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老齢厚生年金はなぜ難しいのか?年金保険料を支払う立場と老齢年金をもらう立場

(2017年12月19日)

 

私(奥野)は、何年にもわたり、毎日全国の社長から老齢厚生年金に関する質問をいただき回答しています。


日々相談回答を行う中で、社長様が老齢厚生年金について誤解をされている事例に遭遇することもよくあります。

 

●厚生年金の特異性:年金保険料を払う立場と老齢年金をもらう立場


老齢厚生年金には、加入する人(保険料を支払う立場の人)と受給する人(老齢年金をもらう立場の人)という二つの立場を、同一人が、全く同じ時期に兼ねることがある、というとても変わった特徴があります。


このことが、経営者層の年金理解の難しさの大きな理由ではないかと思っています。


自営業者の方や無職の方が加入する国民年金であれば、

・加入する人(国民年金保険料を払う人):原則20歳以上60歳未満

・受給する人(老齢基礎年金をもらう人):原則65歳以上
です。


また、民間の保険会社と契約して加入する個人年金でも、加入する期間と受給する期間は異なります。
(60歳まで保険料を払って、60歳から受けるとか、5年間据え置いて65歳から毎年年金給付を受けるのが一般的でしょう。)


しかし、厚生年金保険だけは、60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになる年齢(性別・生年月日に応じ60歳~64歳)以降も、厚生年金保険加入事業所から報酬を受けて働いていると、引き続き70歳までは厚生年金保険被保険者として保険料を負担する必要があります。


つまり、老齢年金を受給しながら厚生年金保険料を毎月負担する期間が長く続くわけです。


厚生年金独特のこの仕組みをきちんと理解されていない方も多いので、例えば、次のようなよくある質問が発生するのだと思います。


・年金がもらえるようになったのに、年金保険料が引き続き振替えられています。いつまで厚生年金保険料を払うのでしょうか。

・年金がもらえるようになってから払う厚生年金保険料は、いつ、どのような形で年金給付に反映されるのでしょうか。(掛け捨てになってしまうのでしょうか。)


報酬が高い方の場合は、厚生年金保険料を支払いながら特別支給の老齢厚生年金や老齢厚生年金がもらえるようになっても、在職老齢年金という調整のしくみが適用され、年金の全部又は一部が「支給停止」されてしまいますので、さらにわかりにくくなっています。

 

●「支給停止」の実質は、その間「不支給」


この、「支給停止」という言葉も年金用語ですが、一般の方からすると馴染みのない言葉ですので、報酬を下げたり退職したら、それまで支給停止となっていた年金がさかのぼってもらえると誤解している方が後を絶ちません。


年金をもらう権利が発生しているのに、報酬が高いからと言って支給停止されている間も毎月
高額の厚生年金保険料を負担しているわけですから、支給停止の年金を後からもらえると勘違いしてもやむを得ない気もします。


(支給停止の年金は、国に貸しているだけだから、後で利息が付いて増えて戻ってくる、と誤解している人も多いです。)


この、在職老齢年金の「支給停止」は、一般の方の感覚としては、在職調整による「不支給」と呼んだ方が、わかりやすいかもしれませんね。


少し脱線しましたが、厚生年金保険の場合は、年金保険料を払う期間・老齢年金をもらう期間が重なることがある、という点にご注意下さい。


堅苦しい言葉で言うと、「被保険者」と「受給者」の立場を同一人が同じ時期に兼ねることがあるということです。


「被保険者」である期間と「受給者」である期間が重なることは、日本年金機構のシステム上も色々な難しさを生む原因となっているようです。


●ねんきんネットの年金見込額照会への注意点


例えば、「ねんきんネット」で行える年金受給見込額試算の機能について。

昔は、特別支給の老齢厚生年金の受給者となってからも被保険者として働いている人は、ねんきんネットでの見込額照会ができませんでした。


最近ではかなり機能改善が進んでいるようで、特別支給の老齢厚生年金受給開始年齢以降厚生年金保険被保険者として働く人であっても、今後の報酬設定予定を入力することにより、今後の年金受給見込額試算ができるようになっています。


ただし、やはり、「被保険者」から「被保険者」兼「受給者」に立場が変わってからの2カ月間程は正しく「被保険者」兼「受給者」としての見込額試算ができない状況だそうです。


また、70歳になると、厚生年金の「被保険者」ではなくなり、厚生年金保険料は負担する必要はないものの、厚生年金加入の事業所で引き続き報酬を受けて働いていると、「厚生年金保険70歳以上被用者」というさらに妙な立場になって、引き続き在職老齢年金の対象者のままとなります。


このように、70歳以降は「70歳以上被用者」兼「受給者」という新しい立場になるのですが、70歳以上の方が今後報酬を変更した場合の年金受給見込額は「ねんきんネット」では試算できません。


