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(2026年8月20日)
【ポイント】
●療養、育児または介護と仕事を両立するための「就労調整」により標準報酬月額が2等級以上低下し、その状態が3か月以上続くことがあらかじめ見込まれるとき、会社は、標準報酬月額が早期から下がる特例の届出ができるようになる(令和9年1月1日から)
●将来の年金額が下がるなどのデメリットがあるため、届出に際しては、書面による本人の同意が必要
●70歳以上被用者や法人役員も要件を満たせば特例の対象となるが、役員の場合は、役員給与月額改定時期等が定期同額給与の要件を満たすかどうかを事前に確認しておくことが重要
療養、育児または介護と仕事を両立するため、本人と職場の合意の下で、所定労働時間の短縮や時間外労働の抑制等の「就労調整」が行われ、その結果として、標準報酬月額が2等級以上低下し、かつその状態が3か月以上続くことがあらかじめ見込まれるものとして届出があった場合は、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、特例措置により、報酬が減少した初月に受けた報酬の総額を基に、その翌月から新たな標準報酬月額に改定できる取扱いが始まります(令和9年1月1日から)。
現在の通常の随時改定では、「固定的賃金」の変動があり、その変動月以後の継続した3か月間に受けた報酬の平均額に基づく標準報酬月額が、従前の標準報酬月額から2等級以上変動するなどの要件を満たした場合、4か月目から標準報酬月額が改定されます。
それに対し、今回の特例は、
・療養、育児または介護と仕事を両立するための「就労調整」が行われた場合に限り、
・固定的賃金の変動によるものでなくても、
・報酬急減後の報酬総額に基づく標準報酬月額が従前の標準報酬月額から2等級以上低下し、その状態が3か月以上続くことがあらかじめ見込まれる段階で、
・書面による本人の同意を受けて、
通常よりも早く標準報酬月額を下げてもらうための届出をすることができるようになる、というものです。
ただし、報酬が減少した初月の全部にわたって勤務せず、報酬が一切支払われなかった場合は、療養等と仕事を両立しているとは言い難いため、その月は特例措置の対象外とされます。
この特例制度は、令和8年7月31日に発出された以下の通知に基づくものです。
「療養、育児又は介護により報酬が急減した者についての健康保険法及び 厚生年金保険法の標準報酬月額の保険者算定の特例について」(保保発 0731 第4号・年年発 0731 第1号・年管管発 0731 第7号)
この特例制度は、療養、育児または介護と仕事の両立を支援する観点から設けられるものです。
また、本年8月からは高額療養費制度も見直され、月ごとの自己負担限度額の引上げ等が行われていますが、今回の特例により標準報酬月額を早期に実態に合わせることで、高額療養費の所得区分にも早期に反映される場合があります。
毎月の給与にかかる健康保険料・厚生年金保険料は、その月の「標準報酬月額」に応じて決まりますから、早期に標準報酬月額が下がることにより、早期に健康保険料・厚生年金保険料が下がります。
また、高額療養費の自己負担限度額は「所得区分」ごとに定められており、健康保険加入者の「所得区分」は、原則として、その月の「標準報酬月額」によって決まります。
ですから、今般の特例によって早期に標準報酬月額が下がることによって、早期に「所得区分」が下がり、高額療養費の自己負担限度額が早期に下がる人も出てきます。
特例の届出に際して本人の同意が必要な理由は、将来の年金(報酬比例部分の年金)が少なくなるほか、傷病手当金・出産手当金への影響も生じるというデメリットがあるためです。
「将来の年金(報酬比例部分の年金)が少なくなる」とは、この特例によって標準報酬月額が低くなると、その期間について厚生年金の報酬比例部分の年金額に反映される標準報酬月額も低くなるためです。
すでに特別支給の老齢厚生年金や老齢厚生年金を受けながら厚生年金保険に加入している人についても、この特例の届出がされると、標準報酬月額が下がらないまま働く場合と比べて、その後の年金額の増え方が抑えられることになります。
具体的には、65歳到達時の年金額の改定、65歳以上70歳未満の人について毎年行われる在職定時改定、退職改定、70歳到達時の改定の際に、この特例を利用しなかった場合と比べて、年金額の増加が小さくなります。
なお、今般の特例は、厚生年金保険の「70歳以上被用者」も対象となります。
(70歳以上被用者の場合は、標準報酬月額に相当する額が下がっても、それによって老齢厚生年金(報酬比例部分)そのものの年金額は下がりません)
ちなみに、通常の随時改定等による場合と同様に、この特例により「標準報酬月額」(70歳以上被用者の場合は「標準報酬月額に相当する額」)が下がった場合も、在職老齢年金制度の年金支給停止額計算に用いられる「総報酬月額相当額」が下がります。
したがって、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給停止額が減る(働きながら受給できる年金額が増える)人が出てきます。
法人役員についても、健康保険・厚生年金保険の被保険者または70歳以上被用者であり、療養、育児または介護と仕事を両立するための就労調整などの要件を満たす場合には、対象となり得ます。
社長個人について言えば、療養等により就労調整を行い報酬が下がるケースでは、要件を満たせば、この特例により社会保険料や高額療養費の負担は早期に軽減されます。
一方で、将来受け取る年金(報酬比例部分)の額の増え方は抑えられます。すでに老齢厚生年金を受給しながら働いている社長の場合は、年金支給停止額が減り、手取りの年金が増える面もあわせて理解しておく必要があります
ただし、この特例の対象となるような役員給与の引下げを行う場合、法人税法上の「定期同額給与」の取扱いにも注意が必要です。税務上問題のない役員給与の引下げに該当するかどうか、事前に税理士に相談することが重要です。
なお、対象者が役員・従業員いずれであっても、この特例措置を利用する場合、会社は、届出内容が事実であることを確認できる書類(就労調整の原因が療養の場合なら、療養の事実を証明する医師の診断書、出勤簿、賃金台帳など)を、届出日から2年間確実に保存する必要があります。
また、就労調整の終了・縮小により報酬が増え、増加後の報酬総額に基づく標準報酬月額が、特例による改定後の標準報酬月額から2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、速やかに増額改定の届出を行うことも必要です。
(ポイント)
●療養、育児または介護と仕事を両立するための「就労調整」により標準報酬月額が2等級以上低下し、その状態が3か月以上続くことがあらかじめ見込まれるとき、会社は、標準報酬月額が早期から下がる特例の届出ができるようになる(令和9年1月1日から)
●将来の年金額が下がるなどのデメリットがあるため、届出に際しては、書面による本人の同意が必要
●70歳以上被用者や法人役員も要件を満たせば特例の対象となるが、役員の場合は、役員給与月額改定時期等が定期同額給与の要件を満たすかどうかを事前に確認しておくことが重要

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