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令和4年度(2022年度)からの在職定時改定による老齢厚生年金額の増加

在職定時改定により毎年10月分から老齢厚生年金額が改定される

(2022年4月30日)

在職定時改定とは、65歳から70歳になるまでの厚生年金保険被保険者の老齢厚生年金額が毎年10月分から増える、というしくみです。
令和2年年金法改正により令和4年度から新たに始まることとなった制度です。


65歳までの特別支給の老齢厚生年金や70歳からの老齢厚生年金には、この在職定時改定のしくみは適用されません。


また、65歳以降の老齢基礎年金にも、在職定時改定の仕組みは適用されません。




令和3年度までは、65歳以降も厚生年金保険に加入しても、65歳以降の加入記録が老齢厚生年金の額に反映されるのは、次のいずれかのときに限られていました。



・退職時改定:65歳から70歳になるまでの間に退職して1月が経過したとき(退職月の前月まで(退職日が月末の場合は退職月まで)の厚生年金保険加入記録に基づき、退職月の翌月分から年金額改定)

・70歳時改定:70歳になったとき(70歳到達月の前月までの厚生年金保険加入記録に基づき、70歳到達月の翌月分から年金額改定)



令和4年度からは、これらのタイミング以外にも、「在職定時改定」により、65歳以上で在職中の人の老齢厚生年金額が毎年定時に改定されることとなりました。



具体的には、その年の9月1日(基準日)において厚生年金保険被保険者である場合に、基準日の属する月前(つまり、その年の8月まで)の厚生年金保険加入記録に基づいて老齢厚生年金額が改定されます。



年金額が改定されるのは、基準日の属する月の翌月(その年の10月)分からです。



在職定時改定による老齢厚生年金額の増額により、60歳台後半の在職老齢年金制度による年金支給停止額計算に用いられる基本月額、つまり、「老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12」の額も毎年10月分から増えます。



 

在職定時改定により老齢厚生年金がどのくらい増えるのか

(2022年4月30日)

在職定時改定による老齢厚生年金額の増額により、60歳台後半の在職老齢年金制度による年金支給停止額計算に用いられる基本月額、つまり、「老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12」の額も毎年10月分から増えます。



在職定時改定により老齢厚生年金(報酬比例部分)がどのくらい増えるかは、次の計算式でおおよそ予想できます(基金代行額・賞与がなく、標準報酬月額の変動もないケース)。

・老齢厚生年金(報酬比例部分)の概算増加額=標準報酬月額×再評価率(令和4年度は0.936)×5.481/1000×新たに老齢厚生年金額に反映することとなる厚生年金保険加入期間の月数



なお、65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間の月数が480か月未満の人が65歳到達月以降も厚生年金保険に加入すると、480か月に達するまでは老齢厚生年金(経過的加算部分)も増えます。


老齢厚生年金(経過的加算部分)の概算増加額は、次の計算式で求めることができます。

・老齢厚生年金(経過的加算部分)(注)の概算増加額=約1,600円×新たに老齢厚生年金額に反映することとなる厚生年金保険加入期間の月数


(注)老齢厚生年金(経過的加算部分)の正確な計算式は、は次の通りです(令和4年度)。
・老齢厚生年金(経過的加算部分)=1,621円×厚生年金保険加入期間の月数-老齢基礎年金の満額777,8000円×(昭和36年4月1日以降の)20歳以上60歳未満の厚生年金保険加入期間の月数/480か月


「高齢期の就労が拡大する中、就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映することで、年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実を図る」ことが、在職定時改定導入の趣旨です。


在職定時改定の導入により、60歳台後半の会社員(従業員)等が、厚生年金保険に加入していることによる年金増額効果を早期に実感できるようになります。


しかし、社長の多くは、在職定時改定により老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額が毎年増えたとしても、役員給与設定を変更して総報酬月額相当額を引き下げない限り引き続き全額支給停止のままの人が多いです。


働きながら60歳台後半の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給したいと考える社長様は、事前に役員給与設定を変更しておく必要があることだけでなく、令和4年度以降在職
定時改定によって毎年10月分から在職老齢年金計算における基本月額が増えることについても知っておく必要があります。


