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令和10年(2028年)4月からは、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算は付かなくなるのですか?

中高齢寡婦加算はなくなるのですか?

(2026年5月14日)

【質問】遺族厚生年金に加算される中高齢寡婦加算の制度がなくなるのですか?

 改正により令和10年度からはなくなるのでしょうか。

 

【回答】

●令和10年度以降も令和3541日まで中高齢寡婦加算の制度は残りますが、経過的に額が縮小され、令和3542日以降はなくなります。

●改正により5年有期の遺族厚生年金を受給する妻も、要件を満たせば中高齢寡婦加算を受給できます。

 

【解説】

遺族厚生年金はかなり複雑でわかりにくい制度です。


特に、高額報酬を受けている経営者夫婦にとっては注意すべき点が多いため、経営者向けセミナーでは遺族厚生年金についてお話しすることも多いです。社長がもし今亡くなったら、配偶者は遺族厚生年金をもらえるのか、といった相談を受けることも多いです。


令和7年年金法改正により、令和10年度から遺族厚生年金が大きく変わります。

現在の遺族厚生年金に残っている男女差を、段階的に縮小・解消していく改正です。

改正後は、夫(妻)の死亡時に60歳未満で、子のない配偶者は、遺族厚生年金が原則として5年の有期給付となります。
 

ただし、夫の死亡により妻が受ける遺族厚生年金については、5年有期給付の対象となる人の年齢を、次の通り20年かけて段階的に引き上げていく経過措置が設けられています。

・令和10年度においては「40歳未満」の子のない妻

・その後20年かけて5年有期給付の対象者を「60歳未満」の子のない妻に、段階的に引き上げ

社長の奥様で65歳未満の人は多いですから、改正により遺族厚生年金だけでなく、中高齢寡婦加算がどうなるのかが、気になる人も多いでしょう。
 

そこで、今回は、遺族厚生年金に加算される中高齢寡婦加算の改正について、ポイントをお伝えします。

 

中高齢寡婦加算とは?

中高齢寡婦加算とは、一定の要件を満たせば、次のいずれかに該当する方が受ける遺族厚生年金に加算される給付です。
 

1.夫と死別時に40歳以上65歳未満で、原則18歳年度末までの子のない妻

2.夫と死別時に原則18歳年度末までの子のある妻で、その子と生計を同じくしている間に40歳に達し、その後遺族基礎年金の支給が終了したときに65歳未満である人
 

最長で、遺された奥さんが65歳になるまで(つまり、奥さん自身が老齢基礎年金をもらえる年齢になるまで)、遺族厚生年金に加算されます。 
 

令和8年度の加算額は、年額635,500円です。


もし25年間受給し続けると、合計約1,589万円となります(現在の加算額ベースで単純試算した場合)。

中高齢寡婦加算は、その名の通り、夫が亡くなって妻が遺族厚生年金を受ける場合しか加算されません。まさに、男女差のある年金給付の代表的なものですので、見直されることとなりました。


ただし、中高齢寡婦加算もいきなり廃止すると影響が大きいため、令和10年度から25年かけて段階的に額を縮小していき、最終的には廃止されることとなりました。
 

老齢年金や遺族年金は、あらかじめ現行制度に基づいて生活設計を考えている方が多いですから、そういう方たちの期待権を損なわないように、時間を掛けて、改正していくことが通常です。

(一方で、経営者層からご相談の多い「在職老齢年金制度」(年金と給与の調整)の基準額改正は、年金を多くもらえるようになって喜ぶ方が増える方向での改正です。こういう類の改正は段階的経過措置は設けられず、令和8年度分のように、いきなり4月分からの年金受給額が増えるような改正が行われます。)
 

 

中高齢寡婦加算の改正の概要

施行日(令和1041日)以降に新規に発生する中高齢寡婦加算の額は、令和10年度から令和35年度まで25年かけて段階的に縮小されます。

一部を抜粋すると、次の通りです。

・夫の死亡日(法律上は「遺族厚生年金を支給すべき事由が生じた日」)が令和1041日以前なら×1.000倍の加算

・令和2242日~令和2341日なら、×0.500倍の加算(つまり、半額水準に減額)

・令和3442日~令和3541日なら、×0.038倍の加算

・令和3542日以後なら、中高齢寡婦加算は加算されない

中高齢寡婦加算の改正について、よくある質問への回答

Q1.令和10年度以後に加算されることとなった中高齢寡婦加算は、毎年度減額されていくのですか?

