。
(ポイント)
●厚生年金保険料の引上げではなく、標準報酬月額上限の引上げが検討されている
●改正法が成立したしたとしても、改正後の標準報酬月額上限に該当しない人の厚生年金保険料は上がらない
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