 

初回の在職定時改定により老齢厚生年金額に反映する期間は人により異なる

最初に迎える在職定時改定において老齢厚生年金額に反映する厚生年金保険加入期間の月数は、65歳到達月(1日生まれ以外の人は誕生月。1日生まれの人は誕生日の属する月の前月)が何月かにより異なります。


特に令和4年度の在職定時改定では、令和4年9月1日において厚生年金保険被保険者となっている60歳台後半の人が対象となるため、初めて老齢厚生年金額に反映することとなる期間の月数(65歳到達月から令和4年8月までの月数)が多くなり、老齢厚生年金額の増え方が大きくなる人もいます。


また、その期間の各月の標準報酬月額・標準賞与額が高かった人ほど、老齢厚生年金額の増え方が大きくなります。


●年金全額受給を目指す場合の役員給与設定~現実的な対応のしかた


ただ、60歳台後半の年金額の全額受給を目指す場合であっても、毎年総報酬月額相当額を少しずつ上げていくのではなく、次のようにして役員給与設定を決める方が、実務上は管理がしやすいでしょう。


・65歳前に、現在の役員給与設定のまま70歳まで働き続けたと仮定した場合の70歳到達月の翌月分以降の老齢厚生年金(報酬比例部分)の見込額を年金事務所発行の制度共通年金見込額照会回答票で確認し、その額を用いて、会社の決算月や本人の生年月日を勘案して適切なタイミングで、65歳到達月の翌月を含む職務執行期間の役員給与設定を決める。


・職務執行期間の途中で年度が変わり在職老齢年金制度の基準額が下がったとしても年金支給停止額が生じないように、余裕を持って総報酬月額相当額が低めになるような役員給与設定とする(基準額は、年度により1万円単位で変動する可能性があります)。



70歳到達月の翌月分以降の老齢厚生年金(報酬比例部分)の見込額が記載された年金事務所発行の制度共通年金見込額照会回答票は、年金復活プランのお試しコンサル(完全返金保証付きの導入サービス)にてお渡ししております。


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在職定時改定は65歳から70歳になるまでの厚生年金保険加入者が対象 70歳以降に在職定時改定が適用されない理由

「在職定時改定」については60歳台後半の多くの経営者に影響が生じますので、質問も出てきています。


今日は、以下の質問への回答をお伝えします。



(質問)「在職定時改定」は65歳以降も代表取締役等として働いていると、毎年10月分から老齢厚生年金額が増えるしくみだと聞きました。

70歳以降も代表取締役等として働いていると、毎年10月分から「在職定時改定」が行われ、老齢厚生年金額が増えるのでしょうか。



(回答)いいえ。70歳以降は「在職定時改定」は行われません。



(理由)
令和4年度からの「在職定時改定」については、令和4年4月1日改正施行の厚生年金保険法第43条2項に定められています。



この条文で、在職定時改定の対象者(10月分からの老齢厚生年金が改定される人)は、その年の9月1日現在厚生年金保険被保険者である人、と定められています。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(参考条文:令和4年4月1日以降の厚生年金保険法第43条第2項)

受給権者が毎年9月1日(以下この項において「基準日」という。)において被保険者である場合(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除く。)の老齢厚生年金の額は、
基準日の属する月前の被保険者であつた期間をその計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。

ただし、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が一月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


厚生年金保険被保険者となるのは、厚生年金保険の適用事業所で厚生年金保険に入るべき働き方をしている70歳未満の人です(厚生年金保険法第9条)。


70歳に達したとき(70歳の誕生日の前日)は、その日に厚生年金保険の被保険者資格を喪失します(厚生年金保険法第14条第5号)


したがって、70歳以上の人は在職定時改定の対象外となります。
なお、70歳以上の人は、厚生年金保険料もかかりません。


(参考1)
厚生年金保険被保険者が70歳に達したときは、最後の在職定時改定によって年金額の基礎とされた期間(8月まで)の翌月(9月)以降70歳到達月の前月までの厚生年金保険加入記録が年金額に反映されて、70歳到達月の翌月分から老齢厚生年金が改定されます。


