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社長・役員の「総報酬月額相当額」の計算には特に注意が必要

厚生年金保険法上の報酬・賞与にあたらないお金は、年金支給停止額計算に影響しない

(2024年4月24日一部修正)

在職老齢年金計算に関するよくあ4つの間違いパターンは、社長・役員だけでなく、従業員にもよくみられるものです。


社長・役員の在職老齢年金受給シミュレーションにおいては、「総報酬月額相当額」の計算に特に注意が必要です。
 

「標準報酬月額」算定の基礎となる報酬や「標準賞与額」算定の基礎となる賞与に含まれない収入がいくらあっても、「総報酬月額相当額」は変わりません。ですから、年金の支給停止額計算にはまったく影響がありません。
 

例えば、中小企業のオーナー社長が会社から受けている現金には、次のように様々なものがあります。

・社長個人が会社に不動産を貸して得ている不動産収入

・社長から会社へ貸していたお金(会社からみれば役員借入金)の返済金として、会社から社長へ返してもらったお金

・社長個人が、役員ではなく株主として会社から受けた株式の配当
 

これらはどれも、社長が会社から「労働の対償」としてもらっているものではないため、厚生年金保険法上の報酬・賞与にあたりません。したがって、これらのお金をいくらもらっていたとしても、年金支給停止額計算にはまったく影響がありません。
 

そのほか、厚生年金保険の適用事業所ではない事業所から給与・賞与を受けているケースもあります(従業員数常時5人未満の個人事業主や厚生年金保険適用外の業種の個人事業主から受ける給与・賞与)。
 

このような事業所から受ける給与・賞与も「標準報酬月額」・「標準賞与額」には影響しませんから、「総報酬月額相当額」や年金支給停止額にはまったく影響がありません。

 

(1)65歳以上社長からよくある質問

「老齢厚生年金がほとんどカットされています。役員給与月額70万円を今期から30万円に下げたら、年金はいくらもらえるようになりますか?」

このような質問を社長から受けることはよくあります。

しかし、よくヒアリングしてみると、実態は次のようなケースも多いのです。

・役員給与月額70万円を30万円に下げる。

・従来から役員給与以外に毎月受けている通勤手当2万円は、引き続き受給することとする。

・そのほか、役員借入金の返済金として10万円を毎月会社から受け取ることとする。

・別法人からも代表取締役として役員給与月額30万円を受け取ることとする。
 

この社長の老齢厚生年金(報酬比例部分)が年額144万円だとすると、そのうちいくらもらえるようになるのでしょうか

まず、毎月2万円支給の通勤手当は、もともと全額厚生年金保険・健康保険の報酬月額に算入されるべきものです。

また、別法人から代表取締役として毎月受ける30万円も全額報酬月額に算入されるべきものです。

一方、役員借入金の返済金月額10万円は労働の対償として支給されるものではありませんので、報酬月額に算入されるべきものではありません。


以上より、この社長の報酬月額は合計62万円(役員給与月額30万円+通勤手当月額2万円+別法人から受ける役員給与月額30万円)となり、標準報酬月額は62万円のままです。

この場合、その月以前の1年間に賞与受給がなかったとしても、年金支給停止額(月額換算額)=基本月額となり、老齢厚生年金(報酬比例部分)は全額支給停止となるべきこととなります(令和6年度の場合)。

 

・年金支給停止額(月額換算額)=(基本月額12万円+総報酬月額相当額62万円-基準額50万円)÷2=12万円=基本月額12万円

 

他の法人が届け出るべき被保険者資格取得届等の届出書や本人が届け出るべき「二以上事業所勤務届」が違法に未提出のため、他法人における役員給与月額が届出もれとなり、老齢厚生年金(報酬比例部分)が不当に支給されてしまっているケースもみられます。
 

しかし、年金事務所の調査・指導等により是正が行われることによって、正しく支給停止されることとなります。

 

(2)報酬・賞与にあたるかどうかの確認が重要


基本月額や基準額を下げることはできないのですから、社長・役員として働きながら年金支給停止を避けるためには、総報酬月額相当額を下げるしか方法はありません。

今後の報酬月額や賞与支給額を減額して総報酬月額相当額を下げるのがストレートな方法です。

しかし、それだけでは手取り収入が少なくなるため、厚生年金保険法上の報酬・賞与にあたらないお金も会社から受けることを検討する人もいます。

そのこと自体に問題はないのですが、先ほどの事例のように、厚生年金保険法上報酬・賞与にあたるのにあたらないと勝手な判断をして、もらってはいけない年金をもらってしまっているケースが散見されます。