年金受給見込み額をアウトプットした資料を確認したい場合は、年金事務所で今後の具体的な報酬設定を伝えることで、在職老齢年金の仕組みによって調整された後の年金受給見込み額を確認することができます。

(70歳以降はもう厚生年金保険料は支払いませんので、毎年度の年金額改定を除いては額面の年金額が変わることはないのですが、報酬設定を変更することによって、実際の年金受給額が変動することはあります。在職老齢年金の計算式における46万円という基準額も年度によって変わることがあるので注意が必要です。)


なお、ねんきんネットで年金見込額照会をする場合は、次のような点にも注意が必要です。

・ねんきんネットでは、例えば、64歳時に受給できる特別支給の老齢厚生年金額、65歳時に受給できる老齢厚生年金額+老齢基礎年金額、66歳時に受給できる老齢厚生年金額+老齢基礎年金額という具合に、年齢ごとに受給できる年金額合計および内訳が表示されています。(表および棒グラフ)


一方、65歳からもらえる老齢基礎年金・老齢厚生年金は65歳到達月の翌月分から支給されます。

したがって、ねんきんネットでは、65歳時にもらえる年金は11か月分(65歳到達月の翌月分から66歳到達月の前月分まで)が表示されています。


このことを知らないと、一般の方は混乱すると思います。

 

また、「被保険者」である期間と「受給者」である期間とが重なることによる難しさは、「ねんきん定期便」への年金額表示にも影響を及ぼします。

 

●60歳台前半経営者の「ねんきん定期便」の記載

経営者層によくある事例


特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になる1年前の誕生月に届く「ねんきん定期便」には、60歳台前半の年金受給見込額と65からの年金受給見込額が記載されています。


その後、特別支給の老齢厚生年金の受給できる年齢になった後も厚生年金保険被保険者として働いている人に届く「ねんきん定期便」にはもう年金受給額は記載されないこととなっています。(被保険者から受給者兼被保険者に変わったからです。)


しかし、中には、「私は特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になっていますが、届いたねんきん定期便には年金額が記載されています。」とおっしゃる方がおられます。


例えば、61歳から特別支給の老齢厚生年金受給開始年齢を迎えた男性経営者の元に、63歳の誕生月に届いた「ねんきん定期便」に、61歳からの特別支給の老齢厚生年金の年金額と65歳からの老齢厚生年金等の年金額が記載されていることがあります。


この場合の「ねんきん定期便」の記載には次の大きな特徴があります。


・60歳台前半の老齢厚生年金の年金額<65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額 となっている。


一般的には、ねんきん定期便の年金額の記載は、60歳台前半の老齢厚生年金の年金額=65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額となっている方が多いのですが、
 

60歳台前半の老齢厚生年金の年金額<65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額

となっている人がいるのはどうしてでしょうか。


これは、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢以降も厚生年金保険に加入した記録を加味して(60歳台前半および65歳以降の)年金額が計算されているということですね。


そして、年金受給者として「ねんきん定期便」が作成されてはいないということです。


つまり、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢を迎えてはいるけれども、まだ年金請求手続きを行っていないため、被保険者としての「ねんきん定期便」が作成されている、ということです。


経営者の場合、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止となる方がほとんどですから、もらえないのなら年金の請求もしない、と請求手続きを放置している方も多いのですね。


ですから、従業員や退職者の場合と違って経営者の場合は、60歳台前半の老齢厚生年金の年金額<65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額 となっている「ねんきん定期便」を受け取る人も結構おられます。

 

以上、長くなりましたが、「被保険者」と「受給者」の立場を兼ねるということが極めて変わった仕組みであり、そのことが一般の方への理解を難しくしており、また、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」にも影響を生じさせている、というお話でした。


最後までお読みいただきましてありがとうございました。

 

書籍増刷時の内容修正について こぼれ話


書籍「現役社長・役員の年金」の重版に際し、少しの修正程度なら可能とのことですので、2017年6月の発刊以降変更があった点について、修正をお願いしようと思っています。


変更点とはいってもそれほど大きなものではなくて、具体的には、次の二つです。


1. 厚生年金保険料率を平成29年9月以降の料率に変更しての社会保険加入シミュレーションに。

2. 残存厚生年金基金数の修正


特に、2に関する厚生労働省のデータを調べていますと、2017年度に入ってからも、解散した基金、代行返上した基金がありますね。


(代行返上というのは、国に代わって報酬比例部分の年金の一部を基金が支給していたのをやめることです。
基金が代行返上した後は、報酬比例部分の年金は国(厚生労働省)から支給となります。)


初版では、「平成29年3月末現在の基金数110のうち、解散内諾済基金が31、代行返上内諾済基金が69」としていたところを、2刷では「平成29年10月末現在の基金数54のうち、解散内諾済基金が12、代行返上内諾済基金が34」に修正してもらおうと思っています。


