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年金受給者が厚生年金保険に加入し続けることによる年金増額効果に関するよくある誤解とは

年金支給開始年齢を迎えた厚生年金保険加入者からのよくある質問とは

(2026年6月19日)

【ポイント】

●老齢厚生年金(報酬比例部分)は、各月の標準報酬月額や標準賞与額に応じて年金額が積み上がっていく仕組み

●老齢厚生年金を全額受給できるように給与額を減らした状態で働き続ける場合も、「加入期間中の給与額の平均が下がるため、老齢厚生年金額が減ってしまう」と心配する必要はない

●老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式中の「平均標準報酬額」を「加入期間中の給与額の平均」と誤解している人が多い
 

よくある質問

老齢厚生年金は、厚生年金加入期間および加入期間中の給与額の平均によって年金額が決まると思います。
 

老齢厚生年金を全額受給できるように給与額を減らした状態で働き続けると、厚生年金加入期間は増えるものの、加入期間中の給与額の平均が下がるため、老齢厚生年金額が減ってしまうのではないでしょうか。
 

【よくある質問への回答】
 

現在よりも一定額以上給与額を下げて厚生年金保険に加入した場合、給与額を減らさずに厚生年金保険に加入する場合と比べると、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額は少なくなります。
 

しかし、今後厚生年金保険に加入しない場合と比べると、今後の給与額を下げても、老齢厚生年金(報酬比例部分)は増えます。
 

人によっては、老齢厚生年金(経過的加算部分)も増えます。
 

したがって、老齢厚生年金を全額受給できるように給与額を減らした状態で働き続ける場合であっても、「加入期間中の給与額の平均が下がるため、老齢厚生年金額が減ってしまう」と心配する必要はありません。

 

老齢厚生年金の年金額計算の仕組みを確認しましょう

【解説】

厚生年金保険は70歳未満の方が加入できます。

ですから、年金支給開始年齢を迎えた方も70歳未満の間は継続して厚生年金保険に加入できます。

そして、老齢厚生年金は経過的加算部分と報酬比例部分に分かれます。
 

1.老齢厚生年金(経過的加算部分)の年金額について

老齢厚生年金(経過的加算部分)の年金額は、次の計算式で算出されます(令和8年度額)。
 

1,766円×厚生年金保険被保険者期間の月数(上限480月)-(老齢基礎年金の満額847,300円×20歳以上60歳未満の間の厚生年金保険被保険者期間の月数÷480月)

ですから、20歳以上60歳未満の厚生年金保険被保険者期間の月数が480月未満の人は、60歳以降であっても、年金支給開始年齢以降70歳未満であっても、厚生年金保険に加入していれば、厚生年金保険被保険者期間の月数が480月(上限)に達するまでは、月数増に応じて老齢厚生年金(経過的加算部分)は増えます。
 

老齢厚生年金(経過的加算部分)の算出には、給与額は関係がありませんから、給与額を減らした状態で厚生年金保険に加入しても、老齢厚生年金(経過的加算部分)に関してはデメリットは生じません。
 

2.老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額について

一方、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額は、次の計算式で算出されます。

・平均標準報酬月額×7.125/1000×平成153月までの厚生年金保険被保険者期間の月数
 +
平均標準報酬額×5.481/1000×平成154月以降の厚生年金保険被保険者期間の月数

これから厚生年金保険に加入する期間はすべて平成154月以降の期間ですから、今後の厚生年金保険加入記録は、上記計算式の後半部分だけに影響することとなります。

ここでとても重要なことは、次の点です。

・計算式の後半部分にある「平均標準報酬額」とは、平成154月以降の厚生年金保険被保険者期間について、各月の標準報酬月額と標準賞与額(過去の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率を乗じて、現在の価値に再評価した額)の総額を、平成154月以降の厚生年金保険被保険者期間の月数で割って得た額です。
 

計算式の後半部分は、

「平成154月以降の各月の標準報酬月額および標準賞与額(過去の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率を乗じて現在の価値に再評価した額)の総額」×5.481/1000