「在職定時改定」とは違い、この「70歳時改定」は、本人の70歳到達月が何月かにより年金改定月が異なります。


(70歳時改定は、「退職時改定」の一種で、令和3年度以前から行なわれているものです。
「退職時改定」については、令和4年4月1日改正施行の厚生年金保険法では第43条第3項に規定されています)。



(参考2)
70歳以降も代表取締役等として役員給与を受ける人は、厚生年金保険法第46条の「70歳以上の使用される者」(いわゆる「70歳以上被用者」のことです)に該当しますの
で、在職老齢年金制度により老齢厚生年金(報酬比例部分)と役員給与の調整が行われます(厚生年金保険法第46条)

なお、70歳以上被用者の年齢に上限はありません。


 

65歳前の特別支給の老齢厚生年金に、在職定時改定は適用されますか?

(2022年7月22日)

(質問)
65歳前からもらえる特別支給の老齢厚生年金にも在職定時改定は適用されますか?

(回答)

いいえ。65歳前の特別支給の老齢厚生年金には、在職定時改定は適用されません。


●(参考)根拠条文

・厚生年金保険法附則第9条(特例による老齢厚生年金の額の計算等の特例)
第43条第2項(注:在職定時改定)及び第44条(加給年金額)の規定は、附則第8条の規定による老齢厚生年金(注:特別支給の老齢厚生年金)の額については、適用しない。


https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115_20220401_502AC0000000040
 

老齢厚生年金を繰上げて65歳前に受けている間に、在職定時改定は適用されますか?


(質問)
65歳からもらえる老齢厚生年金を繰上げて65歳前に受けている間に、在職定時改定は適用されるのでしょうか。


(回答)
65歳前に繰上げ受給中の老齢厚生年金に、在職定時改定は適用されません。


(注)
1-1:特別支給の老齢厚生年金をもらえる世代の人が、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢前に繰上げ請求する場合、65歳からの老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方を繰上げることとなります。

1-2:
特別支給の老齢厚生年金をもらえる世代の人が、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢到達以後に繰上げ請求する場合は、老齢基礎年金のみを繰上げることとなります。

1-3:特別支給の老齢厚生年金をもらえない世代の人が繰上げ請求する場合は、65歳からの老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方を繰上げることとなります。


上記1-1や1-3のケースで65歳前に繰上げ受給中の場合、実際の年齢は65歳未満ですが、受給している年金は65歳からの老齢基礎年金および老齢厚生年金が繰上げ減額された年金です。
そのうちの、繰上げ受給の老齢厚生年金(65歳前に支給されるもの)に在職定時改定が適用されるのか、という質問ですが、適用されません。



なお、上記1-2のケースは、繰上げ受給して65歳までに受給できるのは老齢基礎年金だけです。
繰上げしないで原則通り65歳から受給する場合であっても、老齢基礎年金に在職定時改定は適用されません。
繰上げ受給する老齢基礎年金も同様に在職定時改定は適用されません。



●(参考)根拠条文
・厚生年金保険法附則第15条の2 (老齢厚生年金の支給要件等の特例)

第43条第2項(注:在職定時改定)及び第3項(注:退職時改定)の規定の適用については、当分の間、同条第2項(注:在職定時改定の規定)中「受給権者」とあるのは「受給権者(附則第7条の3第3項(上記1-3のケースの繰上げ)又は第13条の4第3項(上記1-1のケースの繰上げ)の規定による老齢厚生年金の受給権者にあつては、65歳に達しているものに限る。)」と、同条第3項(注:退職時改定の規定)中「受給権者」とあるのは「受給権者(附則第7条の3第3項(注:上記1-3のケースの繰上げ)の規定による老齢厚生年金の受給権者にあつては65歳に達しているものに限るものとし、附則第13条の4第3項(注:上記1-1のケースの繰上げ)の規定による老齢厚生年金の受給権者にあつては附則第8条の2各項の表の下欄に掲げる年齢に達しているものに限る。)」とする。


https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115_20220401_502AC0000000040
 

老齢厚生年金の繰下げ待機中に、在職定時改定は行われますか?

