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(2024年5月14日)
「ねんきん定期便」に65歳からの老齢年金を70歳や75歳まで繰り下げた場合の増額イメージ図が記載されるようになってから、繰り下げに関する相談が増えています。
これまでにもお伝えしてきました通り、繰り下げは非常に難解な制度であり、誤解されている方が
多いです。
そこで、今回は、「ねんきん定期便」の記載や年金事務所でもらえる繰下げ試算結果のモデル事例を用いて、よくある誤解への注意喚起情報をお伝えします。
(モデル事例)
・A社長。昭和34年6月2日生まれ。令和6年6月1日(誕生日の前日)に65歳到達。
・現在の報酬月額は65万円(標準報酬月額65万円)・賞与なし
A社長は64歳から(令和5年7月分から)特別支給の老齢厚生年金をもらえたのですが、報酬が高いので年金はもらえないため請求しても意味がないと思い込んでおり、請求手続きをせずに放置していました。
その後、65歳到達の3か月前(今年の3月)に年金事務所から再度年金請求書が送られてきました。
そして、4月中旬にA社長は、「ねんきんネット」より「ねんきん定期便」もダウンロードして年金見込額を確認してみました。
このようなタイミングで、繰下げについてわからないことが出てきて相談をいただくことが多いです。
A社長が令和6年4月中旬にダウンロードした「ねんきん定期便」には、次のような注意書きがありました。
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・この定期便は、下記の時点で作成し、下記時点の前々月までの記録をお知らせしています。納付記録がデータに反映されるまでには日数がかかることがあります。
国民年金および一般厚生年金期間令和5年4月15日
*年金見込額は今後の加入状況や経済動向などによって変わります。あくまで目安としてください。
*一般厚生年金期間の報酬比例部分には、厚生年金基金の代行部分を含んでいます。
・お客様へのお知らせ
60歳以上65歳未満の方の「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」は、この「ねんきん定期便作成日時点の年金加入実績に基づき計算しています。
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そして、一般厚生年金期間=厚生年金保険計=460月(令和5年2月までの月数」に基づいた年金見込額が記載されています。
さらに、その年金見込額を用いて、「老齢年金の見込額(65歳時点)」、「42%増 老齢年金の見込額(70歳時点)」、「最大84%増 老齢年金の見込額(75歳時点)」の増額イメージ図が棒グラフで記載されています。
この、直近の「ねんきん定期便」の増額イメージが印象に残るようで、多くの社長様が、このイメージ図を前提に繰下げに関する相談をされます。
しかし、A社長の事例では、令和5年3月以降も厚生年金保険に加入し続けると、令和6年5月(65歳到達月の前月)までに厚生年金保険加入期間が15月増え、475月となります。
したがって、65歳時の老齢厚生年金(報酬比例部分)は手元の「ねんきん定期便」記載額よりも多くなります。
また、A社長は、65歳時の老齢厚生年金(経過的加算部分)も手元の「ねんきん定期便」記載額よりも多くなります。
繰下げという制度は、「65歳時の老齢基礎年金」や「65歳時の老齢厚生年金」をもらい始めるのを66歳以降に遅らせると、年金額が「繰下げ月数(最高120月)×0.7%」増える、という制度です。
ところが、「65歳時の老齢基礎年金」や「65歳時の老齢厚生年金」の額を間違って把握していると、それをベースに計算される繰下げ試算の結果も間違ってしまうこととなります。
A社長がいま、年金事務所で試算結果をもらってきたら、65歳到達時点での年金額(令和6年7月分からの年金額)が次の額であったとします。
・老齢厚生年金(報酬比例部分)120万円(基金代行額10万円を含む)
・老齢厚生年金(経過的加算部分)10万円
・老齢基礎年金70万円
(年金額はすべて例示です。わかりやすいように丸い数字としています。実際の年金額とは異なります)
