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65歳を過ぎてから厚生年金保険加入20年以上となったら、加給年金をもらえますか?

在職定時改定と配偶者加給年金額に関する質問が多い

(2024年3月22日)

 

令和4年4月1日施行の年金法改正が関連する相談では、在職老齢年金制度や繰下げに関するものが多いですが、年金に詳しくない社長・役員様にとっては「在職定時改定」(厚生年金保険法第43条第2項)についてもわかりにくいようで、結構相談があります。 

特に、在職定時改定と配偶者加給年金額(厚生年金保険法第44条)に関する質問が多いです。


(典型事例)
A社長
昭和331210日生まれ(65歳)男性
数年前に役員給与設定を変更していたため、65歳到達月の翌月分から、老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金も全額受給中
役員給与年額1,200万円
65歳到達月の前月までの厚生年金保険被保険者期間の月数は合計238

A社長の配偶者(B取締役)
昭和381210日生まれ(60歳)女性
役員給与年額720万円・その他収入なし
令和6年3月までの厚生年金保険被保険者期間の月数は合計180
障害基礎年金・障害厚生年金等を受けていない。


上記の事例でA社長が65歳になったとき、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給する権利が生じたため、繰下げしないで年金を請求したとします。


それにより、65歳到達月の翌月分からA社長は老齢基礎年金・老齢厚生年金を全額受給できました。
老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数(238月)は、65歳到達月の前月まで、つまり、令和511月までの月数です。


A社長には65歳到達時点で、65歳未満の「生計を維持」している配偶者(B取締役)がいましたが、65歳到達月の前月までのA社長の厚生年金保険被保険者期間の月数が238月と240月(20年)に達していなかったため、A社長の受給する老齢厚生年金には配偶者加給年金額の加算は行われませんでした。

(加給年金額は、老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数が240月以上の人が受給する老齢厚生年金に、一定の要件を満たせば加算されるものです)

令和512月以降もA社長は厚生年金保険に加入し続けましたので、令和61月までで厚生年金保険被保険者期間の月数が240月に達しました。

この240月に達した時点でもA社長はB取締役の生計を維持していましたが、この時点でもA社長の老齢厚生年金への配偶者加給年金額の加算は始まりません。

A社長の厚生年金保険被保険者期間の月数は240月以上となりましたが、A社長の老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数は、この時点ではまだ238月のままだからです。

 

65歳以上70歳未満の厚生年金保険被保険者を対象に在職定時改定が行われ、そのタイミングで加給年金額が加算されることとなるケースもある

A社長がその後も厚生年金保険に加入し続け、令和691日になったら、A社長の老齢厚生年金について「在職定時改定」が行われます。


これは、毎年191日を基準日として、65歳以上70歳未満の厚生年金保険被保険者の老齢厚生年金の額を増額改定してくれる、という制度です。

その年の8月までの厚生年金保険被保険者期間を新たに老齢厚生年金額の計算の基礎に算入して、その年の10月分から老齢厚生年金額をを改定してくれます。

公的年金は、年6回偶数月に前々月分および前月分の2か月分が後払いで支給されますので、在職定時改定により増額された年金(10月分・11月分)がはじめて支給されるのは12月となります。

A社長の場合は、令和691日を基準日とした在職定時改定により新たに老齢厚生年金額計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間に算入してくれるのは、次の期間です。

・令和512月(65歳到達月)~令和68月(65歳到達後最初に迎える在職定時改定基準日(令和691日)の前月)までの9か月。

令和511月までの238月に新たに上記の9月をプラスして、合計247月として老齢厚生年金額を計算し直してくれます。

そして、この在職定時改定の基準日(令和691日)において、A社長がB取締役を生計維持していれば、令和610月分(12月支給分)からA社長の老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されます(最長でB取締役が65歳となる月分まで加算されます)。

なお、配偶者加給年金額における「生計を維持」とは日常生活で使われているような意味とは大きく異なります。
配偶者加給年金額における「生計を維持」とは、次の二つの両方を満たしているということです。
(1) 生計を同じくしていること
(2) 原則として、一時的なものを除き、配偶者の前年の年収が850万円未満または前年の
所得が655.5万円未満


