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経営者夫婦向け・遺族厚生年金と令和10年度からの改正についての補足+老齢厚生年金の注意点

令和10年度からの遺族厚生年金 60歳以上で配偶者と死別した場合は現行制度と同じ制度が適用

(2026年7月29日)

令和10年度から遺族厚生年金は男女差解消に向けて大きく改正されますが、60歳以上で配偶者と死別した場合は、改正前と同じ制度(終身年金)が適用されます(遺族が、生計維持要件(生計同一+年収850万円未満等)を満たしていた場合)。
60歳以上で配偶者と死別した場合は、令和10年度以降であっても、遺族厚生年金が「5年有期給付」とはなりません。


●令和10年度からの遺族厚生年金改正はこちら
●遺族厚生年金の「生計維持要件」について詳しくはこちら 

 

「自分たちには関係のない話」と思われがちですが、特にご夫婦で会社を経営されている場合、見落としがちな注意点がありますので、補足いたします。 

 

 

1.60歳以上65歳未満で死別した場合は、「選択受給」に注意

令和10年度以降にこの年齢で配偶者と死別した場合は、現行制度と同様の遺族厚生年金(終身給付)が支給されます。

 

 

ただし、夫が死亡した場合で、妻自身にも老齢厚生年金の受給権がある場合は、次の点にご注意ください。

 

 

妻自身が65歳未満で受け取る「特別支給の老齢厚生年金」と、遺族厚生年金は、どちらか一方を選んで受け取る「選択受給」となります。

 

 

つまり、2つを同時に満額受け取ることはできません。

多くの場合、金額の大きい方を選択することになります。

 

 

なお、女性が「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れるのは、昭和4141日以前生まれの方までです。

 

 

この制度の対象となる最後の世代は、以下の通りです。

 

 

・昭和3942日から昭和4041日生まれの女性:令和10年度に、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢64歳)に達します。

 

・昭和4042日から昭和4141日生まれの女性:令和11年度に、64歳に達します。

 

昭和4142日以降生まれの女性は、特別支給の老齢厚生年金はありません。

 

 

2.65歳になると、「老齢厚生年金が先に充当される」仕組みに切り替わる

65歳になると、1で説明した「選択受給」のルールは終わり、新しいルールに切り替わります。

  

これは、65歳以降に配偶者と死別した方だけでなく、6064歳で死別し、それまで選択受給で遺族厚生年金を受け取っていた方が65歳になったときにも、同じように当てはまります。

 

 

65歳以降は、次のルールで遺族厚生年金の額が決まります。
(以下、夫が死亡し、妻が遺された場合で説明します)。

 

 

まず、妻自身の老齢基礎年金・老齢厚生年金を満額受け取れます。

 

 

その上で、「本来の遺族厚生年金の額」が「妻自身の老齢厚生年金の額」を上回る場合に限り、その差額分だけが遺族厚生年金として上乗せされます。

 

 

式で表すと、

・上乗せされる遺族厚生年金の額= 本来の遺族厚生年金の額 - 妻自身の老齢厚生年金の額
となります。

 

 

ここで、経営者ご夫婦に特にご注意いただきたいのが、共同経営などでご夫婦の厚生年金加入加入期間の月数および厚生年金加入中の平均標準報酬額が同程度の場合です。

 

 

この場合、妻自身の老齢厚生年金の額と、夫の死亡により計算される遺族厚生年金の額がほぼ同水準になるため、上乗せされる遺族厚生年金がないケースが少なくありません。

 

 

つまり、「夫が亡くなったら遺族厚生年金がもらえる」と思っていても、65歳以降は妻自身の老齢厚生年金だけで、遺族厚生年金の上乗せはない、ということが起こり得ます。

 

 

厚生年金保険加入期間および加入中の報酬・賞与水準が近いご夫婦ほど、上乗せの遺族厚生年金が小額またはゼロとなります。

 

 

遺族厚生年金をもらえる人の繰下げも令和10年度から変わります。

さらに、令和10年度からは、この点に関連するもう一つの改正があります。
 

遺族厚生年金の受給権がある方も、ご自身の老齢基礎年金を繰り下げできるようになります。

 

 

また、遺族厚生年金をまだ請求していなければ、ご自身の老齢厚生年金も繰り下げできるようになります。

 

 

現行制度では、遺族厚生年金の受給権があると、ご自身の老齢年金の繰下げに制約がありましたが、令和10年度からはこの制約が緩和されます。

 

 

これは、先ほどの「上乗せ額がゼロになるケース」(ご夫婦の役員報酬水準が近い場合)に該当する方等にとって、意味のある選択肢です。

 

 

上乗せされる遺族厚生年金がないのであれば、遺族厚生年金をあえて請求せず、ご自身の老齢厚生年金・老齢基礎年金を繰り下げて増額する、という選択が可能になるためです。

 

 

 

ただし、老齢年金の繰下げ待機中は、年金を受け取れないわけですので、生活資金への影響も踏まえたご判断が必要です。

 

 

また、次の点に関しても留意が必要です。

 

・遺族厚生年金は非課税ですが、老齢厚生年金・老齢基礎年金は雑所得として課税対象であること。

 

・老齢年金の繰下げにより所得が増えると、所得税・住民税が増え、介護保険料や退職後の国民健康保険料や後期高齢者医療保険料が増える可能性もあること

 

・遺族厚生年金と異なり、老齢厚生年金(報酬比例部分)は在職老齢年金制度(給与・賞与との調整)の対象となること

 

 ●令和10年度からの繰下げについて詳しくはこちら



 

令和10年度からも、60歳以降に死別した場合の遺族厚生年金は「現行制度のまま」、という言葉だけを見ると安心してしまいがちですが、

 

 

現行制度の段階から存在する上記の注意事項については、十分ご留意いただきたいため、

また、老齢年金の繰下げとの関係にも今後は注意が必要となるため、今回補足解説してみました。 

 

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