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(2025年11月10日)
よくある質問:会社契約の生命保険は、経営者分の社会保険料や年金支給停止額に影響しないのでしょうか。
【回答】
10年以上前から一部の保険営業担当者が、次のような、健康保険法・厚生年金保険法上の報酬に該当する形態の生命保険契約を、報酬には該当しないと主張して中小企業経営者に提案しています。
保険契約者:会社
被保険者:代表取締役や取締役(代表取締役の配偶者)のみ
死亡保険金受取人:被保険者の遺族
一部のコンサルティング会社が保険営業担当者向けに情報商材を販売していたようで、保険営業担当者向けの社長の年金セミナーで講師を務めた際には、休憩時間やセミナー終了後に次のような誤った情報について相談を受けることが昔から多くありました。
(典型的な誤情報)老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額が120万円(基本月額10万円)、報酬月額65万円・賞与なしの代表取締役の報酬月額を40万円に下げ(標準報酬月額41万円)、報酬月額を下げた分の25万円(65万円-40万円)を上記保険契約の月払保険料に充てれば、健康保険法・厚生年金保険法上の報酬が減るため、社会保険料も節減でき、年金支給停止も避けられる。
このような説明とともに生命保険契約を提案されたのですが本当に報酬には該当しないのでしょうか、との相談を中小企業経営者から受けることも、今でも結構あります。
健康保険法第3条第5項・厚生年金保険法第3条第1項第3号で定められている「報酬」の定義は次の通りです。
「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。」
結論から言えば、前記事例の生命保険料は、通常は健康保険法・厚生年金保険法の報酬に該当すると判断され、社会保険料も年金支給停止額も従前のままとなるべきものです(健康保険法・厚生年金保険法における「労働者」には社長・役員も含まれます)。
「会社契約の生命保険料は健康保険・厚生年金の保険料には該当しない根拠がある」と、誤った説明をしているケースがよくみられるのですが、以下の三つはいずれも根拠にはなり得ませんので、十分ご注意ください。
・よくある間違い1:厚生労働省が作成している労働保険料(労災保険料・雇用保険料)の年度更新に関する資料中の「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表(例示)」において、「賃金総額に算入しないもの」として「会社が全額負担する生命保険の掛金」との記載があることが根拠になる、と主張しているパターン。
・よくある間違い2:厚生労働省職業安定局雇用保険課発行の「雇用保険業務取扱要領」において、「賃金日額の算定の基礎となる賃金」の項で、「賃金と解されないものの例」として「会社が全額負担する生命保険の掛金」が挙げられており、次のような記載があることが根拠になる、と主張しているパターン。
「従業員の退職後の生活保障や在職中の死亡保障を行うことを目的として事業主が従業員 を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、会社が当該保険の保険料を全額負担した場合の当該保険料は、賃金とは認められない」
これら二つの誤解パターンは、「賃金」に関する取り扱いを都合よく勝手に「報酬」の取り扱いに類推適用していることによるものです。
労働保険における「賃金」の取り扱いは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)における「報酬」の取り扱いとは異なりますので、関係がありません。
そもそも、労働保険は従業員のみを対象とするものですから、従業員ではない代表取締役等には適用されません。
・よくある間違い3:団体養老保険契約(福利厚生的なものとして恩恵的に会社が保険料を負担)について健康保険・厚生年金保険の「報酬」に該当しないとした古い通知が根拠になると主張しているケース
確かに、昭和38年2月6日庁保険発第3号通知において、「事業主が、保険契約の当事者となつている場合には、事業主が恩恵的に負担する保険料は報酬に含まれない」と示されています。これは、会社が負担した生命保険料に関する健康保険・厚生年金保険の取り扱いを示した通知ではあるのですが、前記事例のような、特定の役員のみを被保険者として、被保険者の遺族を死亡保険金受取人とする保険契約の取り扱いとは異なりますので、やはり、関係がありません。
事例の保険契約では、代表取締役や配偶者のみが被保険者で、死亡保険金受取人が被保険者の遺族ですから、経済的利益が実質的に経営者の身内のみに帰属しています。
報酬月額を下げた分を月払保険料に充てていることからも労働の対償といえるでしょう。
生命保険料全般が「報酬」に該当しないわけではありませんので、昭和38年2月の通知だけをみて誤解しないように注意しましょう。
少し変わった事例に関するものですが、契約内容・保険料会社負担の実態・所得税法上の取り扱い・本人の自由意思による加入・被保険者の選別性などの要素を踏まえて、「報酬とみるべき」とした通知(昭和47年10月18日 庁保険発第30号)もあります。
それでは、保険営業担当者から事例のような生命保険契約の提案を受けおり、社会保険の報酬にはあたらないと説明を受けている場合は、どうすればよいでしょうか。
契約前に、まず、会社の所在地を管轄する年金事務所の厚生年金適用調査課の担当者に、契約実態(会社が契約者で、代表取締役や配偶者である取締役のみが被保険者、死亡保険金受取人は被保険者の遺族、月払い、など)を正確に伝えて、報酬に該当するかどうかを照会して下さい。
その場で即答できる年金事務所職員は多くないでしょうから、調べて折り返し返答をもらうように伝えて下さい。
そうすれば、伝達内容と過去の通知や日本年金機構内部の疑義照会回答を照らし合わせた上で、報酬に該当する場合はその旨の回答があるはずです。
(今日のポイント)
●健康保険・厚生年金保険の「報酬」の定義は、法律で定められている
●契約形態によっては、会社契約の生命保険料が「報酬」に該当するケースもある
(注)会社契約の生命保険に関する税務上の取り扱いについては、国税庁HP(下記リンク先)を参照ください。
所得税・法人税に関するご不明点は、税理士、税務署、国税庁電話相談センターにご照会下さい。
(所得税基本通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
(法人税基本通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
(タックスアンサー)
・養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5363.htm
・定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm
・定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364-2.htm

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