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(2026年7月1日・3月25日・3月19日・3月9日追記)(2026年1月9日)
・個人事業主が厚生年金・健康保険に加入できるのは
法人役員または従業員として実態がある場合のみ
・実態がないのに虚偽届出により加入させる「国保逃れ」は
違法
・後で資格取消・保険給付返還・保険料追徴など
大きなリスクになることがある
SNSやインターネット広告などで
「個人事業主でも健康保険・厚生年金に加入できる」
「国民健康保険・国民年金より保険料が安くなる」
などといった勧誘が行われるケースがあります。
このようなスキームは一般に
「国保逃れ」と呼ばれることがあります。
しかし、実態として労務提供がないにもかかわらず
形式的に社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる仕組みである場合、
後に資格取消となる可能性があります。
【よくある質問】個人事業主でも厚生年金保険・健康保険に入れるのですか?
そのような勧誘を受けたのですが、問題はないでしょうか?
【回答】
個人事業主を対象にSNS等で違法な社会保険加入コンサルティングに誘導している業者は、以前からよくみられます。
そのような業者が行っている手法が適法か違法かを判断するためには、法律の規定を理解した上で、その業者における働き方の実態を確認することが重要です。
「適用事業所に使用される」70歳未満の人は、適用除外者(厚生年金保険法第12条)に該当しない限り、厚生年金保険の被保険者となります(同法第9条)。
また、健康保険の被保険者とは、「適用事業所に使用される」であって適用除外者に該当しない人、および、任意継続被保険者をいいます(健康保険法第3条第1項)。
以上より、個人事業主が厚生年金保険および健康保険に加入したい場合には、次のような適法な方法があります。
1~3をすべて満たせば、法人(適用事業所)に使用される人として、後期高齢者医療の被保険者となる前(原則75歳未満)であれば健康保険に入れ、70歳未満であれば厚生年金保険にも入れます。
(参考:昭和24年7月28日 保発第74号)
○法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について
法人の理事、監事、取締役、代表社員及び無限責任社員等法人の代表者又は業務執行者であつて、他面その法人の業務の一部を担任している者は、その限度において使用関係にある者として、健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取扱つて来たのであるが、今後これら法人の代表者又は業務執行者であつても、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させるよう致されたい。
なお、法人に非ざる社団又は組合の総裁、会長及び組合及び組合長等その団体の理事者の地位にある者、又は地方公共団体の業務執行者についても同様な取扱と致されたい。
ですから、売上・所得が一定以上となった段階で、自身で法人を設立して厚生年金保険・健康保険に加入することを検討するのが一般的ですが、「自身で法人を設立しなくても厚生年金保険・健康保険に加入できる」と謳って社会保険加入を勧めている業者も複数存在します。
しかし、適法に厚生年金保険・健康保険に加入できるのは次の(1)(2)いずれかのケースに限られます。
(1) 法人役員として加入できるケース
・役員として法人の経営に従事している実態がある
・その法人から労働の対償として役員給与を受けている
(2) 従業員として加入できるケース
・厚生年金保険・健康保険の適用事業所の従業員として勤務している実態がある
・1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が、同じ事業所に使用される「通常の」従業員の「4分の3以上」(または、「特定適用事業所」(令和7年度現在は50人超の企業)や「任意特定適用事業所」において、週所定労働時間20時間以上等の要件を満たしている)
・その事業所から労働の対償として給与を受けている
(1)(2)いずれの要件も満たしていないのに加入することは、問題があります。
まず、被保険者となる要件を満たしていない人について事業主が被保険者資格取得届を提出することは違法であり、罰則も設けられています。
・健康保険法第48条(届出)
適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない。
・同法第208条第1号
事業主が、正当な理由がなくて次の各号のいずれかに該当するときは、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
一 第48条(第168条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
