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役員退職金とは何か 会社法・法人税法・最高裁判例

退職後に役員の職務執行の対価の一部の後払いとして支給される役員給与

(2020年9月17日)
役員退職金とは何かについては、実は会社法や法人税法では定められていません。

(以下、長文ですので、時間のない方は、●印を付けた二つの段落だけご覧ください)


会社法では、役員退職金も、職務執行の対価として支給されるものであれば、報酬、賞与と同じように、報酬等に含まれることは、これまでにもお伝えしました。


この点については、役員退職金(一時金)ではなく、退職慰労年金に関するものですが、次の最高裁判例もあります。


「被上告人の取締役に対する退職慰労年金は、取締役の職務執行の対価として支給される趣旨を含むものと解されるから、会社法361条1項にいう報酬等に当たる。」
(最高裁平成22年3月16日判決)


(役員退職金・従業員退職金を問わず、退職金を受ける人の退職所得については、所得税法第30条第1項に「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。」と定義されています。)


法人税法第34条1項には「退職給与」の語が出てきますが、退職給与の定義が明らかでないため問題となります。


この点について、過去の裁判例では、次のように示されています。

「退職慰労金には、在職中の功労に報いるという功労加算の趣旨もあり、規程でもそのような記載がされることが多いが、功労加算部分も在職中の職務執行を基盤として支給されるものであるため、役員退職金は職務執行の対価の一部と位置付けられている」(大阪高裁判決昭和48年3月29日)


「同項にいう退職給与とは、役員が会社その他の法人を退職したことによって初めて支給され、かつ、役員としての在任期間中における継続的な職務執行に対する対価の一部の後払いとしての性質を有する給与であると解すべき」
(平成27年2月26日東京地裁判決)



●役員退職金とは、役員が退職した後に在任中の職務執行の対価の一部の後払いとして支給される役員給与である、という程度に理解しておけばよいでしょう。



そして、役員退職金の支給にあたっては、定款で定めがない限り、法人の最高意思決定機関である株主総会の決議が必要です(会社法第361条第1項、会社法第387条)。


役員が役員自身の退職金を増やす「お手盛り」を防止するために株主総会決議が必要とされており、株主総会決議を経ずに行われた役員退職金の支給は無効です。


・(比較)従業員退職金は労働契約(雇用契約)に基づくものですので、退職金規程に定められていれば会社に支給義務があり、従業員は退職金を受給する権利があります。


役員退職金規程の作成は任意ですが、株主総会決議を省略することはできません。


ただ、株主総会で、細則は役員退職金規程に基づいて取締役会(取締役会がない会社で取締役が複数の場合は取締役の協議)に委任することと決めることも認められます。


判例でも、「株主総会において、退職慰労金の支給金額、支給期日、支給方法などを取締役会の決議に委任した場合であっても、無条件に一任するのではなく、慣行及び内規
によって一定の支給基準が確立されており、当該支給基準は株主にも推知し得べきもので、決議が黙示的に右支給基準をもって限度とする範囲内において相当な金額を支給
すべきものとする趣旨である場合には、有効」とされています(最高裁判昭和39年12月11日判決)。


役員退職金規程とは異なる内容(例えば、役員退職金規程を上回る金額)を株主総会で決めることも可能です。


しかし、定款の定めも株主総会決議もないのに取締役に役員退職金を支給することはできません。


監査役への役員退職金(報酬等)も、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めることとなっています。

したがって、定款の定めも株主総会決議もないのに、監査役に役員退職金を支給することもできません
(例外的に、監査役が2人以上ある場合で各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、監査役の協議によって定めることとなっています)。


ところが、小規模企業では、定款の定めも株主総会決議もないまま、(退職金規程に基づき)取締役会で取締役への役員退職金支給を決めている事例がみられます。


定款の定めも株主総会決議もないまま、(退職金規程に基づき)取締役会で監査役への役員退職金支給を決めている事例さえ、みられることがあります。


多くの経営者が、うちは小さな会社だから(株主の中に支給に反対するような人はいないから)、普段から株主総会のような堅苦しいものは行ってないよ、とおっしゃるのですが、これは大変危険なことだと思います。


