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加給年金額が加算されるかどうかが判断されるタイミングと、「生計を維持」という要件

(2022年12月9日)

従業員であれば、65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間が20年未満の人はそれほど多くありません。


中小企業経営者でも、従業員期間が長かった人が脱サラして会社を始めた場合は、やはり、厚生年金保険加入期間が20年未満のケースは多くありません。


しかし、中小企業経営者で若い時期に独立して個人事業主期間が長かった人や、法人化したものの厚生年金保険加入手続きを行わなかった期間が長かった人は、65歳到達月の
前月までの厚生年金保険加入期間が20年未満のケースもよくあります。


そのような方が、65歳以降も厚生年金保険に加入し続けた場合は、加給年金額の加算要件について誤解が生じやすいです。



一方、65歳到達月の前月までに厚生年金保険加入240月以上であったものの、65歳到達時で配偶者の「生計を維持」していなかったため配偶者加給年金額が加算されなかった、
という事例も経営者にはよくみられます。


このような事例では、その後配偶者の収入または所得が下がったら、そのときからは加給年金額の支給が始まる、と誤解しておられる経営者がとても多いです。


しかし、65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間が20年以上の人の老齢厚生年金
に配偶者加給年金額が加算されるかどうかが判断されるのは、老齢厚生年金を受ける人が65歳になったとき1回だけです。

(参考)配偶者加給年金額が加算されるかどうかが判断されるタイミングと、「老齢厚生年金額の計算の基礎となる厚生年金保険加入期間20年(240月)以上」という要件​


この場合、その後に状況が変わった(配偶者の収入または所得が下がった)としても、配偶者加給年金額が加算すべきかどうかが判断されることはありませんので、配偶者加給
年金額が加算されることはありません。





加給年金額のポイントの二つ目は、「その者によって生計を維持していた」(厚生年金保険法第44条第1項)の意味です。

今回は、この点について解説します。




(比較事例)
65歳到達月の前月までの厚生年金保険被保険者期間の月数が240月以上の人の場合で、
「老齢厚生年金を受ける権利を取得した当時」(65歳到達時点)よりも後に配偶者の年収または所得が基準内(原則として前年の年収が850万円未満または前年の年収が655.5
万円未満)に下がる場合であっても、例外的に、配偶者加給年金額が加算されるケースも中にはあります。


ただし、この例外が適用されるのは、老齢厚生年金を受ける人が「老齢厚生年金を受ける権利を取得した当時」(65歳到達時点)において配偶者と生計を同じくしていた場合であって、
おおむね5年以内に配偶者の年収または所得が基準額内に下がることが、老齢厚生年金を受ける方が「老齢厚生年金を受ける権利を取得した当時」(65歳到達時点)において、客観的に予測可能であったと認められていた場合です。



例えば、
・配偶者が従業員であって、老齢厚生年金を受ける人と生計を同じくしており、

・年金請求書の、配偶者が「おおむね5年以内に850万円(所得655.5万円)未満となる見込みがありますか。」欄(次のリンク先の10ページ(2)参照) 

(参考:年金請求書 国民年金・厚生年金保険 老齢給付 記入例(日本年金機構))  
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/rourei/2018030501.files/101turnr.pdf
に丸印をつけて、就業規則(労働基準監督署届出済みのもの)のコピーを添付して請求した結果、

・おおむね5年以内に配偶者が就業規則に定める定年年齢に到達して年収または所得が基準額内におさまることが、客観的に予測可能だと認められていたようなケースが、これに該当します。



この例外も含め、加給年金額における生計維持の認定に関しては、次の厚生年金保険法施行令第3条の5第1号および、下記の「生計維持関係等の認定及び認定の取り扱いについて」という通知に基づき行われています(この通知は、遺族厚生年金における生計維持関係の認定の際等にも用いられています)。


(以下、条文は読み飛ばしていただいて構いません)

・(老齢厚生年金等の加給年金額に係る生計維持の認定)
第三条の五 法第四十四条第一項(法附則第九条の二第三項、第九条の三第二項及び第四項(同条第五項においてその例による場合を含む。)並びに第九条の四第三項及び第五項(同条第六項においてその例による場合を含む。)並びに国民年金法等の一部を改正する
法律(平成六年法律第九十五号。以下「平成六年改正法」という。)附則第十八条第三項、第十九条第三項及び第五項、第二十条第三項及び第五項、第二十条の二第三項及び第五項、第二十七条第十五項から第十七項まで並びに第三十一条第三項の規定によりなおその効力を有するものとされた平成六年改正法第三条の規定による改正前の法附則第九条第四項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する老齢厚生年金の受給権者によつて生計を維持していた配偶者又は子は、当該老齢厚生年金について次の各号に掲げる区分に応じて当該各号に定める当時その受給権者と生計を同じくしていた者であつて厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたつて有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣が定める者とする。
一 法第四十二条の規定による老齢厚生年金並びに法附則第九条の三第一項及び第二項並びに第九条の四第一項及び第三項並びに平成六年改正法附則第十八条第二項及び第三項、第十九条第二項及び第三項、第二十条第二項及び第三項並びに第二十条の二第二項及び第三項の規定によりその額が計算されている法附則第八条の規定による老齢厚生年金(平成六年改正法第三条の規定による改正前の法附則第八条の規定による老齢厚生年金を含む。) 当該老齢厚生年金の受給権者がその権利を取得した当時(その権利を取得した当時、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十未満であつたときは、法第四十三条第二項又は第三項の規定により当該月数が二百四十以上となるに至つた当時)



・参考:「生計維持関係等の認定及び認定の取り扱いについて」日本年金機構理事長あて厚生労働省年金局長通知

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7210&dataType=1&pageNo=1

(特に、以下の定めをご参照ください)