会社から受けるお金の一つ一つが、厚生年金保険法上の報酬・賞与にあたるものなのかどうかをきちんと確認することが、実務上重要です。

 

(3)賞与支給によって総報酬月額相当額が変わる場合と変わらない場合

社長・役員に対して毎月の定期同額給与以外に、年3回以下支給の事前確定届出給与が支給されているケースもあります。

事前確定届出給与も役員給与の一種ですが、年3回以下支給の事前確定届出給与は、厚生年金保険・健康保険では賞与に該当します。

1回あたりの事前確定届出給与支給額が高額なケースもあります。


賞与(年3回以下支給の事前確定届出給与等)の支給によって「その月(賞与支給月)以前の1年間の標準賞与額の総額÷12」が変わると、標準報酬月額に変動がなかったとしても、総報酬月額相当額が変わりますので、年金支給停止額が変わることがあります。


【賞与支給によって総報酬月額相当額が変わる例】

・前年の12月に賞与を支給しなかったが、本年の12月に賞与を支給した
・前年の12月に賞与を100万円支給し、本年の12月に賞与を50万円支給した

・前年の12月に賞与を支給し、本年は10月に賞与を支給した
 

【賞与支給によって総報酬月額相当額が変わらない例】

・前年の12月に賞与を100万円支給し、本年の12月に賞与を100万円支給した
・前年の12月に賞与を160万円支給し、本年の12月に賞与を180万円支給した

(厚生年金保険の1月あたりの標準賞与額の上限は現在150万円のため)

社長・役員の場合、年金支給書が届いてから役員給与設定を変更するのでは遅すぎる理由

在職老齢年金制度によって年金が支給停止となることを知った経営者の中には、役員給与月額を下げればすぐに年金をもらえるようになると思っている人も多いです。

しかし、従業員の場合と異なり経営者の場合は、会社の決算日および本人の生年月日により、いつから年金をもらえるようになるかが異なります。

 

(事例)

昭和291020日生まれのA社長(男性)。老齢厚生年金(報酬比例部分)144万円。報酬月額62万円・賞与なし。会社の決算日は3月末日。

 

A社長は61歳時に特別支給の老齢厚生年金の請求書を提出しましたが、高額報酬のため年金はずっと全額支給停止でした。
 

令和110月上旬(65歳到達月の上旬)に、65歳からの年金請求書(ハガキ)が郵送されてきたのを機に、年金事務所の年金相談を利用しました。 

そこで、65歳からは在職老齢年金の基準額が47万円にアップすることを知り、今後は報酬月額を下げて年金を全額受け取りたいと考えました。

報酬月額を34万円に下げれば、65歳からは老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金も全額もらえるとの説明を受けました。

・年金支給停止額(月額換算額)
=(基本月額+総報酬月額相当額-基準額47万円)÷2
{老齢厚生年金(報酬比例部分)144万円÷12+(標準報酬月額34万円+その月以前の1年間の標準賞与額の総額0円÷12)-基準額47万円}÷20

 したがって、年金支給停止なし。

 

それでは、A社長はいつから年金を全額もらえるようになるのでしょうか?

 

(1)役員給与を変更できる時期は限られている


従業員の給与と異なり役員給与の変更時期は、原則として事業年度開始の日から3か月以内と限られています。


A社長の会社の決算日は3月末日ですから、役員給与を変更する場合は原則として6月末日までに行う必要があります。


年金受給を考えるときに、自分の誕生日だけが頭にあり、会社の決算日については意識していない社長が多いようです。しかし、社長・役員の年金受給を考える場合は、誕生日よりも会社の決算日の方が重要です。 


なぜなら、年金をもらう手続きをする前に、年金をもらえるような役員給与設定に変更しておく必要があるからです。


65歳からの年金の請求書(ハガキ)が届いた令和110月上旬になってから、A社長が年金を全額もらうために報酬月額を下げたいと思っても、会社の決算日が3月末日ですので、もう役員給与変更可能な時期を過ぎてしまっていました。