(質問)
65歳からの老齢厚生年金を繰り下げるつもりで待機している場合も、在職定時改定は行われますか?


(回答)
65歳からの老齢厚生年金を66歳以降の任意の月まで繰り下げるつもりで繰下げ待機している間(つまり、実際に老齢厚生年金を受給していない状態の間)は、在職定時改定は適用されません。


 

老齢厚生年金の繰下げ待機中に、厚生年金保険加入期間240月以上となったら、加給年金額は支給されますか?


(質問)
65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間が240月に満たないため、(年金が全額支給停止とならないような報酬設定に事前に変更しておいたとしても)65歳からの老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されません。

70歳まで厚生年金保険に加入して働く予定であり、67歳到達年度の8月までに厚生年金保険加入期間20年以上となります(その時点でも65歳未満の配偶者を生計維持している予定です)。

この場合、老齢厚生年金を繰下げ待機中であっても、67歳到達年度の在職定時改定により、10月分から配偶者加給年金額を受給できるようになるのでしょうか。

 

 

(回答)

老齢厚生年金を繰下げ待機中は、配偶者加給年金額は受給できません。

なお、老齢厚生年金の繰下げ待機中は在職定時改定が行われないため、問のケースでは67歳到達年度において、(実際の厚生年金保険加入期間は240月以上となっても)厚生年金保険加入期間240月以上の老齢厚生年金を受給できる状態とはなりません。 

 

在職定時改定によって老齢厚生年金がいくら増えるかの確認方法

(2023年4月4日一部修正)(2022年7月28日)
(質問)
在職定時改定によって老齢厚生年金がいくら増えるかは、年金事務所の年金相談でわかるのでしょうか。


(回答)
先週ある年金事務所の窓口で照会しましたところ、在職定時改定の年見込額試算はまだできないとのことでした。
2022年8月末以降見込額試算ができるようになる予定、との回答でした。
(詳しくは、年金事務所にご照会ください)




(質問)
在職定時改定の見込額試算対応がされていない令和4年7月の時点で、在職定時改定が適用された後の年金額(令和4年10月分の年金支給見込額)を知りたい場合は、どうすればよいでしょうか


(回答)
年金事務所の年金相談で、例えば、令和4年9月1日(注)に「退職した場合の」令和4年10月分以降の年金見込額(額面)を試算してもらえばよいでしょう。

(注)退職日の翌日に厚生年金保険の被保険者資格を喪失することとなります。
厚生年金保険の被保険者期間に算入されるのは、被保険者資格を喪失した月の前月までです。
したがって、9月1日~9月29日までに退職した場合は、退職日の翌日=資格喪失日が9月となるため、資格喪失月(9月)の前月(8月)まで被保険者期間に算入されます。
8月31日に退職した場合も、
退職日の翌日=資格喪失日が9月となるため、資格喪失月(9月)の前月(8月)まで被保険者期間に算入されます。
 


9月1日に退職して、1月経過しても再度厚生年金保険被保険者にならない場合は、退職月の翌月分(つまり10月分)から老齢厚生年金の退職時改定が行われます。


この場合も、退職月の前月まで(つまり8月まで)の厚生年保険加入記録に基づいた年金額改定が行われますので、9月1日に厚生年金保険被保険者として在職しており在職定時改定が行われた場合と同じ年金見込額が試算できることとなります。

ただし、この方法で試算したものは、退職した場合の試算です。
したがって、高額報酬の経営者の場合でも老齢厚生年金(報酬比例分)が全く支給停止とならない試算結果が出てきます。
ですから、この方法は、10月分以降の額面の年金額を確認するためだけに使えるものです。


試算で得られた老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額を用いて手計算をしないと、10月以降在職している場合(10月以降も厚生年金保険被保険者であり続ける場合)に、在職定時改定によって増額された老齢厚生年金(報酬比例部分)と各月の総報酬月額相当額との調整によって、各月分の在職老齢年金としていくら受給できるかは算出できませんので、ご注意ください。

 