その他、「ねんきん定期便」の見方などについても補足したいところがあるのですが、詳しく解説すると、それだけでかなりページ数が増えてしまうと思いますので、今回は改定しないままとなると思います。


具体的には、昭和32年4月2日以後昭和34年4月1日以前生まれの男性や昭和37年4月2日以後昭和39年4月1日以前生まれの女性(特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が63
歳の人たち)に、62歳時に届く「ねんきん定期便」の記載内容について誤解が生じる可能性があるので、その点について丁寧に解説したいと思っています。(この点について詳しく触れている書籍は個人的にはまだ見たことがありません。)


機会があれば、このホームページやメルマガでいつか触れるかもしれません。


 

 

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「社外取締役」と社会保険加入について 


「社外取締役」は社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させなくてもよいのですか」との質問をいただくこともときどきあります。


質問の「社外取締役」が会社法第2条第15項の規定に基づいた「社外取締役」なのであれば、現に業務執行取締役でない等の要件を満たしている筈です。
http://houmukyoku.moj.go.jp/kyoto/page000077.pdf

実態が総合的に判断して社会保険に加入させなくてもよいような勤務状況であれば、加入させなくてもよいこととなります。


しかし、中小企業・小規模企業から「社外取締役」について相談を受ける場合は、会社法第2条の第15項に規定された「社外取締役」というわけではなく、また、実態を総合的に判断すれば社会保険に加入させるべき勤務状況となっていながら、単に会社独自の呼称として「社外取締役」と呼んでいるだけというケースもあるように感じます。


(常時その事業所に出社してくるわけではない取締役、とか、いわゆる「非常勤役員」と同様の使われ方をしていることがあります。)


その場合は、法人から労働の対象として報酬を受けているのであれば、社会保険に加入させるべきこととなる可能性があります。


社内の呼称によらず、実態に基づいて総合的に判断されることとなりますし、年金受給世代の方の場合は年金受給額に影響が生じる可能性もありますので、詳しくは、個別に
実態を伝えて年金事務所にご相談下さい。

 

12月決算企業様からのコンサルティングのお申込みが集中しています。


先週、私どもの年末年始休業期間をご案内いたしましたところ、


現在、12月決算企業様からのお試しコンサルお申込みを多数いただいております。


お申込みいただきました順番にご報告書をお届けいたします。


また、メール相談への対応も通常月よりは回答が遅れる可能性がございます。


12月20日までの営業時間内は奥野のスケジュールが詰まりましたので、電話対応もできないと思います。


ご了承下さいますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

 

うっかりミスによる届出もれ等により過去の年金の返還を命じられる事例も。

12月9日(土)10(日)は大阪で、社労士さん向けの社長の年金に関するセミナー講師を務めておりました。


今回は、岐阜県、兵庫県、和歌山県、三重県の社労士さんもご参加いただきました。


今までになく、ベテランの社労士さん、年金業務経験が長い社労士さんの割合が高かったです。


参加者のお話を聞いていると、やはり、うっかりミスによる届出もれや違法な手段によって年金を受給していた経営者が年金事務所調査で年金不正受給を指摘され、過去にさかのぼって一括返還または今後受け取る年金から差引くことによる返還を命じられた事例が各地で発生しているようですね。



12月16日(土)17日(日)には同じ講座を東京で開催するのですが、東京都、神奈川県、宮城県の社労士さんがご参加予定です。大阪よりも東京の方が人数はかなり多いようです。


また、12月15日(金)は、拙著の出版元である経営書院さんのビルの中で、某業界の専門新聞の編集記者さんから、「現役社長・役員の年金問題」に関する取材インタヴューを受けておりました。


拙著をお読みいただいて、中小企業経営者に多いよくある誤解事例などに興味を持っていただいた記者さんから取材の依頼があったもので、奥野の上京日程に合わせて日時を設定いただいたものです。


この新聞は、奥野が20代の時に会社員をしていたときによく目にしていました。

 

その時はもっぱら情報収集のために読んでいた記憶がありますが、まさか30年近く経ってから自分が掲載されるとは思ってもみませんでした。


ご縁というのは不思議なものだと思いました。


取材でお話しした内容のうち、広く経営者様にお役に立つトピックについては、またこのホームページかメルマガでもお伝えしたいと思います。

 

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営業時間:9:00〜18:00 (定休日:土日祝日)
担当:奥野 文夫 (おくの ふみお)

現在大変多くコンサルティングのお申込みをいただいており、無料電話相談は行っておりません。
(奥野の留守中にお電話いただき、伝言いただきましても、こちらから折り返しお電話をすることはできません。)

所長の奥野です。

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