2 生計維持関係等の認定日
(1) 認定日の確認
生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計維持関係等の認定を行うに当たっては、次に掲げる生計維持関係等の認定を行う時点(以下「認定日」という。)を確認した上で、認定日において生計維持関係等の認定を行うものとする。
① 受給権発生日
② 老齢厚生年金に係る加給年金額の加算開始事由に該当した日
③ 老齢基礎年金に係る振替加算の加算開始事由に該当した日
④ (省略)

4 収入に関する認定要件
(1) 認定の要件
① 生計維持認定対象者(障害厚生年金及び障害基礎年金並びに障害年金の生計維持認定対象者は除く。)に係る収入に関する認定に当たっては、次のいずれかに該当する者は、
厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする。
ア 前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては、前々年の収入)が年額850万円未満であること。
イ 前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては、前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。
ウ 一時的な所得があるときは、これを除いた後、前記ア又はイに該当すること。
エ 前記のア、イ又はウに該当しないが、定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。

以上の内容や、社長・役員の老齢厚生年金に加算される加給年金額や遺族厚生年金における生計維持認定の詳細・注意点については、主に社労士等向けの書籍ですが、下記の書籍でも詳しく解説しております。
『社長の年金・退職金相談と事業承継初期対応の実務』



 

(2022年12月14日)

例えば、
・代表取締役(夫)の65歳到達月の前月までの厚生年金保険加入期間が240月以上となるケースで、

・代表取締役(夫)が65歳に到達時に、取締役(妻)には厚生年金保険加入期間240月以上の特別支給の老齢厚生年金等を受ける権利はないものの、取締役(妻)の前年の役員給与年額が850万円以上(他に所得なし)となる場合、

代表取締役(夫)が働きながら老齢厚生年金(報酬比例部分)だけでなく配偶者加給年金額も受給したいのであれば、事前に夫の役員給与設定を変更するだけでなく、事前に妻の役員給与年額を引き下げておくことが必要となります。


特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳や61歳の世代の夫であれば、支給開始年齢到達時は妻の前年(または前々年)の役員給与年額が850万円以上であっても、その後到来する定時株主総会で夫の役員給与設定や妻の役員給与年額変更を行なうことでも、65歳到達時までに老齢厚生年金(報酬比例部分)や配偶者加給年金額が加算される状況にするための時間的な余裕がありました。


しかし、昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生まれの男性なら、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は64歳ですから、必要なタイミングまでに夫の役員給与設定・妻の役員給与年額を変更しておこうとすると、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢を迎える前から準備をしておく必要があることとなります。


65歳到達月に65歳からの年金請求書が送られてきて初めて配偶者加給年金額について真剣に考え始める社長様が以前から多いところですが、遡って状況を変えることは不可能なため、注意が必要です。

 

(2022年12月22日)

配偶者加給年金額について多くの経営者が意識をするのは65歳になってからですが、報酬が高い経営者が働きながら老齢厚生年金だけでなく(要件を満たせば)配偶者加給年金
額も受給したい場合は、63歳頃までには本人・夫婦の報酬設定を検討した方がよい、といえます。



思惑違いを防ぐために、また、計画的に年金受給のための準備を行うために、できれば、59歳のときに過去のすべての年金加入記録が記載された「ねんきん定期便」が届いた段階で、社長の年金の基礎知識を身につけていただくことが、望ましいでしょう。



日々の会社経営に忙しく、なかなか時間がとれない、と感じる方もおられるかもしれません。



また、夫婦の報酬設定を変更すれば加給年金額をもらえる場合でも、例えば、夫婦の年齢差が2歳(例えば、妻が夫より2歳年下)だと、加給年金額としてもらえる金額は約80万円(年額40万円弱×2年)に過ぎないため、あまり重要ではない、と感じる方もおられるようです。


しかし、加給年金額をもらえる要件の一つである、65歳到達時(または、その後に老齢厚生年金の計算の基礎となる厚生年金保険加入期間が240月以上となるに至った時点)において「その者によって生計を維持」していたという要件は、社長が亡くなった場合の遺族厚生年金をもらえる遺族にあたるかどうかを判断するための、「死亡の当時」「その者によって生計を維持」したという要件と、同様です。
(厚生年金保険法第59条、厚生年金保険法施行令第3条の10)


具体的には、「生計維持関係等の認定及び認定の取り扱いについて」日本年金機構理事長あて厚生労働省年金局長通知
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7210&dataType=1&pageNo=1
に明記されているところにより認定されることも、配偶者加給年金額における生計維持関係の認定と同様です。


遺族厚生年金をもらえる遺族に該当するかどうかを判断するための生計維持関係の認定では、認定日(認定を行う時点)は死亡日(遺族厚生年金の受給権発生日)であることが
最も重要です。


死亡日において「生計を維持」していたと認定されなかった場合は、認定日が過ぎてから状況が変化した(例えば、その後遺族の役員給与が下がって収入または所得が下がった)としても、下がった時点は、「生計を維持」していたかどうかを認定する認定日ではありません。


遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3相当額が基本です。
夫死亡時に妻が65歳未満の場合は中高齢寡婦加算年額約60万円弱が加算されることもあります。


遺族厚生年金の受給総額は一生で3,000万円を超えることも珍しくありません。


社長に万一のことがあった場合の遺族の生活のことなどを考えた場合、
(65歳前であっても、60歳未満であっても、何歳であっても)、
もし今不慮の事故や病気で亡くなったとしたら、遺族に遺族厚生年金が支給される状態でない(配偶者加給年金額や遺族厚生年金における「生計を維持」に該当していない)場合は、可能であれば、次回定時株主総会等での配偶者の報酬設定変更を検討することも重要でしょう。

 

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