被保険者要件を満たしていない人について資格取得届を提出する行為は、そもそも被保険者資格が発生していないにもかかわらず、「厚生労働省令」(健康保険法施行規則第24条第1項)に基づく「資格取得年月日」等について事実に反する届出を行うものであり、健康保険法第48条に違反する「虚偽の届出」に該当するといえます。
(注)厚生年金保険法第27条・同法第102条第1項第1号にも同様の規定があります。
(注2)健康保険被保険者となったとして世帯主が市町村に届け出た国民健康保険の資格喪失届(国民健康保険法第9条第1項・同法施行規則第13条第1項)が「虚偽の届出」であった場合等の過料については、国民健康保険法第127条第1項に定めがあります。また、「偽りその他不正の行為により」国民健康保険料等の徴収を免かれた場合の過料については、同法同条第3項に定めがあります。これらの定めはいずれも、法定の過料を科する規定を市町村が条例で設けることができるというものです。
実態によれば本来は厚生年金保険・健康保険に加入できない人を形式的にだけ要件を満たしているかのように偽って加入させようとする業者との関わりは避けることが賢明です。
法人代表者等役員と会社との関係は労働契約ではなく委任契約関係のため、従業員と異なり、所定労働時間や所定労働日数という概念はありません。
そこで、実態として役員業務に従事していないにもかかわらず、形式的にだけ役員に就任させて加入させるケースがあるようです。
しかし、法人役員が厚生年金保険・健康保険の被保険者となるかどうかに関する日本年金機構の疑義照会回答によると、「その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準として判断」されることとなっています。
実態として加入要件を満たしていないにもかかわらず形式的に届出されていた資格取得を保険者が取り消した処分について、社会保険審査会が妥当だと示した裁決例(平成15年6月30日)もあります。概要は次の通りです(『裁決例による社会保険法-国民年金・厚生年金保険・健康保険-第2版』(民事法研究会)所収の事例を踏まえ、筆者において要約しました)。
個人事業主を主な顧客とする法人が、顧客本人やその配偶者等を、自社が経営する事業所の「在宅勤務社員」と位置付けて厚生年金保険・健康保険の被保険者資格を取得させるしくみを設け、一定期間にわたり約90名の資格取得届を提出していました。
しかし、投書を契機として保険者による調査が行われた結果、これらの在宅勤務社員は実態として適用事業所に使用される者とは認められないとして、全員分の資格取得の確認が取り消される処分が行われました。
この処分に対し不服申立てがなされましたが、実態を踏まえると本件の在宅勤務社員は「適用事業所に使用される者」とは認められず、保険者が行った資格取得確認の取消処分は妥当であるとして、社会保険審査会は原処分を支持しました。
なお、この事案は従業員として加入させていたものですが、加入要件を満たしていない(「適用事業所に使用され」ていない)人についての資格取得が法律上認められないことは、役員として加入させていたとしても同じです。
2026年(令和8年)3月18日に、厚生労働省が「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取り扱いについて」という通知(保保発0318第1号・年管管発0318第1号)を発出しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/001675920.pdf
個人事業主やフリーランス(個人事業主等)を、実態がないのに形式的にのみ法人役員として社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる違法な届出(いわゆる「国保逃れ」)が問題となっていることを踏まえ、法人役員の社会保険資格取得に関する取り扱いを明確化したものです。
(厚生労働省保険局保険課長・厚生労働省年金局事業管理課長名で、全国健康保険協会理事長・ 健康保険組合理事長・日本年金機構理事長宛に出された通知です)
役員の社会保険加入要件については、従来から、法律の規定を踏まえた過去の通知・疑義照会回答により、次の二つのポイントが示されてきたところです。
1.その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であること(=法人の役員業務に経常的に従事している実態があること)
2.その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであること(=法人の役員業務の対価として経常的に報酬を受けている実態があること)
今回の通知は、確認のため1・2の要件や各要件の判断基準、各要件に該当しない例を再度明示した上で、さらに、今般問題となっている「国保逃れ」事例の態様を踏まえ、新たに、各要件に該当しない例が追加されたものといえます。
この通知に基づき、法人の役員である個人事業主等について法人に使用されている実態がないことが確認された場合は、その個人事業主等の健康保険・厚生年金法保険資格喪失届を提出させ、その被保険者資格を喪失させることとされます。