そこで、次期の定時株主総会等(令和25月開催)で、令和26月支給分以降1年間の役員給与月額を34万円に引き下げる決議をすることとなったとしましょう。

 

(2)報酬を下げてもすぐには年金をもらえない


令和26月支給分から報酬月額を34万円に引き下げても、A社長はすぐには年金を全額もらえるようになりません。


結論からいうと、全額もらえるようになるのは、令和29月分の年金からです。これは、なぜでしょうか。


A社長の報酬月額は当初62万円でしたので、厚生年金保険の標準報酬月額は62万円でした。


A社長が令和26月支給分から報酬月額を34万円に下げると、報酬月額33万円以上35万円未満ですので、標準報酬月額は34万円に下がります。

しかし、報酬月額を下げても、すぐにその月から標準報酬月額が下がるわけではありません。


報酬月額を(原則として標準報酬月額等級で2等級以上)引き下げて、引き下げた後の報酬月額を3か月連続で支給した後、会社が「報酬月額変更届」を提出することで、報酬月額を引き下げた月から数えて4か月目から、やっと標準報酬月額が下がります。

A社長が令和26月・7月・8月に報酬月額34万円を受けたら、令和29月から標準報酬月額・総報酬月額相当額が34万円に下がり、令和29月分の年金から全額もらえるようになります。

 

(3)社長・役員の年金受給準備(役員給与設定の変更)は早めに行う必要がある

結局A社長は、令和111月分から令和28月分までの10か月分の年金(合計120万円)をもらえなくなってしまいます。

年金請求書が送られてくる令和110月になってからではなく、その前に、令和15月開催の定時株主総会等で、令和16月支給分から役員給与月額を34万円に引き下げることを決めておけば、令和19月から標準報酬月額が34万円に下がっていたので、令和111月(65歳到達月の翌月)分から、年金を全額受給できたのでした。

 

年金請求書が届いてから年金受給のことを考えるのでは遅すぎる。このことを、社長・役員は理解しておく必要があります。

さらに、年金は偶数月に前々月分・前月分が後払いで支給されます。


令和29月分の年金が支給されるのは令和21015日です(事務処理のスケジュールにより、11月以降の支給となる可能性があります)。

 

なお、65歳までの特別支給の老齢厚生年金の請求書(事前送付用)は、65歳からの老齢基礎年金・老齢厚生年金の請求書(ハガキ)と比べると、少し早い時期(支給開始年齢となる約3か月前)に届きます。


それでも、会社の決算日(役員給与変更期限)と生年月日の関係に注意が必要なことは変わりません。



その他、例えば次のような場合も、年金請求書が届く前に、年金請求準備として適切なタイミングで役員給与設定を変更しておく必要があります。
 

・障害厚生年金(3級)を受給中の社長・役員が65歳からは老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給したいとき

・社長・役員が65歳からの老齢厚生年金を繰下げたいとき


65歳からの年金の選択替えや繰下げを検討する社長・役員の多くが、やはり、65歳からの年金の請求書(ハガキ)が届いてから検討を始めます。


しかし、高額報酬の社長・役員が障害厚生年金受給から老齢基礎年金・老齢厚生年金受給に選択替えして65歳到達月の翌月分から老齢厚生年金(報酬比例部分)も受給したい場合や、70歳まで老齢厚生年金を繰下げて年金額を1.42倍に増やしたい場合は、年金請求書(ハガキ)が届いてから考えるのでは、タイミングが遅すぎます。

 

また、中小企業では、社長の配偶者も役員として高額の役員給与を受けているケースがあります。


社長が65歳からの老齢厚生年金だけでなく配偶者加給年金額も受給したい場合、生計維持要件を満たすために配偶者の役員給与額を事前に減額しておくべき事例もあります。

 

 

以上、社長・役員の年金受給について知っておきたいことの一部について、ポイントをお伝えしました。

 

その他、社長・役員の年金受給に際しては、次のようなことも影響してきますので、ご注意ください。

・在職支給停止への誤解が原因で、老齢厚生年金の繰下げを予定している人が多い

・事業承継が進まずに、70歳以降も働き続ける社長が増えている

・退任時の最終報酬月額に基づいて役員退職慰労金が算定されるような規程を作成している会社が多い

・社長が亡くなった後、配偶者が事業を引き継ぐケースも多い 

 

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