なお、令和5年4月分以降の年金額は物価・賃金の変動により変わる可能性があります。
(注)令和5年度年金額はこちら

また、今後実際に退職して退職時改定が行われた後の年金額、令和5年度以降毎年10月分からの年金額や70歳到達月の翌月以降の年金額も変わります。




(質問)在職定時改定により老齢厚生年金も額が変更された場合、通知が送られて来るのでしょうか。


(回答)
「支給額変更通知書」により、在職定時改定の変更内容と、老齢厚生年金の額が変更された旨の通知が届くこととなっています。


 

在職定時改定の対象者かどうかは、いつ確定するのでしょうか

(2022年8月5日)


(質問)
在職定時改定の対象者かどうかは、いつ確定するのでしょうか。


(回答)
毎年9月1日に対象者となることが確定するのが原則です。


在職定時改定は、老齢厚生年金を受給する権利がある人が「基準日」(9月1日)において厚生年金保険被保険者である場合(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除き
きます)に行われることとなっているからです。


(注*)例外的に、被保険者資格を喪失した日から再度被保険者資格を取得した日までの間に基準日(9月1日)があり、かつ、資格喪失日から再度資格を取得した日までの期間が1月以内である場合にも在職定時改定は行われます。
(したがって、9月1日よりも後に、在職定時改定の対象者となることが確定するケースもあります)

 

・参考:(条文)厚生年金保険法第43条第2項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115_20220401_502AC0000000040


(比較)退職後1月経過しても厚生年金保険被保険者資格を再取得しなかった場合は、退職時改定(厚生年金保険法第43条だ3項)が行われます(退職月の前月までの厚生年金保険加入記録を反映させて、退職月の翌月分から年金額改定)。

 

在職定時改定により配偶者加給年金額が加算される場合の生計維持要件はいつが認定日ですか

(質問)
65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間が240月未満のため、老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されておりません。

在職定時改定により8月までの厚生年金加入記録を算入してくれるようになる結果、10月分から厚生金保険加入期間240月以上の老齢厚生年金をもらえるようになります。


この場合、配偶者加給年金額が支給されるための「生計維持要件」(生計を同じくしており、かつ、原則として「配偶者の前年の年収が850万円未満または配偶者の前年の所得が655.5万円未満)を満たしているかどうかは、いつの時点で認定が行なわれるのでしょうか(いつの時点が認定日となるのでしょうか)。


(回答)
基準日(9月1日)時点が認定日となります。



ただし、上記(注*)の場合は、再度厚生年金保険被保険者の資格を取得した日が認定日となります。



・参考:(通知)厚生労働省年金局事業管理課長名
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220707T0010.pdf

在職定時改定により配偶者加給年金額が加算される場合の「厚生年金保険加入期間240月以上」と第1号・第2号・第3号・第4号厚生年金被保険者

(2022年8月10日)
(質問)
60歳台後半において在職定時改定により厚生年金保険加入期間240月以上となります(民間会社勤務期間・公務員期間・私立学校教職員期間全部合わせて240月以上)。


加給年金額が加算される要件の一つである「厚生年金保険加入期間240月以上」とは、次の各種別の被保険者としての厚生年金保険加入期間を合わせて240月以上あればよいのでしょうか。それとも、第1号なら第1号だけで240月以上ないとだめなのでしょうか。


・第1号厚生年金被保険者(第1号・第2号・第3号以外の厚生年金保険被保険者)
・第2号厚生年金被保険者(国家公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険被保険者)
・第3号厚生年金被保険者(地方公務員
共済組合の組合員たる厚生年金保険被保険者
・第4号厚生年金被保険者(私立学校教職員共済制度の加入者たる
厚生年金保険被保険者


(回答)
第1号から第4号の各期間を合わせて厚生年金保険加入期間240月以上であればOKです。

・根拠:(老齢厚生年金に係る加給年金額の特例)厚生年金保険法第78条の27


なお、二以上の種別の厚生年金保険被保険者期間がある人の場合、最も早い日において受給権を取得した老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。

最も早い日において受給権を取得した老齢厚生年金が複数ある場合は、期間が最も長い種別の老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。