以前から示されていた上記1・2の各要件の判断基準や各要件に該当しない例については省略し、ここでは、今般新たに示された例を中心に、下記にまとめておきます。
(従業員としての加入か・役員としての加入かの差異はあるものの、今般新たに示された内容も、基本的な考え方は、平成15年6月30日社会保険審査会裁決例で示されていた内容とも大きく変わりはありません)
【上記1・2の要件に該当しないものとして、新たに示された例】
1.その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であること(=法人の役員業務に経常的に従事している実態があること)
という要件に該当しない例
●役員としての業務の実態が、以下のいずれかに該当するものである場合は、 原則として、当該業務が法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供に当たるものとは認められません。
・知識向上のためのアンケートへの回答や勉強会への参加等、その業務の実態が単なる自己研さんに過ぎないもの
・単なる活動報告や情報共有等、役員としての具体的な指揮監督や権限の行使に当たらず、それ自体が直接的に法人の経営に参画しているとは認められないもの
・当該法人の事業の紹介等についての単なる協力やお願いにとどまっており、労務を提供する義務を負っているとは認められないもの
実際の被保険者資格の確認に当たっては、個別具体的な実態を勘案してその適用の有無を判断されます。判断に当たっては、例えば、以下の事実を踏まえ総合的に判断されることとなっています。(これらのことは、基本的に従前と変わりません)。
・指揮命令権を有する職員の有無(具体的な業務について指揮監督する従業員や他の役員がいるか)
・決裁権を有する所管業務の有無(担当する業務について決裁権があるか)
・ 役員間の取りまとめや、代表者への報告業務の有無(役員会等に出席し、役員への連絡調整などを行っているか)
・ 定期的な会議への出席頻度、それ以外の業務の有無と出勤頻度(会議に参加し求めに応じて意見を述べるにとどまっていないか、会議に参加する以外の業務は他にあるか、その業務のためにどのくらい出勤しているか)
2.その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであること(=法人の役員業務の対価として経常的に報酬を受けている実態があること)
という要件に該当しない例
●個人事業主等が法人に対して、役員としての報酬を上回る額の会費等を支払っている場合は 実質的に業務の対価に見合った報酬を受けているものとは言えず、原則として、業務の対価としての経常的な支払いがあるものとは認められません。
・関連法人等へ会費等を支払わせている場合であっても、実質的に同一法人と評価される場合には同様に取り扱われます。
法人役員としての実態がないのに形式的にのみ個人事業主等を法人役員に就任させ、法人が健康保険・厚生年金保険の資格取得届を違法に提出することで、国民健康保険・国民年金加入を逃れさせる「国保逃れ」事案については、今回の通知に基づく日本年金機構(年金事務所)の調査が行われることにより、法人役員業務への従事や法人役員業務の対価としての報酬支払いの実態がないことが確認できれば、資格喪失届を提出させる取り扱いが行われることとなります。
これにより、加入要件を満たしていないのに健康保険・厚生年金保険に加入している人が減るでしょう。
また、今般の通知については大きく報道されていますので、違法に社会保険に加入させることをビジネスにしている法人からの勧誘に個人事業主等が巻き込まれる事案を減らす効果もあると思われます。
(以上のポイント)
●要件を満たしていれば、法人代表者等役員も健康保険・厚生年金保険に加入できる
●実態として要件を満たしていないのに、事業主が資格取得の届出を行うことは違法
●違法な「国保逃れ」事案を防ぐため、法人役員としての健康保険・厚生年金保険加入要件を満たしていない具体的な例が示された。
(補足)
なお、今般の通知では、役員としての業務従事・報酬受け取りの実態がない場合は、資格喪失届を提出させ、被保険者資格を喪失させることと記載されています。
実態がないことが確認された場合に資格喪失させるとされている点は、最低限の是正措置を示しているものと思われます。
調査結果によっては過去に遡及しての資格喪失もあり得ます。
また、被保険者資格取得届の提出時から実態がなかった場合は、法律上そもそも当初から被保険者になれる要件を満たしていなかったわけですから、資格取得は無効であり、本来はさかのぼって取り消されるべきものと考えられます。
ですから、今般の通知に資格喪失届を提出させ、被保険者資格を喪失させる旨の記載があるからといって、遡及取消の余地が否定されるわけではないでしょう。
