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役員給与設定の決定時期と年金支給停止額の変動時期に関する注意点とは

7月決算企業の社長の事例を用いて注意点を解説します

(2026年7月13日)  


ポイント
1.令和810月分からの在職定時改定を加味した「試算結果」は、令和8年9月以前でも年金事務所等で確認できる


2.令和94月分からの年金額改定や在職老齢年金制度の基準額改定を加味した「試算結果」は、令和94月以降に確認できる


3.令和99月からの標準報酬月額上限引上げを加味した「試算結果」は、令和99月以降に確認できる




(例)7月決算企業のA社。毎年9月下旬開催の定時株主総会で10月支給分から翌年9月支給分までの1年間の役員給与を決議している。


代表取締役B社長(67歳)の役員給与月額は67万円(厚生年金保険の標準報酬月額は、令和8年度現在は上限額の65万円)。賞与なし。


令和8年6月に届いた年金額改定通知書によると、B社長の令和8年度の老齢厚生年金(報酬比例部分)は年額144万円。


令和8年7月現在のB社長の年金支給停止額は、次の通りです。

・年金支給停止額(月額換算額)
=(基本月額12万円+総報酬月額相当額65万円-令和8年度基準額65万円)×1/2=6万円(半額支給停止)


そこで、A社は令和8年9月下旬開催の定時株主総会で、B社長の役員給与(令和8年10月支給分から令和9年9月支給分まで)を、今期と同額の67万円と決議するとしたら
どうなるでしょうか。

 

 

 

令和8年10月分からは年金支給停止額が少しだけ増える(在職定時改定の影響)

65歳以上70歳未満の厚生年金保険被保険者については、毎年10月分から老齢厚生年金の「在職定時改定」が行われます。



これにより、その年の8月までの厚生年金保険加入記録に基づいて老齢厚生年金が再計算されることとなり、10月分から老齢厚生年金(報酬比例部分)の額が増額改定されます。


したがって、在職老齢年金制度による年金支給停止額計算式中の「基本月額」、つまり、「老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12」も10月分から増額されます。


結果として、令和8年10月分(12月支給分)から、年金支給停止額が少しだけ(1,641円)増えます。


・令和7年9月から令和8年8月までの厚生年金保険加入記録が反映することにより、いくら老齢厚生年金(報酬比例部分)が増えるか
650,000×令和8年度再評価率0.921×5.481/1000×12か月39,374円


・令和8年10月分から令和9年3月分までの年金支給停止額(月額換算額)
=(基本月額123,281円+総報酬月額相当額65万円-基準額65万円)×1/2→61,641円


年金支給停止額がいくら増えるかは、年金事務所(または街角の年金相談センター)で、現状の役員給与設定を伝えて、今後も現在の役員給与設定のまま働き続けると仮定した場合の、令和8年10月以降の年金額内訳を試算してもらい、「試算結果」を印刷してもらえば、正確な額が確認できます。
 

 

令和9年4月分からは、年度ごとの年金額改定により年金額が変わる(賃金・物価の変動等に応じ)。在職老齢年金制度の基準額が変わる可能性もある

物価・賃金の変動やマクロ経済スライドの適用により、毎年度の年金額は改定されることがあります。



令和9年度の年金額が改定される場合は、令和9年4月分から老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額が改定されるため、年金支給停止額が変動することとなります。


B社長の令和9年度の老齢厚生年金(報酬比例部分)がいくらになるかは、令和8年9月の定時株主総会開催時点ではまだわかりません。


令和9年1月下旬に総務省が消費者物価指数を公表すると、物価・賃金等の指標を踏まえた令和9年度の年金額改定率が確定し、厚生労働省から令和9年度の年金額改定率が公表されます。同じタイミングで、令和9年度の在職老齢年金制度の基準額も公表されます。


令和9年4月1日以降は、年金事務所(または街角の年金相談センター)で令和9年度年金額・基準額に基づいた年金支給停止額が記載された「試算結果」を受領できます。


B社長が老齢厚生年金(報酬比例部分)を半額受給したい場合、令和8年10月分から令和9年3月分の年金も半額受給するために、役員給与設定をどのように変更すればよいかは、事前に「試算結果」を受領することで確実にわかります。


それに対し、令和9年度の年金額・基準額改定がどうなるかは、令和8年度の定時株主総会時点ではわかりません。


ですから、どの程度年金額・基準額が増額改定される可能性があるかを予想して役員給与を設定するしかありません。

 

令和9年9月分からは標準報酬月額上限の引上げにより年金支給停止額が増える人も

令和7年年金法改正により、厚生年金保険の標準報酬月額の上限(現在65万円)が、次の通り段階的に引き上げられることが決まっています。


 ・令和9年9月から:68万円
 ・令和10年9月から:71万円
 ・令和11年9月から:75万円


B社長について、令和8年9月の定時株主総会で、令和9年9月までの役員給与設定を決議する場合、令和9年9月分の年金支給停止額については、標準報酬月額65万円ではなく68万円で計算されることとなります。


令和9年4月分からの年金額が令和8年度と比べて何%変動するかや、令和9年度の在職老齢年金制度の基準額がいくらになるかは現時点ではわかりません。

そこで、仮に令和9年4月~9月分までの老齢厚生年金(報酬比例部分)が令和8年10月分~令和9年3月分までと同額であり、かつ、令和9年度の在職老齢年金制度の基準額も令和8年度と同額であると仮定して計算すると、令和9年9月分の老齢厚生年金(報酬比例部分)は約62%が支給停止となります。



・令和9年9月分の年金支給停止額(月額換算額)=(基本月額123,281円+総報酬月額相当額68万円-基準額65万円)×1/2→76,641円(約62%支給停止)


ただ、令和9年9月分が実際にいくら支給停止されるかの「試算結果」は、令和8年9月の定時株主総会開催前はもちろん、令和9年4月1日になっても、まだ年金事務所等で受領することはできません。


令和9年4月1日時点で、今後の役員給与設定を伝えて令和9年9月分の「試算結果」を依頼しても、「標準報酬月額65万円」のままでの「試算結果」(令和9年9月からの標準報酬月額上限68万円への引上げが加味されていない試算結果)を受領することとなります。



B社長の役員給与設定を決議するにあたっては、令和9年9月から標準報酬月額が68万円に引き上げられることも踏まえておくことが大事です。


令和9年4月分からの年金額改定により老齢厚生年金(報酬比例部分)がどの程度変動するかが読めない点が悩ましいですが、安全側を見込むのであれば、令和8年度の引上げ率(2.0%)よりも高めの年金額改定を想定して、在職老齢年金制度の基準額は令和8年度と変わらないと仮定して役員給与を検討しておくことも考えられます。

 

標準報酬月額上限の引上げは、70歳以上の社長・役員等の年金支給停止額にも影響する

■70歳以上の社長・役員様にも影響があります。


なお、令和99月からの標準報酬月額上限の段階的引上げは、70歳以上被用者の標準報酬月額に相当する額(在職老齢年金制度における総報酬月額相当額に反映する額)の算定についても準用されます(令和7年改正法附則第9条第2項・第5項・第8項)


したがって、70歳以上の社長・役員等(70歳以上被用者)についても、令和99月、令和109月、令和119月の各段階における標準報酬月額上限の引上げが、在職老齢
年金制度による年金支給停止額の計算に影響します。
 

 

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