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(2026年8月31日)
【よくある質問】年金を全額受給するための給与設定は遺族年金にも影響しますか?
給与を下げると配偶者への遺族厚生年金がすごく少なくなるのでしょうか。
【ポイント】
●最後の数年だけ報酬月額を下げたとしても、それまでの加入期間に係る標準報酬月額等まで低くなるわけではないため、遺族厚生年金額が大きく減るという仕組みではない
●65歳以上で自身の老齢厚生年金を受給できる配偶者は、遺族厚生年金との支給調整や在職老齢年金制度による支給停止にも注意が必要
【解説】
年金受給者の厚生年金保険加入時の給与設定と老齢厚生年金額に関するよくある質問への回答は、以前お伝えしました。
●年金受給者が厚生年金保険に加入し続けることによる年金増額効果に関するよくある誤解とは
同様に、「報酬比例部分」の年金額の計算方法や「平均標準報酬月額・平均標準報酬額」の意味するところをご存じない方が多いことが原因で、遺族厚生年金に関して昔からよく受ける質問があります。
次のような質問です。
「65歳代表取締役です。
年金支給開始年齢を迎えるにあたり、老齢厚生年金(報酬比例部分)が給与との調整で支給停止とならないように、報酬月額を下げています。
私に万一のことがあった場合、配偶者(65歳・取締役)に遺族厚生年金が支給されると思いますが、報酬月額を下げたまま亡くなったら、配偶者に支払われる遺族厚生年金額は、すごく少なくなるのでしょうか。」
代表取締役の配偶者や子から同様の質問を受けるケースも多いです。
このような質問への回答は、以下の通りです。
遺族厚生年金の年金額は、原則として、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)×3/4です。
(注)65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)×3/4」と「亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)×1/2+自身の老齢厚生(退職共済)年金×1/2」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
老齢厚生年金(報酬比例部分)は、次の計算式で計算されます。
・老齢厚生年金(報酬比例部分)=平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの厚生年金保険加入期間の月数+平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の厚生年金保険加入期間の月数
(注)平均標準報酬月額とは:平成15年3月以前の厚生年金保険加入期間について、計算の基
礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額。
平均標準報酬額とは:平成15年4月以降の厚生年金保険加入期間について、計算の基礎
となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割っ
て得た額。
なお、実際の年金額の計算にあたっては、過去の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率を乗じて計算します。
上記計算式から分かる通り、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額は、最後の数年だけの標準報酬月額によって決まるものではなく、厚生年金保険の加入期間や、その間の各月の標準報酬月額・標準賞与額をもとに計算されます。
したがって、最後の数年だけ報酬月額を下げた場合、その期間の標準報酬月額が低くなった分は年金額に影響しますが、それまでの加入期間に係る標準報酬月額等まで低くなるわけではありません。
このため、報酬月額を下げたまま亡くなったからといって、それだけで老齢厚生年金(報酬比例部分)がすごく少なくなるわけではありません。
したがって、それをもとに計算される遺族厚生年金も、報酬月額を下げなかった場合と比べて、すごく少なくなるわけではありません。
例えば、給与を65万円(標準報酬月額65万円)から50万円(標準報酬月額50万円)に下げ、標準報酬月額が15万円低い状態が3年間続いたとします。
この場合、老齢厚生年金(報酬比例部分)への影響額は、15万円×再評価率0.921×5.481/1000×36月=年額2万7,259円です(令和8年度の場合)。
その3/4を遺族厚生年金の額とする場合、遺族厚生年金への影響額は年額2万444円、月額換算では約1,704円となります。
このように、最後の数年間の報酬月額を下げれば、その分は遺族厚生年金にも影響しますが、最後の給与だけをもとに遺族厚生年金全体が計算し直されるわけではありません。
ただし、65歳以上の配偶者が自身の老齢厚生年金を受給できる場合は、自身の老齢厚生年金が優先して支給されます。
そして、上記の方法で計算された遺族厚生年金の額が自身の老齢厚生年金の額を上回る場合には、その差額が遺族厚生年金として支給されます。
一方、自身の老齢厚生年金の額が遺族厚生年金の額以上である場合には、遺族厚生年金は全額支給停止となります。
また、配偶者自身の老齢基礎年金は、配偶者自身の「老齢厚生年金(+差額支給の遺族厚生年金)」と併給できます(これらのことは、報酬月額を下げた場合も下げなかった場合も同じです)。
なお、死亡日において、亡くなった方に配偶者が生計維持されていたこと(=生計同一+原則として配偶者の前年の年収が850万円未満または前年の所得が655.5万円未満)が、遺族厚生年金受給の要件です(このことも、報酬月額を下げた場合も下げなかった場合も同じです)。
この年収要件は、令和10年4月からの遺族厚生年金の改正施行後に亡くなった場合も、60歳以降で死別した人が遺族厚生年金を受ける場合には、原則として、亡くなった人の死亡日において満たしておく必要があります。
中小企業経営者が亡くなり、遺された配偶者が引き続き法人役員として働きながら、自身の老齢基礎年金+自身の老齢厚生年金+差額支給の遺族厚生年金を受けるケースも多いですが、自身の老齢厚生年金のうちの報酬比例部分については、在職老齢年金制度の対象となりますので、報酬比例部分の年金額・給与設定によっては、支給停止部分が生じる可能性があります。
この場合、自身の老齢厚生年金(報酬比例部分)に支給停止部分が生じたとしても、その分だけ差額支給の遺族厚生年金額が増えることはありませんので、注意が必要です。
■最後の数か月の給与に基づいて支給額が決まる制度もある
健康保険の傷病手当金や出産手当金の支給額は、原則として、「支給開始日以前の12か月間の各月の標準報酬月額の平均額÷30」×2/3です(支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、別の計算方法となります)。
雇用保険のいわゆる失業給付(基本手当)の額は、「離職前の最後の6か月間の賃金(賞与を除く)の総額÷180」に基づいて計算されます。
このように、労働・社会保険には、最後の数か月の給与に基づいて支給額が決まる制度があります。
そのようなこともあって、老齢厚生年金や遺族厚生年金についても、厚生年金加入期間の最後の方に数年でも報酬月額を下げると、年金額に大きな影響が出るのではないか、と心配される方が多いのかもしれません。
(ポイント)
●最後の数年だけ報酬月額を下げたとしても、それまでの加入期間に係る標準報酬月額等まで低くなるわけではないため、遺族厚生年金額が大きく減るという仕組みではない
●65歳以上で自身の老齢厚生年金を受給できる配偶者は、遺族厚生年金との支給調整や在職老齢年金制度による支給停止にも注意が必要

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