当初から明らかな偽装、当初から実態ゼロなどの悪質な場合は、事案によっては遡及取消・記録訂正が行われる余地もあり得ると思われますし、社会保険・年金制度の適正な適用のためには、本来はそのように取り扱われることが制度趣旨に沿うものと考えられます。
ただ、行政実務上は次のような難しさも想定されます。
まず、調査によって長期間さかのぼって実態の有無を確認することが困難な場合もあるかもしれません。
また、遡及して資格喪失や資格取消となると、
・受給した健康保険給付・厚生年金保険給付について返還が問題となる可能性
・納付していた健康保険料・厚生年金保険料について精算が必要となる可能性
・年金記録の訂正
・本来加入すべきであった期間の国民健康保険・国民年金の保険料負担が必要となる可能性
などが一度に生じることがあります。
複数の制度・保険者が絡み、時系列処理が必要となりますので、遡及期間が長期に及ぶ場合には、実務上の負担は非常に大きくなります。
なお、保険料の時効などについてはそれぞれ、関係する法律において定められています。
・国民年金保険料:2年
・国民健康保険料(国民健康保険税ではなく国民健康保険料を徴収している自治体の場合):2年
社会保険(健康保険・厚生年金保険)制度は、実態として
法人役員として経営に従事し、役員給与を受けている
従業員として労務提供をし、給与を受けている
という関係があることを前提に設計されています。
そのため、実態がないにもかかわらず形式的に健康保険・厚生年金保険に加入させると、資格喪失指導・資格取得の取消しなどのリスクがあります。
また、資格喪失や資格取得の取消しが行われた場合には、個別事情にもよりますが、
・その間に受けた健康保険給付や厚生年金給付について返還を求められる可能性
・本来加入すべきであった国民健康保険・国民年金の保険料の未納付が後から問題となる可能性
があります。
経費を節減したい・手取りを増やしたいといった理由でこのような仕組みをビジネスにしている業者と関わることは、絶対におすすめできません。
(2026年7月1日追記)
【最近よくある質問】
2026年3月18日の厚生労働省通知(「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取り扱いについて」保保発0318第1号・年管管発0318第1号)において、法人役員としての加入要件を実質的に満たしていない場合は厚生年金保険・健康保険の被保険者資格取得が認められない旨が示されました。
「自身で法人を設立しなくても、当社の「役員」として厚生年金保険・健康保険に加入できます」と謳って、個人事業主・フリーランスに対して社会保険加入を勧めていた業者は、そのようなビジネスを止めたようです。
しかし、「自身で法人を設立しなくても、当社の「従業員」として厚生年金保険・健康保険に加入できます」と謳って社会保険加入を勧めている業者は、まだあるようです。
(例えば、「週10時間でも加入できる場合がある」と説明している業者もあるようです。)
こちらの手法は、違法ではないのでしょうか。
【回答】
「従業員」としての厚生年金保険・健康保険の被保険者資格取得が適法かどうかは、以下の要件をすべて満たしているかどうかで判断されます。
1.厚生年金保険・健康保険の適用事業所の従業員として勤務している実態がある
2.1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が、同じ事業所に使用される「通常の」従業員の「4分の3以上」(または、「特定適用事業所」(令和7年度現在は50人超の企業)や「任意特定適用事業所」において、週所定労働時間20時間以上等の要件を満たしている)
3.その事業所から労働の対償として給与を受けている
【解説】
上記1~3の要件のうち、2についての誤解が一般に多く見られます。
・1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が、同じ事業所に使用される「通常の」従業員の「4分の3以上」
という要件に関して、
一般向けの記事などでは「週30時間以上」と曲解して記載されていることがよくあります。
多くの場合、同じ事業所に使用される「通常の」従業員の1週の所定労働時間は40時間ですから、そのような記載がされることが多いのだと思います。
しかし、この要件を定めた健康保険第3条第1項第9号にも厚生年金保険法第12条第5号にも、「週30時間」などといった具体的な時間数の規定は何もありません。
あくまでも「通常の」従業員の「4分の3以上」と規定されているだけです。
したがって、例えば、「通常の」従業員の1週の所定労働時間が13時間の事業所において、1週の所定労働時間が10時間で雇用される従業員は、1週の所定労働時間については「通常の」従業員の1週の所定労働時間の4分の3以上という要件を満たします。
この場合、1月の所定労働日数についても「通常の」従業員の4分の3以上であれば、理屈としては、上記2の要件を満たすこととなります。
あとは、上記1の要件も3の要件も満たしていれば、被保険者資格取得は適法ということとなります。
ですから、70歳未満なら厚生年金保険に加入でき、75歳未満なら健康保険に加入できることとなります。