ということを意味します。
 

これは、言い換えると、

・「平成154月以降の各月の標準報酬月額を現在の価値に再評価した額×5.481/1000」の総額

「平成154月以降の各月の標準賞与額を現在の価値に再評価した額×5.481/1000」の総額

ということになります。
 

したがって、今後厚生年金保険に1月加入することによって老齢厚生年金がいくら増えるかも、次の計算式で計算できることとなります。

・その月の標準報酬月額を再評価した額×5.481/1000
 +
(その月に賞与が支給された場合のみ)
その月の標準賞与額を再評価した額×5.481/1000
 

つまり、今後厚生年金保険に加入する月に受ける報酬月額や賞与額が下がったとしても、厚生年金保険被保険者月数が増えることにより、老齢厚生年金(報酬比例部分)は増えていくこととなります。
 

なお、各月の標準報酬月額や各月の標準賞与額を再評価するために乗じる「再評価率」は毎年度改定されます。
 

例えば、昭和31年度以降生まれの方について、令和84月から令和93月までの月の標準報酬月額や標準賞与額を再評価する際の「再評価率」は0.921です。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/nenkingaku/20150401-01.files/8_kounen.pdf
 

ですから、例えば、令和86月に標準報酬月額50万円で厚生年金保険に加入して、令和86月に受けた賞与がない場合、令和86月が厚生年金保険被保険者期間に算入されると老齢厚生年金(報酬比例部分)がいくら増えるかは、次の計算式で計算できます(令和8年度)。
 

・標準報酬月額50万円×再評価率0.921×5.481/10002,524

(注)厚生年金保険被保険者期間として算入されるのは資格喪失月の前月までです。
したがって、令和86月分が年金額の計算対象となるのは、令和8630日時点で厚
   生年金保険の被保険者である場合です。

 

年金額が改定されるタイミングは?

令和86月が厚生年金保険被保険者期間に算入されたとしても、すぐに年金額が増えるわけではありません。
 

年金支給開始年齢到達月以後の厚生年金保険被保険者期間も含めて年金額が再計算される結果、実際に年金額に反映されるのは、次のいずれかのタイミングです。

1.(特別支給の老齢厚生年金受給者の場合)65歳到達月の翌月分の年金から反映

2.(65歳以上70歳未満の厚生年金保険被保険者の場合)毎年10月分(12月支給分)の年金から反映

3.70歳到達月の翌月分の年金から反映

4.(70歳未満の退職の場合)退職月の翌月分の年金から反映

よくある誤解は、「平均標準報酬額」の意味を誤解していることが原因

今回ご紹介しました質問は、昔から多くの年金受給者の方々から受けてきました。
 

しかし、老齢厚生年金(報酬比例部分)は、「加入期間中の給与額の平均が下がると、それまでに獲得した年金額まで減ってしまう」という仕組みではありません。
 

各月の標準報酬月額や標準賞与額に応じて年金額が積み上がっていく仕組みです。
 

そのため、給与額を下げて働く場合であっても厚生年金保険に加入し続ける限り、基本的に老齢厚生年金(報酬比例部分)は増えていきます。
 

老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額計算式中の「平均標準報酬額」の用語の意味が一般にはあまり知られていないため、「平均標準報酬額」を単純に「加入期間中の給与額の平均」の意味だと誤解しやすく、その結果、このような疑問が生じやすいところです。
 


(ポイント)

●老齢厚生年金(報酬比例部分)は、各月の標準報酬月額や標準賞与額に応じて年金額が積み上がっていく仕組み

●老齢厚生年金を全額受給できるように給与額を減らした状態で働き続ける場合も、「加入期間中の給与額の平均が下がるため、老齢厚生年金額が減ってしまう」と心配する必要はない

●「平均標準報酬額」を「加入期間中の給与額の平均」と誤解している人が多い

 

 

【参考・根拠条文厚生年金保険法第43条第1項
(年金額)第四十三条 老齢厚生年金の額は、被保険者であつた全期間の平均標準報酬額被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、別表各号に掲げる受給権者の区分に応じてそれぞれ当該各号に定める率(以下「再評価率」という。)を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。附則第十七条の六第一項及び第二十九条第三項を除き、以下同じ。)の千分の五・四八一に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。

 

(注1)厚生年金保険法第43条第1項の「老齢厚生年金」とは、老齢厚生年金(報酬比例部分)のことです。
老齢厚生年金(経過的加算部分)については、昭和60年改正法附則第59条第2項で規定されています。

 

(注2)厚生年金保険法第43条第1項では、厚生年金保険被保険者期間のすべてが平成15年4月以降の場合の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額の計算式が定められています。
平成15年3月以前の被保険者期間もある場合の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額の計算式は、平成12年改正法附則第20条で規定されています。

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