会社法は、従業員数が数千人を超える大企業だけでなく、小規模企業であっても適用される法律です。


万一後日税務調査が行われたとき、役員退職金を支給したのであれば法律上当然に開催しているはずの株主総会が開催されておらず、その議事録も作成されていない場合、理屈としては、役員退職金ではないと言われても文句を言えないこととなってしまうからです。


そうなると、支給した退職金額が実質的に適正な金額かどうかの判断以前の問題です。



●定款で役員退職金の金額や算定基準等について定めている会社は稀だと思いますので、会社法上の役員に対する役員退職金支給決定にあたっては、少なくとも株主総会を開催
して、決議内容をきちんと議事録に残し、後に税務調査の際や万一争いとなった際にも証拠資料として使えるように、きちんと準備しておくことが重要です。



 

役員退職金と株主総会議事録・取締役会議事録

(2020年10月4日)
ここで、
1.議事録に関する会社法の定め
2.役員退職金をどのように定めていくら支給できるか
に関する法律上の定めの二つについてお伝えします。


1.議事録に関する会社法の定め

役員退職金の額などについて定款で定めていない場合は株主総会で定めて支給する必要がありますので、株主総会議事録が必要です。


取締役会がある会社で、株主総会で総支給額または上限額のみを定めて、具体的な支給額・支給日等は取締役会に一任する旨を決議した場合は、取締役会議事録も必要となります。


法律上これらの開催・議事録作成が必要であるのに開催・作成されていないで役員退職金が支給された場合は、形式的には役員退職金が支給されたとはいえないこととなります。


(1)株主総会議事録について
株主総会の議事については、株主総会議事録を書面または電磁的記録をもって作成しなければなりません(会社法第318条第1項、会社法施行規則第72条第2項)。


株主総会の日から10年間は議事録を本店に備え置かなければなりません(会社法第318条第2項)。


株主総会議事録を備え置かなかった場合は、代表取締役は100万円以下の過料に処せられることとなっています(会社法第976条)。


(2)取締役会議事録について
取締役会の議決についても、取締役会議事録を書面または電磁的記録をもって作成しなければなりません(会社法第369条第3項、会社法施行規則第101条第2項)。


取締役会の日から10年間は議事録を本店に備え置かなければならず(会社法第371条第1項)、株主は議事録の閲覧または謄写の請求ができます(同法第2項)。


取締役会議事録を備え置かなかった場合も、100万円以下の過料に処せられることとなっています(会社法第976条第8項)



2.役員退職金をどのように定めていくら支給できるかに関する法律上の定め


会社が役員退職金の支給額をどのような算定基準で決定できるかや、いくら支給できるかについて定めた法律上の規定はありません。


ですから、会社は自社の役員退職金支給額算定基準も、支給額も自由に決めることができます。


(法人税法第34条2項に基づくいわゆる過大退職金の問題は、会社が支給した役員退職金額のうちに「不相当に高額な部分として政令で定める金額」があった場合は、不相当に高額な部分についてだけは、法人の所得の金額の計算上、損金算入が認められない、という
ことに過ぎません。)



多くの企業において、役員退職金の算定基準として次のような功績倍率方式が採用されています。


・役員退職金額=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率


ただ、この功績倍率法は、会社法、法人税法等の法令の規定や通達等に根拠のあるものではなく、必ずこのような方法で役員退職金額を決定しなければならないわけではありません。


功績倍率方式で役員退職金額を算定することとしている企業でも、上記のように退職前の最終の役員報酬月額に応じて計算することとしているケース以外に、在籍中の報酬月額の
平均値や、在籍中の報酬月額の最高額の範囲内の数字に基づいて計算する制度としているケースもあります。



あるいは、功績倍率方式を用いずに、在任1年あたりの支給額として一定額を定めて役員退職金額を定めている企業もあります。


例えば、代表取締役在任年数1年あたり200万円、などと定めておいて、代表取締役在任年数30年なら、6,000万円(200万円×30万円)支給する、というような方法です。


この場合、市販されている書籍
で確認できるデータや税理士団体が所有しているデータで中小企業経営者への役員退職金支給額を確認して、それを参考に、1年あたりの支給額を定めるのが一般的です。

 

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