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後期高齢者医療制度への金融所得反映や公金受取口座の自動登録は、老齢厚生年金の支給停止額には反映しない

後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映と、在職老齢年金制度による年金支給停止額

(2026年7月29日)  

後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671152.pdf

ついては、これまで何度かご案内しました。

 

 

現在、上場株式の配当等の金融所得を確定申告するかどうかによって、所得税・住民税だけでなく、国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険料や窓口負担割合、65歳以上の方の介護保険料や利用者負担割合も変わる可能性があります。

(国民健康保険・後期高齢者医療制度の窓口負担割合や保険料、介護保険の保険料や利用者負担割合も、いずれも所得によって決まるためです)

 

「源泉徴収ありの特定口座」を利用していれば、確定申告は不要ですが、確定申告を行うと、

その所得が「合計所得金額」に算入されます。

 

 

 

この点については、「不公平の解消が必要」との議論がされてきましたが、令和865日改正法が公布されました。

 

 

金融所得の公平な反映は、まずは、後期高齢者の「医療制度」の窓口負担割合(現在、所得に応じて1割、2割、または3割)や保険料を対象に行われることとなっています。

 

 

これにより、確定申告をしなくても、金融機関から提供された上場株式等の配当等の情報が後期高齢者医療制度の窓口負担や保険料に反映することとなります。

(令和8年6月5日公布の改正法により、金融機関等から後期高齢者医療広域連合への情報提供が義務化されることとなりました。)

*健康保険法等の一部を改正する法律第9条参照

 

 

ただし、この改正の施行日は「公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日等」とされました。

 

システム改修等に2年程度かかるため、厚生労働省は、公布後45年程度(オンライン提出義務化後18か月程度)での反映を見込んでいるようです(下記リンク先4ページ参照)。https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001676380.pdf

 

 

(注)NISA口座内での利益(非課税)については、改正施行後も、窓口負担や保険料には関係しません。

 

 

SNSやネットでは、最初は後期高齢者だけかもしれないが、いずれ70歳以上75歳未満にも拡大され、さらに70歳未満にも、60歳未満にも、もっと若い世代にも対象が広げられるはずだ、といった、煽り情報が既に多く見られます。

 

 

社会保障審議会医療保険部会における過去の議論などを踏まえると、いずれ、70歳以上75未満や70歳未満の国民健康保険の窓口負担・保険料などにも適用対象を拡大すべきだ、との議論が深められる可能性はあるでしょう。

 

 

しかし、SNSやネット上などの煽り情報をご覧になった社長様からは、さらに不安を進めて、今の段階から、

 

 

「在職老齢年金制度による老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金支給停止にも、金融所得が影響するようになるのですか」との問い合わせが出てきています。

 

 

この点については、「そのような改正は行われていません。」

 

 

現行の厚生年金保険法では、在職老齢年金制度による年金支給停止額は、次の計算式で計算されます。

 

・年金支給停止額(月額換算額)

=(基本月額+総報酬月額相当額-基準額(令和8年度65万円))×1/2

 

 

「基本月額」とは、老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12です。

 

 

「総報酬月額相当額」とは、標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12です。

 

 

 

「総報酬月額相当額」の構成要素である「標準報酬月額」「標準賞与額」を算出するための「報酬」・「賞与」については、厚生年金保険に次のように定められており、金融所得は含まれません。

 

 

(保有する上場株式の売却益や配当金などは、勤務している厚生年金保険適用事業所から受けるものではありませんし、役員や従業員としての労働の対償として受けるものでもないから、報酬・賞与には含まれないのです)

 

 

・(参考)厚生年金保険法第三条(用語の定義)3号・第4 

報酬:賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。 

賞与:賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。

 

 

ですから、金融所得がいくら多くても、また、概ね5年以内程度後に、金融所得の情報が後期高齢者医療制度で把握されることとなっても現行法上、年金支給停止額には影響はありません。

 

 

金融所得を年金支給停止額に反映させるためには、「報酬」・「賞与」に金融所得も含まれるように、厚生年金保険法を改正する必要があります。

 

万一、「報酬」・「賞与」に金融所得も含まれるような改正が将来行われたとしたら、毎月の「標準報酬月額」・「標準賞与額」決定にあたっても、金融所得が含まれることとなります。
 