この場合、老齢基礎年金を70歳まで繰り下げるとしたら、70歳から受給できる老齢基礎年金額は、994,000円(65歳時の老齢基礎年金70万円×1.42)となる見込です。
(年金事務所の試算結果では、「繰上下額 +294,000円」と表示されます)
また、この場合、老齢厚生年金を繰り下げるとしたら、国から支給される65歳時の老齢厚生年金が、
70歳からはいくらに増額されるかというと、複雑ですが、次の計算式で計算されます。
・65歳時の老齢厚生年金(経過的加算部分)10万円×1.42
+(65歳時の老齢厚生年金(報酬比例部分)120-基金代行額10万円)×「平均支給率」×1.42
(年金事務所の試算結果では、「繰上下額」欄に金額がプラス表示されます)
(注)「ねんきん定期便」の老齢厚生年金(報酬比例部分)は、(令和3年度から)基金代行額も含んだ額が記載されるようになりましたが、年金事務所でもらえる試算結果は、基金代行額は除いた試算結果が表示されます(基金代行額は、報酬比例部分とは別枠で参考表示されています)。
上記の計算式の通り、老齢厚生年金(報酬比例部分)の繰下げ増額計算については、「平均支給率」を加味する必要があります。
「平均支給率」とは、65歳到達月の翌月から繰下げ申出月までの各月における「支給率」を平均したものです。
各月における「支給率」とは、65歳時の老齢厚生年金(報酬比例部分)がいくら支給されるような報酬設定となっていたかを示す率です。(全額支給停止となるような報酬設定であった月なら0%、
全額支給されるような報酬設定であったなら100%)
例えば、A社長の会社が6月決算で、8月開催の定時株主総会・取締役会にて9月支給分から1年間の役員報酬設定を決議しているとします。
現在は老齢厚生年金(報酬比例部分)の全額が支給停止ですが、令和6年8月開催の定時株主総会・取締役会決議により、令和6年9月支給分から、老齢厚生年金(報酬比例部分)が全額支給されるような報酬設定に変更したとします。
9月・10月・11月と変更後の報酬を支給した後、会社が「報酬月額変更届」を提出することにより、令和6年12月からA社長の「総報酬月額相当額」が下がり、令和6年12月分(令和7年2月支給分)から、老齢厚生年金(報酬比例部分)を全額受給できるようになります。
つまり、「65歳到達月の翌月から繰下げ申出月までの月数」(この事例では60月)のうち、最初の5か月(令和6年7月から11月まで)は「支給率」0%、残りの55か月は「支給率」100%)です。
したがって、A社長の老齢厚生年金の繰下げ試算のうち、老齢厚生年金(報酬比例部分)がいくら増額されるかを計算する際の「平均支給率」は次の計算式で算出できます。
・平均支給率=(0%×5月+100%×55月)÷60月
このように、老齢厚生年金を繰り下げた場合に、老齢厚生年金(報酬比例部分)がいくら繰下げ増額されるかは、65歳到達月の翌月支給分以降の報酬設定をいつからどのように変更するかによって変わります。
なお、65歳以降も70歳まで厚生年金保険に加入し続けると、繰り下げ増額とは関係なく、老齢厚生年金(報酬比例部分)は別途増えます。
(この増加分も、いつからどのような報酬設定にするかによって変わります)
老齢厚生年金(経過的加算部分)も、厚生年金保険加入期間が480月となるまでを限度に、年金額が別途増えます。
これら、65歳以降も厚生年金保険に加入することによって増えた分と65歳時の老齢基礎年金・老齢厚生年金が繰下げ増額された分との合計が、70歳からの年金見込額ということになります。
65歳以上70歳未満の間も厚生年金保険に加入することによって、
・毎年10月分(12月支給分)から老齢厚生年金が増え(在職定時改定)
・70歳到達月の翌月分から年金額が増える
のですが、
繰下げは、65歳時の年金額が増額されるという制度ですから、65歳到達後の厚生年金保険加入によって増えた年金額がさらに繰下げ増額されるということはありません。
A社長は、昔勤めていた会社で5年ほど厚生年金基金にも入っていました。
・老齢厚生年金(報酬比例部分)120万円(基金代行額10万円を含む)