期間が最も長い種別の老齢厚生年金が複数ある場合は、第1号、第2号、第3号、第4号の順でどの老齢厚生年金に加入年金額が加算されるかが決まります。


・根拠:(二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る老齢厚生年金に係る加給年金額の特例の適用に関する読替え等)厚生年金保険法施行令第3条の13

 

在職定時改定と老齢厚生年金(経過的加算部分)を計算する場合の「厚生年金保険加入期間480月」の上限と第1号・第2号・第3号・第4号厚生年金被保険者

(質問)
「65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間が480月に満たない人が、65歳到達月以降厚生年金保険に加入すると、在職定時改定により、老齢厚生年金(報酬比例部分)が増えるだけでなく、老齢厚生年金(経過的加算部分)も、厚生年金保険加入期間480月になるまでは増額される」との記事を読みました。


この「480月」というのは、第1号~第4号のすべての厚生年金保険被保険者種別の期間を合わせて480月が上限でしょうか。


(回答)
いいえ。

経過的加算部分を計算する場合の厚生年金保険加入期間480月の上限は、種別ごとに適用される上限です。

第1号なら第1号だけで上限480月が適用されます。

 

在職定時改定による老齢厚生年金額改定を知らせるために22年11月上旬に発送された「支給額変更通知書」

(2023年4月4日一部修正)(2022年11月7日追記)

 

65歳以上70歳未満で厚生年金保険に加入して働いている人で、老齢厚生年金を受給している人は、10月分(12月支給分)から額面の老齢厚生年金額が増えます。


令和2年の法改正により、令和4年度から「在職定時改定」というしくみが新たに導入されることとなったからです。


老齢厚生年金は65歳到達月の翌月分から支給されますが、老齢厚生年金の請求をしたときに年金額計算の基礎とされた厚生年金保険加入記録(厚生年金保険加入期間の月数およびその期間の標準報酬月額・標準賞与額)は、65歳到達月の前月までのものです。

 

65歳到達月以降の厚生年金保険加入記録は、その後退職して厚生年金保険の被保険者資格を喪失して1月経過したとき(退職月の翌月分から年金額改定)か、70歳に到達して厚生年金保険被保険者資格を喪失したとき(70歳到達月の翌月分から年金額改定)しか、これまでは年金額に反映しませんでした。
 

これが、65歳到達月以降の厚生年金保険加入記録が、毎年1回在職定時改定により年金額に反映されることとなりました。厚生年金保険料を納めていることによる年金増額効果を早期に実感できるため、高齢者の就労促進につながることが期待されています。
 

●在職定時改定のしくみと、年金の「支給額変更通知書」


在職定時改定は、毎年91日(基準日)に厚生年金保険に加入して働いている老齢厚生年金受給者について、受け取っている老齢厚生年金額計算の基礎にまだ含まれていない期間(その年の8月まで)の厚生年金保険加入記録を新たに年金額計算の基礎として算入してくれる結果、その年の10月分(12月支給分)から老齢厚生年金額が増額改定される、というしくみです。

 

在職定時改定により、老齢厚生年金のうち報酬比例部分は必ず増額改定されます。

 

一方、老齢厚生年金のうち経過的加算部分は、受け取っている老齢厚生年金額計算の基礎となる厚生年金保険加入期間の月数が480月未満の人のみ、同期間が480月に達するまでを限度として、増額改定されます。
 

この「在職定時改定」が導入されたことにより、額面の年金額が10月分(12月支給分)からいくらに増えるかを記載した「支給額変更通知書」(注)が、日本年金機構より対象者に11月上旬に送付されています。
 

()決定・変更理由」欄には、「基準日(91日)において厚生年金保険の被保険者であること等により、基準日の前月までの被保険者期間を追加して年金額の再計算を行い、年金額を変更しました。(在職定時改定)」と記載されています。
 

なお、年金を受給している人のもとに「支給額変更通知書」が届くのは、在職定時改定による年金増額を知らせるときに限られません。
 

65歳になったため特別支給の老齢厚生年金の支給が終わり、老齢基礎年金・老齢厚生年金が支給されることとなったときにも、それらのことを知らせる「支給額変更通知書」が届きます。

