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(2025年3月17日一部追記)(2025年3月13日)
令和7年年金法改正におけるもっとも重要な論点は、厚生年金保険・健康保険の適用拡大(被保険者となるべき人の範囲を広げること)です。
この点については、
・昨年社会保障審議会年金部会で議論が行われた際に比べ、中小事業主等の保険料負担増に配慮するために適用拡大のスピードを後退させるような改正案が厚生労働省より与党などに示された状況であること等が報道されてきたところです。
そのような中、年金に関するインターネット上等の情報には根拠のないデマや誤解を招くような内容が多いことはいつもお伝えしている通りです。
厚生年金保険・健康保険の適用拡大に関しても、誤解を招くようなシミュレーションを含む記事が散見されます。
例えば、
「短時間労働者として厚生年金保険に1年加入した場合、
1年間加入することによる厚生年金保険料(被保険者負担分)と1年間加入することによって将来増える老齢厚生年金の額を比較して、
納めた厚生年金保険料分を取り戻すには、65歳から年金をもらいはじめてから17年もかかる」
というようなシミュレーションですね。
具体的には例えば次のような計算例が示されていることがあります。
(計算例)
・報酬月額10万円で厚生年金保険に加入すると、
(1)1年間で納める厚生年金保険料(被保険者負担分)は107,604円
報酬月額10万円の人は標準報酬月額98,000円。
したがって、厚生年金保険料月額は、標準報酬月額98千円×厚生年金保険料率183/1000=17,934円
厚生年金保険料は労使折半負担のため、被保険者負担分は月額8,967円(17,934円÷2)
1年間加入した場合の厚生年金保険料(被保険者負担分)は107,604円(8,967円×12)
(2)65歳から受給する老齢厚生年金は年額6,446円増える
標準報酬月額98,000円で1年間厚生年金保険に加入した場合、65歳からの老齢厚生年金の増額分は、加入後12か月の平均標準報酬額98千円×5.481/1000×厚生年金保険加入期間の月数12月=6,446円
(1)(2)より、107,604円÷6,446円=16.69…→約17年
しかし、以上のシミュレーションには、20歳以上60歳未満の厚生年金保険加入が老齢厚生年金額だけでなく老齢基礎年金額にも反映することが加味されていません。
また、上記(2)の試算における「老齢厚生年金」の計算式は、老齢厚生年金のうち「報酬比例部分」のみの簡易計算式です。
老齢厚生年金には「報酬比例部分」以外に「経過的加算部分」もあります。
適用拡大により短時間労働者として新たに厚生年金保険に加入する人には60歳台の人も多いです。
そして、それらの人は、60歳未満の間の厚生年金保険加入期間が480月未満の人がほとんどです。
例えば、これまで厚生年金保険に加入したことのない60歳の人が今後厚生年金保険に1年加入すると、65歳からの老齢厚生年金(経過的加算部分)の年額は20,808円となります。
1,734円(令和7年度の定額単価)×12か月=20,808円
したがって、前記(2)は、「65歳から受給する老齢厚生年金は年額6,446円増える」
ではなく、
「65歳から受給する老齢厚生年金は年額27,254増える」が正しいこととなります。
(報酬比例部分の増額6,446円+経過的加算部分の増額20,808円)
前記(1)の、「1年間で納める厚生年金保険料(被保険者負担分)は107,604円(8,967円×12)」は正しいため、
このケースでは、
(1)(2)より、107,604÷6,446円=16.69…→約17年は誤りで、
(1)(2)より、107,604円÷27,254円=3.9…→約4年が正しいこととなります。
「今後納めた厚生年金保険料分を取り戻すには、65歳から年金をもらいはじめてから17年もかかる」わけではなく、
「今後納めた厚生年金保険料分を取り戻すには、65歳から年金をもらいはじめてから4年かかる」ということになります。
厚生年金保険は、個人の貯蓄や投資ではなく社会保険であり、老齢年金だけでなく障害年金・遺族年金などもありますので、「取り戻す」「元を取る」といった考え方を本来はすべきではありません。
ただ、「元を取るのに17年もかかるのなら」との誤解が原因で働かないでおこうと思っていた人が、自分の場合は「4年で元が取れる」と知ったら、パート・嘱託として勤務しようと考える方もおられるのではないでしょうか。
人手不足の中、年金制度に関する誤解により働くのをやめる従業員が出ると、会社にとっても本人にとっても残念なことですので、正しい情報の確認が望まれるところです。
(参考)老齢厚生年金(経過的加算部分)の年金額=1,734円(令和7年度額・昭和31年4月2 日以後生まれの人の場合)×厚生年金保険加入期間の月数(上限480月)-老齢基礎年金の満額831,700円(令和7年度額・昭和31年4月2日以後生まれの人の場合)×20歳以上60歳未満の厚生年金保険加入期間の月数/480月
(参考2)60歳代後半の厚生年金保険加入記録は、在職定時改定により毎年10月分から老齢厚生年金額に反映します。
(参考3)令和5年簡易生命表https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/dl/life23-02.pdf
によると、60歳の平均余命は男性23.68年(女性28.91年)のため、60歳未満の厚生年金保険加入期間が480月以上のため60歳以降の厚生年金保険加入期間が報酬比例部分のみにしか反映しない人であっても、平均余命まで存命であれば、65歳から約17年を超えて受給できることとなり、元が取れることとなります。
(参考4)令和7年改正の論点から早々に外され、「社会保障審議会年金部会における議論の整理」(令和6年12月25日 社会保障審議会年金部会)において「今後検討すべき残された課題」とされた「基礎年金の拠出期間の延長(45年化)」が、令和12年改正またはその後の改正で実現した場合でも、20歳未満や65歳以上の厚生年金保険加入期間がある人がいるため、経過的加算部分の必要性は残るといえます。45年化実現後も経過的加算部分が残された場合、現行の経過的加算部分計算式における厚生年金保険加入期間の月数の上限(480月)を5年延長して540月上限にしたり廃止したりする見直しの可能性も考えられるでしょう。
なお、従業員ではなく社長・役員の場合であっても、60歳未満の厚生年金保険加入期間の月数が480月未満の方が60歳以降厚生年金保険に加入すると、報酬比例部分だけでなく、480月までを上限に経過的加算部分も増えます。
ただ、オーナー企業社長の場合(特に一人法人の場合など)は、厚生年金保険料の被保険者負担分も会社負担分も自分で負担しているような感覚でおられる方も多いと思います。
そのような方が60歳未満の厚生年金保険加入期間の月数が480月未満の場合は、前記(1)の厚生年金保険料納付額を被保険者負担分×2として考えて、約4年ではなく約8年で元が取れる、という感覚を抱く方も多いかもしれません。
(参考5)2025年3月17日追記
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」の記載内容が本年4月から見直され、厚生年金保険料について事業主も被保険者と同額の保険料を負担している旨を明記されることとなりました。
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