ただ、
1.厚生年金保険・健康保険の適用事業所の従業員として勤務している実態がある
については、従業員業務と称した形式的なアンケート・調査等の実施記録が整備されていたり、労働条件通知書・タイムカード・賃金台帳等の書類整備がされていても、それだけでは足りず、実際の勤務実態が認められることが必要です。
(なお、法人役員としての加入について発出された2026年3月18日の通知においては、形式的なアンケート・調査などは役員としての経常的な労務提供の実態があるとは認められないとされています。)
また、
3.その事業所から労働の対償として給与を受けている
についても、
形式的に給与が支払われてはいても、別途コンサル料などの名目で従業員から会費等を徴収する仕組みを採っている例も見受けられます。
(なお、法人役員としての加入について発出された2026年3月18日の通知においては、役員としての報酬を上回る額の会費等を支払っている場合は、実質的に、業務の対価としての経常的な報酬支払いがあるものとは認められないとされています。)
上記2の要件を満たしているだけではだめで、上記1・3についても、形式的だけではなく実態も満たしていないと被保険者資格取得は適法とは言えません。
「違法であるにもかかわらず、まだ発覚していない状態」と「適法」は全く異なります。
ただ、各事業所において「通常の」従業員の働き方がどのようなものか、各従業員の働き方がどのようなものかは、それぞれ異なるでしょうから、実態確認には個別具体的な調査が必要となるため、相応の調査負担が生じるものと考えられます。
なお、実態として加入要件を満たしていないにもかかわらず形式的に届出されていた資格取得を保険者が取り消した処分について、社会保険審査会が妥当だと示した裁決例(平成15年6月30日)は、「従業員」として加入させていた事例です。
投書を契機として行われた調査によって、上記1・3について実態がないことが確認できたため、約90名分の資格取得が取り消された事案です。
2026年3月18日発出の通知は、直接的には、「役員」として加入させる事案を対象としたものですが、この通知が出てからも出る前も、「従業員」として加入させる事案においても、上記1・3についての実態もあることが被保険者資格取得には必要です。
2026年3月18日発出の通知は「役員」として加入させるビジネスのみを対象とするものだから「従業員」として加入させるビジネスには適用されない、との説明を業者から受けることがあるかもしれません。
2026年3月18日の通知が直接適用されないことはその通りなのですが、だからといって、「従業員」として加入させた人が上記1・3を実態として満たしていないケースが、適法になるわけではありません。
実態として使用関係や報酬性が認められない場合には、被保険者資格取得が認められない可能性がありますので、注意しましょう。
●大事な判断基準
個人事業主・フリーランスの方の中には、国民健康保険料等の負担が重いと感じて、このようなサービスに関心を持つ方もおられるでしょう。
しかし、他社の従業員として厚生年金保険・健康保険に適法に加入するためには、上記1・2・3の要件を満たす形で、実際に勤務することが必要となります。
本業で一定の収入を得ている方であれば、その時間と労力を本業に充てて収入を増やす方が、経済的にも長期的にも合理的な場合が少なくないと考えます。
社会保険料だけを比較するのではなく、時間の使い方や事業への影響も含めて総合的に判断することが大切でしょう。
(参考)参考までに、上記2の要件について定めた根拠条文を以下に引用しておきます(健康保険法の条文のみ引用します)。
(定義)
第三条 この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。
(中略)
九 事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者(当該事業所に使用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に使用される者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該者と同種の業務に従事する当該通常の労働者。以下この号において単に「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者(一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い者をいう。以下この号において同じ。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからハまでのいずれかの要件に該当するもの
イ 一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。
(以下省略)

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