また、年金を受給しながら働いている人の報酬設定が変わったため、年金支給停止額が変更となる人にも、その都度「支給額変更通知書」が届きます。

 

●年金をもらうために報酬設定を変更した社長の事例


年金の支給停止額を下げるために報酬設定を変更した人の場合は、報酬設定変更・事務処理のタイミングによっては、11月上旬に送付された「支給額変更通知書」には、「在職定時改定」による年金増額だけが加味されていて、報酬設定変更による年金支給停止額減額はまだ反映されていないこととなりますので、注意が必要です。
 

(事例)

昭和301215日生まれのA社長(66歳)。

令和44月時点での老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額は144万円。

数年前から令和45月までの役員報酬はずっと月額65万円(賞与なし)であったため、老齢厚生年金(報酬比例部分)は在職老齢年金制度によりずっと全額支給停止。

・年金支給停止額={基本月額12万円(144万円÷12)+総報酬月額相当額65万円(標準報酬月額65万円+その月以前の1年間の標準賞与額の総額0円÷12)-基準額47万円}÷215万円>基本月額

したがって、老齢厚生年金(報酬比例部分)は全額支給停止。
 

A社長の会社は4月決算で、令和46月下旬開催の定時株主総会・取締役会にて、令和47月支給分からA社長の役員報酬を月額30万円に引き下げることを決議しました。
 

会社は、決議通り月額30万円の役員報酬を7月・8月・9月と支給した後、日本年金機構に報酬月額変更届を提出しました。
 

10月下旬に会社に届いた「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬改定通知書」の「改定年月」欄には「R4.10」との記載があり、「決定後の標準報酬月額」欄には「(健保)300千円(厚年)300千円」との記載がありました。
 

10月から標準報酬月額・総報酬月額相当額が30万円に下がりましたので、A社長は次回年金支給日(1215日)には、10月分・11月分の年金が支給停止とならずに全額振り込まれるものと思っていました。

10月分からの年金支給停止額={基本月額12万円(144万円÷12)+総報酬月額相当額30万円(標準報酬月額30万円+その月以前の1年間の標準賞与額の総額0円÷12)-基準額47万円}÷20円 

したがって、老齢厚生年金(報酬比例部分)は全額支給。

(A社長は、在職定時改定により10月分から「基本月額」が12万円よりも増えることを知りませんでした)


その直後11月上旬に、「在職定時改定」による老齢厚生年金増額だけを反映させた通知書をA社長は受け取りました。


報酬月額を下げて報酬月額変更届を提出したことによって10月から標準報酬月額を30万円に改定したとの標準報酬の「改定通知書」が届いたのに、その後に届いた年金の「支給額変更通知書」には、(「厚生年金」の「基本となる年金額」(年額)の年金額は増えているものの)相変わらずほとんどが支給停止と記載されていました。

これをみてA社長は驚き、「何か間違いが生じているのではないか」と不安になりました。


このようなケースでは、報酬設定変更による年金支給停止額減額を反映させた通知書が、後日また別便にて届きます。そのことを教えてあげるだけで、大変喜ばれることがあります。
 

同様の相談事例は、3月決算企業の社長が令和46月支給分から報酬月額を下げて9月分から老齢厚生年金を全額受け取ろうとしていたところ、令和410月から介護保険料等の特別徴収額が変更となったことにより年金の振込額が変更となったことだけを知らせる「年金振込通知書」(「控除後振込額」が従前より若干変動しているだけで、年金支給停額変更はまだ反映されずに計算されているもの)が10月上旬に届いたときにも、みられました。

 
(ポイント)

65歳以上70歳未満の厚生年金保険被保険者の老齢厚生年金が10月分(12月支給分)から増額されることを示す「支給額変更通知書」が11月上旬に送付された

●令和4年度の在職定時改定では、65歳到達月から令和48月までの厚生年金保険加入記録が老齢厚生年金額に反映される

●直前に報酬設定を変更して老齢厚生年金を受給しようとしていた社長が、届いた通知書をみて驚くケースがある 

 (注)令和5年度の在職老齢年金制度の基準額は「47万円」ではなく、「48万円」に改定されました。

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