そして、在職老齢年金制度による年金支給停止額に影響する「総報酬月額相当額」とは、「標準報酬月額」+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12のことです。

 

この「総報酬月額相当額」にも金融所得が含まれることとなるため、金融所得も含めて年金支給停止額が計算されることとなります。

 

 

給与所得以外の所得(金融所得や自営業・フリーランスの事業所得・不動産所得など)が在職老齢年金制度による年金支給停止額に反映されないのは不公平だ、という総論的な意見を述べる人は昔からたくさんいました。

 

 

 

例えば、令和7年改正の前の社会保障審議会年金部会でも、次のような意見が出たことはありました。

 

 ・支給停止の対象は、厚生年金の適用事業所で働く被保険者及び70歳以上の者の賃金であり、自営業や請負契約、顧問契約で働く者の収入や不動産収入を有する者等は対象にならないといった就業形態の違いによる公平性の問題も存在し、この問題は年金制度だけで考える限りは解決できない。

 ・厚生年金保険の適用要件を満たさない非加入者や、賃金以外の収入がある者との公平性を確保するため、事業所得・家賃・配当利子などを含む総収入をベースに年金額を調整する制度に改めるべき。

 

 

 

しかしながら、厚生年金保険法の報酬・賞与にそれらも含めるような改正について、現実的・具体的なレベルで議論されたり改正法案が出されたりしたことはこれまでのところ、ありません。

 

 

 

次回、令和12年改正の前の社会保障審議会年金部会でも、(これまでと同様)一般的な問題意識としては意見が出て来る可能性はありますが、

 

 

報酬・賞与の定義を改正することよりも、本年6月までの社会保障審議会年金部会で議論されてきたものの先延ばしになった論点の中に、議論すべき優先順位が高い事項がたくさんあります。

 

 

(週所定労働時間10時間以上20時間未満の従業員や複数の事業所合算での週所定労働時間が20時間以上の従業員への社会保険の適用拡大、国民年金被保険者期間の45年化、障害年金の見直しなど)

 

公金受取口座の自動登録と在職老齢年金制度による年金支給停止額

令和76月から年金請求手続きの際に年金受取口座として指定した口座について、公金受取口座への登録を希望する場合は、公金受取口座として登録することができるようになりました。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/kokinkoza.html

 

 

さらに、令和88月頃から「行政機関等経由登録の特例制度」が実施される予定です。

https://www.digital.go.jp/policies/account_registration/pension

 

 

年金受給者のうち、令和8415日時点で65歳以上の方で、公金受取口座を登録していない方に対し、令和88月頃から令和92月頃までに順次、日本年金機構から「公金受取口座に関する大切なお知らせです」と記載された茶色の封筒(簡易書留)が送付されます。

 

 

 

・年金受取口座を公金受取口座に登録することに同意する場合は、手続き不要です。

 

 

・同意しない場合は、不同意の回答をする必要があります。

一定期間(45日)内に回答がない場合は、同意したものとして取り扱われます(年金受取口座の情報等を日本年金機構がデジタル庁に提供し、デジタル庁が公金受取口座として登録します)。

 

 

公金受取口座を登録しておくと、将来、給付金等を申請する際に通帳コピーの提出が原則不要となるなどのメリットがあります。

 

 

 

登録は義務ではありませんが、「行政機関等経由登録の特例制度」が始まりますので、

 

年金受取口座を公金受取口座として登録されたくない場合は、「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」内の「不同意申出書」に必要事項を記入して期限までに返送する必要があります。

 

 

よくある質問への回答などは、デジタル庁サイトを確認ください。

https://www.digital.go.jp/policies/account_registration/pension

 

 

今般の「行政機関等経由登録の特例制度」についても、次のような問合せをいただくことがあります。

 

 

【質問】年金受取口座を公金受取口座に登録することについて、不同意の回答をしないままだと(デジタル庁が年金受取口座を公金受取口座として登録したら)、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金支給停止額に影響がありますか。

 

 

 

【回答】いいえ。影響はありません。

 

 

・年金受取口座を公金受取口座に登録されても、預金残高を把握されるわけではありません。

 

 

・前述の通り、現行の厚生年金保険法の規定では、在職老齢年金制度による年金支給停止額には、預金残高や利息は影響しません。(預金残高や利息は、厚生年金保険法の報酬・賞与に該当しないからです)

 

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