A1.いいえ。一度受給し始めた中高齢寡婦加算は、翌年度以降も減額されません(現行制度と同様、毎年度の年金額の改定はあります)。
 再婚などしない限り、65歳になるまで加算されます。

 

Q2.改正前から中高齢寡婦加算を受けている場合も、令和10年度以降は加算額が減るのですか?

A2.いいえ。改正施行日(令和1041日)前からすでに中高齢寡婦加算が付いた遺族厚生年金を受けている妻は、改正の影響を受けませんので、令和10年度以降も減額されません。 

 

改正により原則5年有期の遺族厚生年金の対象となる妻は、中高齢寡婦加算をもらえないのでしょうか?

改正により、令和10年度以降、「原則5年有期の遺族厚生年金の対象となる妻には、中高齢寡婦加算はつかない」という誤解もみられます。
 

しかし、遺族厚生年金が5年の有期給付となる妻であっても、夫が令和3541日までに死亡した場合で(つまり中高齢寡婦加算制度が廃止されるまでに夫が死亡した場合で)、遺族厚生年金の受給要件を満たした妻には、遺族厚生年金(有期給付加算により増額された遺族厚生年金)に、要件を満たせば、中高齢寡婦加算も加算されます。
 

さらに5年間の支給期間が終了後も、一定の障害状態にある場合や収入要件等を満たす場合は、最長で65歳になるまで引き続き増額された遺族厚生年金に加えて、中高齢寡婦加算を受給できます。

 

誤解が生じる原因は?なぜわかりにくいのか

令和7年改正による令和1041日施行の厚生年金保険法本則条文からは、中高齢寡婦加算に関する条文(現行の厚生年金法第62条において定められている内容)が無くなっているため、このような誤解が生じやすいものかと思われます。
 

しかし、実際は、令和7年改正法附則第15条で、「妻に支給する遺族厚生年金に関する経過措置」が設けられています。
 

ここで、令和3541日までの夫の死亡により遺族厚生年金を受ける妻には(前述の経過措置を設けた上で)、現行厚生年金保険法第62条の定めは、令和1041日以降も「なおその効力を有する」と定められています。
 

中高齢寡婦加算が(段階的に縮小はされていくものの)完全廃止までには令和10年度からなお25年かかることが改正法附則において定めているため、一般の方にとっては、わかりにくくなっています。


このように、改正に伴う経過措置は、法律の本則ではなく附則に設けられます。


中高齢寡婦加算に限らず、附則に定められている内容を一般の方は理解されていないことも多いです。

一般向けの記事や書籍などでは附則に規定されている内容は省略されていることも多いため、誤解が生じやすくなります。
 

社長の老齢年金相談でも、例えば次の内容などは知識不足による誤解が特に多いため、注意が必要なところです。
 

・経過的加算額(差額加算):昭和60年改正法附則第59条第2項において、老齢厚生年金の額は「当分の間、」「加算した額とする」と規定

・特別支給の老齢厚生年金をもらえない世代の人の老齢厚生年金の繰上げ:厚生年金保険法附則第7条の3において、「当分の間、」「支給繰上げの請求をすることができる」と規定(繰上げ減額の対象となる年金など、減額分の具体的な計算方法については厚生年金保険法施行令第6条の3で規定)

 

(ポイント)

●令和10年度以降も令和3541日まで中高齢寡婦加算は残るが、経過的に額が縮小され、令和3542日以降はなくなる。

●改正により5年有期の遺族厚生年金を受給する妻も、要件を満たせば中高齢寡婦加算を受給できる

●附則に規定されている経過措置までは、年金に詳しくない一般の相談者には十分知られていないことが多い

 

 

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