ですから、B取締役のように、配偶者が取締役等として一定額以上の給与を受け続けているようなケースであっても、配偶者加給年金額における生計維持要件を満たす事例はたくさんあります。

配偶者が10歳以上年下で、配偶者加給年金額の総受給見込額が多くなる事例も結構あります。

なお、65歳到達時や在職定時改定時以外に、老齢厚生年金額計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数が240月以上となり年金額が増額改定されて、加給年金額の加算が開始される可能性のある契機としては、次の2通りがあります(厚生年金保険法第43条第3項)。
・退職して厚生年金保険に再加入しないまま1月経過した(退職月の翌月分から加算)
70歳に達した(70歳到達月の翌月分から加算)

(ポイント)

●老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数が、65歳到達後の在職定時改定によりはじめて240月以上となったときは、その時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者がいれば、配偶者加給年金額の加算が始まる
 

●厚生年金保険被保険者期間の月数が240月以上であっても、老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数が240月未満の間は、まだ加給年金額の加算はされない

 

社長の奥さんが厚生年金加入20年以上となったら、加給年金額はもらえなくなるのでしょうか?

(2024年3月28日)

65歳以上で老齢厚生年金を受けている人が厚生年金保険に加入し続け、65歳到達後の「在職定時改定」によりはじめて「老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」が240月以上となった場合は、その時点で生計を維持している65歳未満の配偶者がいれば、配偶者加給年金額の加算が始まる、ということについて上記に解説しました。

  

単に「厚生年金保険被保険者期間」が240月以上となったのではだめで、「老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」が240月以上となったことが、加算が始まる要件だということでした。

 

 

これとは異なる事例で、同じくらい相談が多いものが、次のようなケースです。

 

 

(典型事例)

・A社長

昭和331210日生まれ(65歳)男性

数年前に役員給与設定を変更していたため、65歳到達月の翌月分から、老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金も全額受給中

役員給与年額1,200万円

65歳到達月の前月までの厚生年金保険被保険者期間の月数は合計238

 

 

A社長の配偶者(B取締役)女性

昭和381210日生まれ(60歳)

役員給与年額720万円・その他収入なし

令和68月までの厚生年金保険被保険者期間の月数は合計200

障害基礎年金・障害厚生年金等を受けていない。

 

 

上記の事例でA社長が65歳になったとき、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給する権利が生じたため、繰下げしないで年金を請求したとします。 

 

A社長はその後も厚生年金保険に加入し続けました。

 

 

そして、令和6年の在職定時改定の基準日(令和691日)においても、A社長がB取締役を生計維持していれば、前回確認した通り、令和610月分(12月支給分)からA社長の老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されます。

 

 

配偶者加給年金額は「生計を維持している65歳未満の配偶者」がいるときに加算されるものですので、一般に、最長で配偶者65歳となる月分まで老齢厚生年金に加算されます。

 

 

ここで、B取締役は昭和381210日生まれで、特別支給の老齢厚生年金を受給する資格(公的年金加入10年以上で、うち、厚生年金保険被保険者期間1年以上)があります。

 

 

したがって、B取締役は63歳になると(令和8129日(誕生日の前日)を迎えると)、自身の特別支給の老齢厚生年金を受給できる権利が生じます。

 

 

令和68月までの厚生年金保険被保険者期間が200月なら、B取締役が特別支給の老齢厚生年金を受ける権利が生じる月(63歳到達月、つまり、令和812月)時点での、特別支給の老齢厚生年金額計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数(令和811月までの月数)は、227月(200月+27月)となります。

 

 

B取締役は63歳到達月に特別支給の老齢厚生年金を受ける権利が生じますが、その「年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」は240未満ですので、(他の要件も引き続き満たしているならば)A社長の老齢厚生年金には引き続き配偶者加給年金額が加算されます。

 

 

(注)65歳未満の配偶者が、特別支給の老齢厚生年金(年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間が240月以上のもの)または繰上げ受給の老齢厚生年金(年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間が240月以上のもの)を受給できるようになったら、配偶者加給年金額は加算されなくなります。

 

 

そして、B取締役が63歳以降も厚生年金保険に加入し続けると、64歳到達月(令和912月)までで、厚生年金保険被保険者期間の月数が240月以上となります。

 

 

このようなタイミングで、

 