10年未満の短期で平成26年3月までに中途脱退した厚生年金基金加入期間分の「基金代行額」(A社長の場合10万円)については、昨年64歳(特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢)になったときに、企業年金連合会から「基本年金」の裁定請求書が送られてきましたので提出し、64歳から基本年金を受給中です。
(企業年金連合会から支給される「基本年金」は、在職老齢年金制度の対象外ですので、高額報酬のA社長も請求すれば全額もらえます)
これにより、
64歳から65歳までは、
・国からの特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止
・企業年金連合会からの基本年金は全額支給
という状態でした。
企業年金連合会から基本年金(または代行年金)を受けている人が65歳になり、国からの老齢厚生年金を繰り下げるつもりで待機する場合は、企業年金連合会に対して、年金の支給を停止してもらう
ための手続きを行う必要があります(「(繰下げ)支給停止申出書の提出)。
https://www.pfa.or.jp/user_jukyu/todokede/todokede11.html
その後、国からの老齢厚生年金について繰下げ申出をして日本年金機構から年金決定通知書が届いたら、企業年金連合会に「老齢厚生年金繰下げ届」を提出します。これにより、基本年金(または代行年金)も繰下げ増額されたものが支給されます。
国からの年金は、65歳になると、それまでの特別支給の老齢厚生年金を受ける権利がなくなり、代わって、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受ける権利が生じます。
したがって、特別支給の老齢厚生年金の請求手続きを行った人も、65歳になると、改めて老齢基礎年金・老齢厚生年金の請求手続きを行う必要があります(老齢基礎年金・老齢厚生年金の少なくとも一つを65歳から受給する場合)。
一方で、企業年金連合会からの基本年金(や代行年金)は、特別支給の老齢厚生年金を受給できるため65歳前からもらえる人であっても、請求手続きは当初の1回のみで65歳時に請求手続きはありません。
ですから、65歳前から基本年金(や代行年金)を受けていた人が、国の老齢厚生年金を繰り下げる場合は、その旨を企業年金連合会に伝えないと、引き続き企業年基金連合会からの年金が支給され続けてしまいます。
もともとは国の老齢厚生年金の一部を代行するものであった基金代行部分が企業年金連合会から基本年金(または代行年金)として支給されることとなったわけですから、国の老齢厚生年金を繰下げるつもりで待機している人については、同様に給付を止める必要があります。
繰下げ待機状態は、国からの65歳からの年金についていえば、まだ請求していない状態ですので、請求しない限り支払われることはありません。
一方で、企業年金連合会の基本年金や代行年金の請求は65歳前に既に終わっていますので、それらの年金を止めるということは、つまり、企業年金連合会からすれば、支給している年金を「支給停止」する、ということとなります。
ですから、企業年金連合会に「(繰下げ)支給停止申出書」を提出して、停止してもらう必要があります。
支給されない、という結果は両者とも同じなのですが、対応方法が異なるため、わかりにくいところです。
もし、老齢厚生年金を繰下げ待機している人が、企業年金連合会に提出すべき「(繰下げ)支給停止申出書」の提出を忘れていたとしたら、もらってはいけない基本年金(または代行年金)を受けていたということになりますから、後でまとめて返す必要があります。
(注)以上、A社長は企業年金連合会から「基本年金」を受けるものとして解説しました。
過去の厚生年金基金加入期間について、企業年金連合会から「代行年金」を受ける人もおられます(平成26年3月までに基金が解散した場合)。
この「代行年金」は、「基本年金」とは異なり、給与との調整(在職老齢年金制度)の対象です。
(下記リンク先ページの(2)参照)
https://www.pfa.or.jp/user_jukyu/daiko_nenkin/index02.html
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