「配偶者が65歳になる前であっても、配偶者が厚生年金20年以上加入したら、配偶者加給年金額は付かなくなるのでしょうか?」

 

「それなら、20年になる前に配偶者は退職した方がよいですよね」

 

といった相談を受けることがあります。

 

 

しかし、このような場合も、配偶者加給年金額の加算がされなくなるには、配偶者の特別支給の老齢厚生年金(または繰上げ受給の老齢厚生年金)の「年金額計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」が240月以上となったことが要件として必要です。

 

 

 

B取締役は、65歳前に「厚生年金保険の被保険者期間」の月数は240月以上となりますが、 

その時点においても、B取締役の特別支給の老齢厚生年金の「年金額計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」の月数は、

特別支給の老齢厚生年金を受ける権利が生じた月(63歳到達月、つまり、令和812月)の前月(令和811月まで)の227のままです。

 

 

 

なぜなら、65歳までの特別支給の老齢厚生年金の額は、受給権が生じた後も65歳まで厚生年金保険に加入し続けるのであれば、

65歳到達月以降も厚生年金保険に加入したことによって増えた厚生年金保険被保険者期間の月数は、65歳からの老齢厚生年金額には反映しますが、65歳までの特別支給の老齢厚生年金額には一切反映しないからです。

 

 

 

A社長について毎年91日を基準日として行われる「在職定時改定」は、65歳以上70歳未満の厚生年金保険被保険者の受けている老齢厚生年金を毎年増額改定してくれるというしくみです。

 

 

65歳未満のB取締役には「在職定時改定」は適用されませんから、B取締役が65歳まで厚生年金保険に加入し続けても、特別支給の老齢厚生年金の「年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」は受給権発生月の前月までの227月のままです。


 

(比較)B取締役が「厚生年金保険被保険者期間240以上」となった後に退職して厚生年金保険に再加入しないまま1月経過したことにより、「退職時改定」が行われ、B取締役の特別支給の老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間の月数が240月以上となったときは、その時点で配偶者加給年金額は加算されなくなります。 

社長の老齢厚生年金に65歳から配偶者加給年金額が加算されていたケースでは、どうなるでしょうか?

上記では、65歳到達後の在職定時改定によってはじめてA社長の老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されることとなり、その後B取締役が特別支給の老齢厚生年金(年金額計算の基礎となる被保険者期間240月未満のもの)を受給できる年齢となり、その後もB取締役が厚生年金保険に加入し続ける事例で説明しました。

 

もしA社長の65歳到達月の前月までの厚生年金保険被保険者期間が240月以上であったため、65歳時からA社長の老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されることとなり、その後B取締役が特別支給の老齢厚生年金(年金額計算の基礎となる被保険者期間240月未満のもの)を受給できる年齢となり、その後もB取締役が厚生年金保険に加入し続ける事例であっても、結論は同じです。

B取締役の特別支給の老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間が240月以上となったら、配偶者加給年金額が加算されなくなる)

 

厚生年金保険法条文における正確な表現を省略することで、誤解が生じてしまうケースも

加給年金額における「年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数」という表現は、厚生年金保険法第44条に定められている通りの言い回しなのですが、わかりにくいですよね。

 

 

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(参考)厚生年金保険法第44条第6

6 第四十四条第一項の規定によりその額(奥野注:配偶者加給年金額のことです)が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する。 

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ですから、一般向けの年金解説書やインターネット上の解説記事などでは単に「厚生年金被保険者期間」や「厚生年金加入期間」とだけ記載されているケースも多いです。

 

 

そのような省略された表現を見た方が、加給年金額について誤解をされることがあったとしても、やむを得ないと感じます。

 

 

いつもお伝えしております通り、年金・社会保険に関するよくある質問・疑問点のほとんどについて、答えは、法令条文に書いてあります。

 

 

ただ、年金・社会保険の法令条文は、言い回しが独特で、専門家でない一般の方にはわかりにくい表現も多いです。

 

しかし、例えば、「年金額の計算の基礎となる厚生年金保険被保険者期間」といった表現を「厚生年金被保険者期間」などの短い・わかりやすそうな表現に変えて説明することによって、よくある誤解を生んでしまうといったケースも年金・社会保険では考えられるため、悩ましいところです。

 

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